エピローグ
なんだか大波乱だったのですが、プロムはその後、予定通り行われました。私はエドマンド、ポマード、シャール、熱血教師、そしてなんと国王陛下と、ダンスを踊ったのです。
ダンスはね、元々私、やっていました。丁度、正太郎の子育ても終わり、時間も出来たから、社交ダンスを習ったのです。その頃はダンスブームでしたからね。ドラマや映画で、ダンスが一大ブームです。
それもあって、こちらの世界では、ダンスは問題ありません。さらに足腰もちゃんと動いてくれますので、生前より上手くなったかもしれませんね。よって大変楽しく、皆様とダンスをしたのですが……。
一息入れようと、飲み物を手に取った時です。
あの案内標識が表示されました。
『断罪イベント、見事クリア、おめでとうございます! これより断罪イベントのクリア特典として、以下のルートが解放されます。なお、既存攻略対象も継続し、攻略可能です。
⇒エドマンドルートへ進む
⇒ポマードルートへ進む
⇒シャールのルートを解放する
⇒キーファース先生のルートを解放する
⇒キャンベル国王のルートを解放する 』
これを見た私は、驚いてしまいます。
ルートを解放するということは、新しい道ができますよ、ということですよね。ここに名前が並ぶ方々と恋愛をできる……と理解しました。さすがに何年も、乙女ゲームの世界で生きているので、分かったのですが。
シャールや熱血教師は、まだ理解できます。でも国王陛下!? ビックリしてしまいましたが、国王陛下は現在三十九歳。そして王妃は……不在です。王妃殿下は、ジョナサンを生んだ後、体調を崩し、彼が三歳の時に天に召されていました。以後、国王陛下は再婚することなく、独り身を通しているそうですが……。そうであっても、こんなルートまで用意するなんて、私の孫は斬新です。
前世で最期を迎えた私は、その時が来たら、それですべてが終了だと思っていました。でもあの世でもなく、天国でもない、孫が書いた乙女ゲームを舞台にした小説の世界に、魂が向かってしまうなんて! ゲームですから、いろいろ指示がでましたが、私は自分のしたいように、生きさせていただきました。それでも何とかなるものなのですね。
これからどうするか、それはもう少し考えるとして、「おばあちゃんは楽しくやっていますよ」と、孫に伝えられたらいいのに。
何か方法はないかしら? 幽霊は電子機器に干渉できると、テレビ番組で言っていたのを見たことがあります。それ、本当なのかしらね?
◇
「おばあちゃん、もうここにはいないのかな」
「どうだろうな。煙になったなら、案外まだ、この辺にいるかもしれないよ」
セーラー服を着た少女と学ランを着た少年が、斎場の自動ドアを出て、駐車場へ向かおうと歩き出す。喪服姿の両親や親族が、それぞれの車へと向かい、散っている。
「すみません!」
黒のスーツ姿の女性職員の声に、少女が振り返る。
「先程、八番ホールで最期のお別れをされました、故・日比谷静江様の、ご親族の方ですか?」
「あ、はい」と少女が返事をすると、女性職員がメモ用紙を差し出した。
「お名前を聞き取ることができず、電話は切れてしまったのですが、伝言をお預かりしました」
受け取ったメモを、少女と少年が覗き込む。
メモにボールペンで書かれていた言葉は……。
『面白かったですよ。次はどのルートかしらね?』
冬の午後の穏やかな陽射しが、少女と少年を優しく包むように、降り注いだ。
~ fin. ~
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
亡くなった祖母は、ハイカラな人だったので
もしこんな風に転生しても、元気にやっているかなぁ。
久々に書いている最中、涙がホロリ。
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