【特別更新】王都での再会(前編)
ターナー帝国からの帰国。
すなわち王都に戻ることになった私は。
長旅の疲れも顔に出てしまうので、日没後。
王都につながる門が閉門される直前に、こっそり入場するつもりでいました。
だって、私が戻ったらいくつもの舞踏会とパーティーや晩餐会、お茶会も予定されていたんです。
それにね、私が前世で読んでいた平安時代の文学。
そこで描かれていたんですよ。
貴族が都に戻る時は、夜にこっそりってね。
旅の疲れを見せないために……と。
でもこの世界は違うようです。
王侯貴族はその権威を国民に示す必要があるんですよね。
日中、堂々と王都へ入り、旅からの無事の帰還と共に、自身の権威と富を示す必要があるわけです。
というわけで私の婚約は、国中で注目の的でもあったので、国王陛下が自らしたためた書簡が届き、そこには……。
『そろそろ帰国と聞いている。栄光の門まで迎えに行こう。日時が決まったら教えて欲しい』
そう書かれていたんですよ!
言っておきますがね、国王陛下ですよ。
決して時間が有り余っているわけではないのに。
でもこうなると日中に、身支度もきちんと整え、お伴の皆さんにもピシッとしていただいて、入場するしかありません。
ということで三時間程前に、無事、王都に入ったのです。
国王陛下に迎えていただき、私は荷馬車三台分のメープルシロップを、王家のお土産として進呈しました。陛下は喜び「私も既に味わったぞ。スコーンにもよくあういい味だ。これは舞踏会や晩餐会で使わせてもらおう」と笑顔です。
安堵し、そのまま公爵家の屋敷へ戻り、両親との再会を喜びました。
そうしているうちに時間はあっという間に過ぎて行きます。
「お嬢様、そろそろお茶会の時間です。ドレスを着替えましょう」
リリーさんに言われ、慌ててお茶会のために用意していた、菜の花色のドレスへ着替えます。
するとそこへバトラーが「トリーリ令息、いらっしゃいました!」と知らせてくれました。
エドマンドが到着したと思ったら、ポマードも間髪を入れずやって来たことが伝えられます。
二人とも。
約束の時間より三十分も前なのに!
待ちきれなかったのでしょうね。
何せ私が帰国する日を伝えると、二人とも予定を調整し、私と会うための時間を作ってくれたのですから。
舞踏会や晩餐会やパーティーは、いくつも予定しているんです。日中は学校や任務もある二人でも、どれか一つに顔を出すことぐらい、できるはずなんです。でもね、お茶会。私達は学生時代からずっと一緒だったから、お茶会は特別なんですよね。何よりもお茶会は少人数で、仲間とだけ会えるから……。
こうして先に到着した明るい青色のセットアップ姿のエドマンドと、オフですがかっこつけたいポマードは、王都警備隊の儀礼用の隊服姿で登場。私は二人を迎え、エントランスホールのソファセットでおしゃべりをすることになります。
会えなかった期間は冬の間の三カ月。
その間、手紙のやりとりはエドマンドとポマードともしていたんですよ。
お互いの近況報告もしていたのに……。
それでもこうやって顔を合わせると、話は尽きません。
そこにリリーさんが声を掛けてくれます。
「お嬢様、レオンハイム公爵令息が、間もなく到着されます」
シャールもまた私と一緒に帰国していました。
そしてこのお茶会に参加するため、屋敷へやって来たのですが……。
「もうみんな揃っているのですか!?」と、空色のスーツ姿のシャールはビックリ。
さらに三十分前に、エドマンドとポマードも到着していたと知ると……。
「シェリーヌ公爵令嬢のこと、二人とも大好きですからね。そろそろ子離れしてもらわないとですね」
なんてかつてレオンハイム公爵の背中に隠れていたことが、嘘みたいに思える言葉をシャールが発すると。
「シャールはシェリーヌ公爵令嬢と親族になるからそんなこと言えるんだ!」「そうです!自分の夢はシェリーヌ公爵令嬢の護衛騎士だったのに!」とポマードとエドマンドが子供みたいなことを言いだすので、「二人とも!」と一喝。
こうしていつもの四人が揃うと、サンルームへ移動し、お茶会がスタートです。
今日はね、既にポマードとエドマンドには贈っていて、気に入ってくれたメイプルシロップを楽しむためのスイーツを、お茶会で用意しているんですよ。
お読みいただき、ありがとうございます!
この度、ESN大賞7で奨励賞を受賞しました!
書籍化も決定です。
応援くださる読者様に心から感謝です
受賞作
『婚約破棄を言い放つ令息の母親に転生!でも安心してください。軌道修正してハピエンにいたします!』
☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
いつもありがとうございます!