平穏無事が一番ですからね。
夕食会の席は、驚く程、和やかなものでした。
シャールとは長い付き合い。
セシリオとソフィーと過ごした時間は、そこまで長いわけではなかったのですが、既に距離がうんと縮まっていました。
ターナー帝国に到着するまで、長い時間もかかっていますからね。お話する機会も沢山ありましたし、可愛い孫みたいで、もう完全に仲良しさんです。
でも皇帝陛下夫妻は、初めましてだったんですよ。
ところが昔からの知り合いみたいに、とても楽しく会話できるんです。
最初はシャールと私は、借りてきた猫のように大人しくしていました。
二人とも高位貴族と言われる身分ですが、そうそう王族や皇族と食事をするわけではありません。それでも王太子の婚約者をしていた時は、国王陛下夫妻と食事をする機会は何度かありました。ですがまず、テーブルが長く、距離があるんです。かつ黙々とマナーに則り食べることに集中するので、なんというのでしょうね。一緒の空間でそれぞれ食事をしている――そんな感じでした。
ですが皇帝陛下夫妻は、当たり前のようにシャールと私を新しい家族として受け入れています。自分たちの娘と息子に接するように、話しかけてくれるのです。席も近いですし、会話もあったかいんです。
「そういえばシャールとミーチェは本が好きなのだろう? 今日は宮殿にある図書館に案内されたと思うが、皇宮にも小さな図書館がある。そこにはセシリオとソフィーが読んだ本も沢山あるのだよ。よかったら案内させよう」
「それならあなた、歴史文学者をお招きして、語り部会をするのはどうかしら? ターナー帝国の口頭で伝わる伝承は、面白いお話が多いから」
皇帝陛下夫妻は、この夕食会が私的なものであることから、私達をファーストネームで呼んでくれます。それだけでもう家族として受け入れられたと強く感じてしまうのです。
さらに食事が終わり、食後の紅茶を楽しんでいる時、二人はこんな風に言ってくれました。
「ターナー帝国はこの通りの小さな国だ。帝国民との距離も近く、そもそもの気質がフレンドリーだからね。それにシャールがソフィーにいつも親切にしてくれたこと。ミーチェがセシリオを助けようと奮闘してくれたこと。全て聞いている。ソフィーやセシリオが心を決める前に、レダと話していたんだよ。この二人を婿と嫁として迎えることができたらいいのに、とね」
これを聞いたシャールは久々に泣きそうな顔になり、ソフィーに優しく励まされています。私もジーンとしていました。
セシリオとソフィーはとても素敵な兄妹だったのです。二人のご両親が、意地悪で悪党なんてわけがないと、最初から思っていました。それでも実際に会ってみないと、どんな方か分かりません。でもね、こうしてお会いしてこんなにも素晴らしい方だったから……。
前世ではそれこそテレビのドラマやワイドショーで「嫁姑問題」が取り上げられていて、私もよく見ていました。テレビでは赤裸々な電話相談が放送されて、嫁や姑との関係に悩む人も多かったと思うのです。
しかしここでは「嫁姑問題」で悩むなんてことは、なさそうですね。勿論、私はおばあちゃんになるまで生きていますから。たいていの問題には対処できます。でも平穏無事が一番ですからね。
「さて。話は尽きないが、これから毎朝とタイミング合えば、昼食も一緒に摂ろう。夜はこの時期、晩餐会を催すことも多いから、無理に同席する必要はない。主に地方から帝都へ来ている貴族達を招いているものだからね。これぞという時は声をかけよう。それに帝都には、帝国民向けのレストランの中に、美味しい店も沢山ある。護衛の騎士を連れ、出かけても構わないよ」
皇帝陛下はよく分かっていらっしゃいます!
名店は、意外な場所にあることをご存知なようです。
それに今回の夕食会では、野菜もさりげなく取り入れられていました。肉こそ正義!という風潮が強いこの世界で、これは珍しいことです。それに帝国民とは距離が近いと言われていましたが、本当にそうなのでしょうね。だからこそ野菜も楽しく食べることができる。
「明日はわたくしが参加するお茶会にぜひ来てくださいね。明後日は帝都オペラに案内しますわ。その翌日には……」
今回のターナー帝国での滞在は三カ月。
滞在期間が終わったら、一旦実家に戻り、全ての準備を整え、正式にターナー帝国へ戻ることになります。そこからは皇太子妃教育もスタートし、結婚に向けての準備の一年間です。よってこの三カ月は毎日自由に過ごしていいと言われていましたが、どうやら皇妃自らがいろいろ案内してくれるようで。恐れ多いのですが、嬉しいことですよね!
「後はオーダーメイドでソフィーとミーチェの三人でお揃いのドレスを仕立てましょう。二人とお揃いのドレスを着たら、姉妹だと思われるかしら?」
「思われると思います!」と私が即答するくらい、皇妃は若々しく、そして可愛らしいのです。前世がおばあちゃんの私からすると、皇妃が嫁に見えてしまうぐらいですからね!
「ふふ。ミーチェ。いろいろ案内しますからね」
皇妃が優しく微笑みます。
こうして初日の夕食会は、とても楽しく終わりました。
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