名古屋方面
名古屋方面の電車に乗るのは何ヶ月ぶりだろうか。名古屋の街並みを想像して胸が膨らむ。
特急が停まる駅はさすがに人が多い。既に電車の中もみちみちだ。この中に入らなければならないと思うと「( '-' )スンッ」となる。
電車に乗ると、案の定満員だった。人の間をすり抜けて、掴まれそうなものがある場所へ移動する。ひとり席の座席の背もたれについている取っ手に掴まろう。
ひとり席のサラリーマンは熟睡していた。いつこちらに倒れてきてもおかしくないくらい心地よさそうな顔をして眠っていた。
誰かに似ている。どこかで見たことがある顔だ。知り合い? 芸能人? どこかの店員? いったい誰に似ているんだお前は⋯⋯。
と思っていると「ガコン!」という音を立てて電車が急停止した。ちょうど踏切のあたりだった。
あまりに急なブレーキに、列車内の人間は1人残らず
|||||→/////こんなふうに勢い良くつんのめった。
この瞬間、私の頭の中に「人身事故」の文字が浮かび、心臓がバクバクし始めた。地震と電車の急ブレーキは本当に心臓に悪い。
車内は騒然と⋯⋯ならなかった。誰も何も喋らない。それどころか、焦っている様子もまるでない。私だけが心臓をバクバクさせているようだった。
そんな中、静寂を破ったのは車掌だった。
なんでも踏切内に不審物が落ちていたらしく、そのせいで止まったとのことだった。しばらくして安全の確認が取れたところで運転再開。
サラリーマンはまだいびきをかいている。かなり若く見えるが、私と同い年くらいだろうか。
こんなに周りに人がいて、急ブレーキがかかってアナウンスが流れても起きないなんて、相当疲れているのだろう。もしかしたらブラック企業かもしれない。
しばらく走って、名古屋に着いた。
サラリーマンはまだ寝ている。この人はどこで降りるのだろうか。もし名古屋だったら、乗り過ごすことになってしまう。そうなったら100%怒られるだろう。
起こした方がいいのかな。
いや、こんなにぐっすり寝ているんだ、スマホでアラームをかけているんじゃなかろうか。そうでもないとここまで安心した顔で寝られるものか。
いやでも、もしそうじゃなかったら⋯⋯?
よし、起こそう! 迷惑かもしれないけど、起こそう!
「もしもし、お兄さん。名古屋で降りられます?」
念の為にね。起こしてごめんね。
「⋯⋯えっ⋯⋯名古屋? 名古屋⋯⋯あ、降ります! ありがとうございます!」
男性はそう言って走って出ていった。良かった、私のしたことは間違っていなかったんだ。
と、ここでまた私のネガティブが発生した。考えすぎ人間の悲しい性だ。
今の人が本当にブラック企業の人で、疲れすぎて眠っていたからこんなに人がいても急ブレーキがかかっても起きなかったのなら、このまま送り出すのは危険だったかもしれない。
実は今日が限界の日で、今日出勤したらあの人のキャパシティをオーバーしてしまい、自殺までは行かなくとも、精神病などになってしまうかもしれない。
寝過ごして吹っ切れてブラック企業を辞めるという未来を、私はぶち壊してしまったのかもしれない。私は、殺人犯だ⋯⋯。
普通の人には分からないかもしれないが、私レベルのマイナス思考マンになると常にこんなことばかり考えているのだ。
この悲しい予想が当たったのかどうか知る術はないが、100回に1回か、1000回に1回くらいは当たっているだろう。そう思うとますます悲しくなってくる。
ところで、私は名古屋で降りないのかという話だが、降りない。このまま金山まで行く。調べたところ、金山での乗り換えが1番楽だったのだ。
さっきの彼が座っていたところに座り、水を1口飲む。ふぅ。飲み物を飲むとなんだか安心する。サラリーマンの彼も大丈夫だろう。うん。
背の高い外国人のおじさんが乗ってきた。かっこいい。なに人か分からないけど、外国人ってなんで一般人でもこんなかっこいい人多いの? 全員サングラス似合うし、スキンヘッドでも変じゃないし、嫉妬しちゃうね。
私がスキンヘッドにしたら絶対笑われるもんね。前に何かの番組で高橋克実が「頭まで全身ボディーソープ」って言ってたのを見て「天才か!」って感動したの。それから思うようになったんだ、いつかスキンヘッドにしたいなって。
金山まで体感2分で着いた。座るまでもなかったな。よし、ここから地下鉄だ!




