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エレベーターの駆け引き

 先日、県外へ引越した3つ上の従姉(いとこ)が愛知に帰ってきた。なんでも矢場とんが食べたいとのことで、名古屋で待ち合わせることになった。


 矢場とん。

 おいしいおいしい味噌カツのお店だ。名古屋民のソウルフードなのに、もう数年は食べていないどころか、存在すら忘れていた。だって遠いんだもん。


 このところずっとひもじい生活をしていたが、私もそろそろ軌道に乗り始めたので、名古屋に遊びに行くくらい良いよねと自分の中の裁判長に聞いてみたところ、返事がなかった。


 もしかして怒ってる? 身体の主である私がひもじい生活してたから栄養足りなくて、カルシウム足りなくて怒っ⋯⋯死んでる!?


 という経緯(いきさつ)で名古屋へ遊びに行くことを阻む者はいなくなったので、私はウキウキで最寄り駅へと向かった。


 manaca(Suicaの仲間)にとりあえず2000円チャージして、いざ改札!


 なんもないよ。ビーッて止められることもなければ駅員さんに話しかけられることもないよ。改札なんてmanacaタッチして通り過ぎるだけだもん!


 あー階段クソ多ぇ〜。

 せっかくウキウキだったのに、この気温の中あの段数の階段を見るだけで萎えてくる。


 こんな時はエレベーター。急ぎでもない休みの日にクソ多階段上ることないもんね。まぁ急いでる仕事の日でもエレベーター乗りたかったら乗るけどね。帰りとか。疲れてるもん。


 ここの駅のエレベーター、クソ多階段の横の細い通路の突き当たりにあるんだけど、すでにエレベーターの前に人がいるとものすごく気まずくなるんだよね。


 エレベーター待ってる時は向こう向いてるんだけど、扉が開いて中に入ったら100%こっち向くんだよね。ボタンこっちについてるから。


 で、エレベーターに向かって歩いてる私を認識して「あっ」って感じの反応をするのね。

 近かったら良いんだ、「アザッス」って言って乗れば済むから。


 問題は13メートルくらい離れてる時なの。

 この時の私の心の中は「閉めていいよ、次のやつ乗るから」が100%なのに、ほとんどの人は待っててくれる。これが本当に気まずい。


「気まずいなら早歩きか走るなりして誠意を示せ」という意見もあると思うけど、私にはそれすら気まずいんだ。

 走るということは、「乗りますよ」と言っているに等しい。つまりこれは、「俺が乗るまで閉めるなよ」なのである。


 といったように、気にしすぎ人間である私の頭の中はこんな感じなので、私はさらに別の道を探した。


 この駅はエレベーターの手前(手前の右らへん)にトイレがあるので、何食わぬ顔で、まるで最初からトイレが目的地だったかのように振る舞い、エレベーターの駆け引きを発生させないようにするという方法だ。


 ここで大事なのは本当にトイレに行かないことだ。タイミングを見計らって、さっきエレベーターに乗っていた人からこちらが見えなくなった瞬間に出て行ってエレベーターの前に戻る。これが模範解答だ。


 なぜ実際にトイレをしてはいけないのかというと、その間に次のエレベーター利用者が来るかもしれないからだ。


 もし来て、その人がエレベーターの前に立って待つことになったら。さっきと全く同じ状況になってしまうのだ。


 いや、さっきより状況は悪化している。トイレ作戦が使えないからだ。トイレから出てきた人間が、何食わぬ顔でトイレに戻っていくのはおかしすぎるだろう。


 ということで、この日も例によってエレベーターの前に人がいたのでトイレ作戦を実行し、誰もいないタイミングでエレベーターに乗り込んだ。


 そして少し歩く。

 この駅のめんどくさいところは、この後また同じだけ下りないとホームにたどり着けないということだ。ま、下りだから一瞬で降りれるけど!


 って感じで階段降りようとしたら、さっきのエレベーターの人がいたので急遽変更。向こうの方まで歩いてエレベーターで降りよう。別にいいんだけど、なんか鉢合わせたくないんだよね。絶対向こうは何も思ってないと思うけど。


 ホームに降り立つと、普通電車が停車していた。4分後に来る同じ方面の特急を待っているのだ。


 こういう時、私はこの4分間を普通電車の中で過ごす。涼しいからだ。運が良ければ座れるし。


 ということで、4分後に特急到着! いざ名古屋へ! ride on!

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