プロローグ
ソロモン・グランディ
月曜日に生まれ
火曜日に洗礼
水曜日に嫁をもらい
木曜日に病気になった
金曜日に病気が悪くなり
土曜日に死んだ
日曜日には埋められて
ソロモン・グランディは
一巻の終わり
これは、イギリスの古い童謡の一つ「ソロモン・グランディ」の歌詞。ソロモン・グランディという男の一生を一週間になぞらえて歌っているものだ。詞だけを読むと単調で楽しげのない平凡な人生のようだけど、その軽快な曲を通すとどこか可笑しく聞こえる。
今日、僕は結婚をする。
歌で言えば、水曜日。一週間の前半を終え、後は病気になって死ぬだけ。人生の面白みのある部分は、全て終えてしまったというわけ。でも、僕はそれでいいと思っているし。むしろ、そうあることを願ってすらいた。
何故なら僕は、平凡な人生を楽し気に歌うソロモン・グランディが大好きだからだ。小説やドラマの登場人物みたいな、大きな出来事は不要だ。困難は人生のスパイスとも言うけど、スパイスで舌を痛めることだってあるのだから。
僕は、面白みに欠けるとしても優しく穏やかな人生を迎えたいんだ。
そんな人生はつまらないかい。だったら、ソロモン・グランディを聞いてみなよ。平凡で単調な人生だって、歌い方次第でどうとでも楽しめるということを。
ソロモン・グランディが、きっと君にも教えてくれるよ。