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第61話 聖女の母は交渉人?

「……教える。」


 神様は簡単に脅しに屈してしまったみたい。


「ただし、絶対に他には広めないでくれ。でなければ死んでも教えない。」


「まぁ……教えて貰うワケだし、そのくらいの条件なら呑むわ。」


 思ったよりもあっさり教えて貰える事になった。


「じゃあ早速教えるから、しっかり覚えてくれ。失敗すると大変な事になるからね。」


 神様は震えながら復活魔法について教えてくれた。


 この魔法は死者を復活させる際に対象の保有魔力と同等の魔力を消費するそうで、込める魔力が少ないとダメらしい。


 自分よりも魔力が多い相手は復活出来ないという事だ。


 しかしそれにも例外があり、復活させたい相手に対して愛しさか切なさか心強さを抱いていれば足りない分はカバー出来る事もあるそうなのだが……心強さって何?


 そして肝心のやり方は……


「復活させたい相手が好んでいる物を思いつく限り並べる。最低3個は並べてくれ。そして、生ナマズ生ナマコ生ナメコと三回連続で5秒以内に唱えるんだ。」


 早口言葉?


 どうも、20個以上並べると時間制限が10秒に緩和されるんだそう。


「もしも噛んでしまった場合は、ナマズもナマコもナメコも二度と生では食べられなくなる体質に変わってしまうから、失敗はオススメしない。」


 そんな物を生で食べる事なんて一生ないから、それは別に構わないわ。


「結構不便な魔法ね。」


「あぁ。だからうちの天使達をこれ以上攻撃しないで欲しい。前にアリエーンちゃんが天使達をミンチにした時は本当に大変だったんだ。こんなアホらしい事を人数分やったんだからね。」


 確かに、それは非常にアホらしい。神様が人数分そんな事をしていたのかと思うと、少しだけ同情する。


「実際にやってみるかい?」


「えぇ、試してみたいわ。」


 神様は死んでいる天使が好きだった物をたくさん並べ始めた。


 その中には女性の下着も混じっている。


「天使なのにいやらしいですね。」


「そう言わないでやってくれ。彼はこれを握りしめていないと眠れないそうなんだ。」


 そんな奴なんて寝なければ良いのよ。


「あっ。」


「お母さんどうしたの?」


 何か珍しい物でも見つけたのかな?


「これ、昔私がお気に入りだったぱんつだわ。いつの間にかなくなってたんだけど、こいつが犯人だったのね……。」


 とんでもない天使だわ。もう堕天した方が良いんじゃない?


「まぁ……それなら殺しちゃった事もこれでチャラね。餞別にあげておく事にするわ。今更返されても困るし。」


 仕方ないという顔で下着泥棒を許している。お母さんは意外とこういう事には心が広いみたい。


「準備出来たよ。今回は20個以上並べたから、10秒かかっても良いからね。」


「わかったわ。それじゃあ……生ナマズ生ナマコ生ナメコ、生ナマズ生ナマコ生ナメコ、生ナマズ生ナマコ生ナメコ。」


 ゆっくりと正確に唱えるお母さん。10秒だったらそう難しくはない。


 真っ二つになって死んでいた天使が再生され、きょろきょろと周囲を見回しながら起き上がる。


「そのぱんつはお詫びにあげるから、殺しちゃったのは許してね?」


 お母さんの発言で事態を把握したパンツ泥棒天使。


「も、もちろんです。良かった……許してもらえたから、俺は下着泥棒じゃないという事ですね?」


 許してもらったとしても下着泥棒は下着泥棒だと思う。


「あなた、名前は?」


「自分はニョルニャルであります!」


「わかったわ。ニョルニャルって天使は下着泥棒だって、知り合いの女性に広めておくから。」


 あ……復活した天使が絶望の表情でお母さんを見ている。


 別に天使なんて人間とほとんど顔を合わせる事はないのだから、評判なんて気にしなくても良いと思うんだけど。


「ま、魔法は教えたから殺さないでくれるよね?」


「それは勿論。私達に手出ししないなら何もしないわ。」


「約束しよう。君達には手出ししない。」


 思いの外上手く交渉出来た。


「私から質問があるのですが。」


「もしかして僕の年収とか? 結婚すれば一生遊んで暮らせるくらいには……」

「それはどうでも良いです。」


「そ、そうかい。」


 この人と結婚は絶対に嫌。


「どうして私を勧誘したんですか?」


「美人だからだね。君はアリエーンちゃんよりも温厚だと情報が入っていたから、いけると思ったんだ。」


 温厚だからいけると思うって凄いわ。


「後は、アリエーンちゃん程に強くないというのも大きい。いざとなれば僕が止めれば良いと思っていたのさ。」


 納得はしたけど……明らかに情報が古い。私がお母さんよりも弱かったのは魔界入りする前の話だ。


 最新情報は入手していないという事なのね。というか、一体いつの情報をアテにしていたのかしら?


「それっていつの情報ですか?」


「5年くらい前だね。」


 思った以上に昔だ。5年前だと、私ってまだ子供だったんだけど?


 これ以上話すと碌でもない事を聞かされそうだ。


「わかりました。もう良いです。」


「もっと色々と聞いてくれて良いんだよ? 君には特別に話してあげ……」

「いえ、もう良いです。」


「そ、そうかい。」



 復活魔法のやり方は誰にも教えないという約束をし、私達は天界を去った。


 なんだか神様が名残惜しそうにしていたけど……あの人を配下にするのは面倒そうだったし、いらない。


 やっぱりお母さんは頼りになるなぁ。


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