表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

52/87

第51話 聖女の部下

「僕としてはアリエンナちゃんに負けたから、アリエンナちゃんの配下のつもりなんだけど。」


 私よりもずっと年上なのに、そういうのは気にならないのかな?


「そうなんですか?」


「そうだよ。負けた方が配下になる約束だったんだから、それはアリエンナちゃんにも適用されるさ。」


 これはせっかくの話だから、受けよう。


「お母さん。部下が出来たよ。」


「あら、この年で部下が出来るなんて優秀ね。偉いわ。」


 お母さんは私の頭を撫でながら褒めてくれた。


「魔神が部下って優秀どころじゃないだろ……。」


「アリエーン。その褒め方は変よ。」


 そんな事はないと思うんだけど。


「アドンは魔界統一をするつもりだったんですよね? 何か策があったんですか?」


「あぁ、その事? 勿論プランはあったさ。」


 聞くところによると……友達のベーゼブを配下にした後、魔神ルシーフと魔神バルバスを滅ぼして魔神核を複数吸収するつもりだったそうだ。


「今でこそ魔神核と呼ばれているけど、実のところ並外れて強力な魔石というだけさ。それが長い悪魔の歴史の中で特別視されるようになり、五つしか存在しないという希少性と悪魔の存在を引き上げる程の莫大な力をもたらす異常性から、いつの頃からかその魔石を吸収したものを魔神、そして魔神が体内に持つ魔石を魔神核と呼ぶようになったというわけ。」


 そんなに凄い物なんだ……。確かに魔神は強かったし、相当な貴重品なのね。


「その魔神核を複数吸収出来さえすれば、魔神を従える事も当然不可能ではない。ベーゼブとアンリならわざわざ従えなくても協力はしてくれそうだけど……念のためだね。」


 それなら不可能じゃないし、割と現実的な策だとも思う。でもそうする理由が分からないわ。


「そうまでして魔界を統一するのはどうしてですか?」


「それはね。ルシーフとバルバスに魔界を支配されたくなかったからさ。ついでに友達のベーゼブをアンリと結婚させてあげたかったというのもある。」


 魔神ルシーフと魔神バルバスは普通に悪い悪魔だそうで、そんな悪魔に支配されてしまうと魔界がメチャクチャになってしまうのだとか。


「私は強いだけの男は嫌よ。」


「そうだったのかい? なら、ベーゼブがもっと面白味のある男になるようアドバイスしてあげれば良かったね。」


 そういう問題じゃない気がする。アンリさんには既に旦那さん、私のおじいちゃんがいるそうだし。


「そういう理由なら言えよ。最初から協力すれば良かっただろうが!」


「言おうとしたんだけど。」


「なら言え。そもそも、魔界を統一するから勝負しようって、お前から言ってきたのを忘れたのか?」


「いやいや。魔界統一の理由をベーゼブが聞こうともしてくれないから、じゃあ勝負しようって言ったんだよ。」


「え? あぁ……そうだったか?」


「そうだよ。だから仕方なく勝負する事になったんじゃないか。」


 戦争の原因はベーゼブって事?


 友達の話も聞かないなんて、とんでもない奴だわ。


 今度何かあったらブッ叩いて言う事を聞かせよう。


「全く。大方アンリにも話を聞かずに強引に迫ったんだろう?」


「そうね。その通りだったわ。」


 友達と言うだけあって鋭い。


「ベーゼブ。君ねぇ……普通に嫌われるよ?」


「……すまん。」


「強引な男って悪くはないんだけど、話も聞かないのはダメよね。」


 お母さんの言葉が刺さっているみたい。ベーゼブは床に膝をついてしまった。


「取り敢えずは戦争が終わった事を教えたら?」


「そうだね。僕とベーゼブは配下達に伝えて来る。君たちは客間でキノコ茶でも飲んで待っててくれたら良いよ。」




 そうして私達は客間に通され、アドンとベーゼブは戦争終了を告げに転移して行った


「しかし、アドンとの戦争までもがベーゼブのせいだったなんてね。」


「見ての通り話を聞かないタイプでしょ? 根は悪い奴じゃないんだけど、結構迷惑するのよ。」


 アンリさんが呆れたように話す。


「今度からは、私がブッ叩いて言う事聞かせます。」


「アリエンナちゃん……理由つけて戦いたいだけでしょ?」


 うっ……。


「あなたは戦い始めるとアリエーンよりも酷いから、仲間とは今後一切戦わせません。」


「修行でもですか?」


「ダメ。アリエーンは怒って言う事聞かなくなるけど、あなたは楽し過ぎて言う事聞かないんだもの。」


 ケチっ。


「そんな不満そうな顔しても許可しません。」


「母さん私は?」


「アリエーンは……ベーゼブにでも相手してもらいなさい。」


 お母さんだけズルいよ。


「というか、そんなに戦いたいなら2人で親子対決したら良いじゃない。」


 えぇ?


「それはダメよ母さん。組手なら良いけど、戦いは出来ないわ。」


「どうして?」


「娘を怪我させたくないから本気出せないもの。」


「私もお母さんを怪我させたくないから本気を出せません。」


 アンリさんの頬が引き攣っている。


「あんたらね……私には加減無しで向かって来た癖に……。」


「仕方ないじゃない。母さんは簡単に死なないし復活も出来るから、安心してぶっ殺せるのよ。」


 お母さん酷い。でもちょっとだけ分かる気がする。


「何て酷い娘なのかしら……。」


「冗談よ冗談。」


 お母さんは笑いながらヤダわと手を振っている。


 良かった……そうだよね? 冗談に決まってるよね?


「あなた、私の頭を引っこ抜こうとしたじゃない。」


 お母さんは目を泳がせながらヤダわと手を振っている。


 え? 本当に冗談……だったんだよね?


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ