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第42話 聖女の告られ

「ごめんなさい。でも、ちゃんと力を入れないから悪いのよ?」


 アスタさんはちぎれた手を抑えながら、お母さんを化け物を見るような目で見ている。


「す、すまねぇ。力は入れたんだが……。許してくれ……。」


 可哀想に。すっかり縮こまって……。


「アスタは謝らなくて良いわ! アリエーン!」


「殺してないわよ?」


「重傷じゃないの!」


「手が一つ取れたくらいなら大丈夫よ。ね?」


「あ、あぁ……。」


 アスタさんは怯えている。余程お母さんが恐いに違いない。


「あの……。」


 私が声を掛けると皆の視線が一斉に集中した。


「回復魔法で治しましょうか?」


「そう言えば、聖女なんだっけ?」


「はい。」


「じゃあお願いするわ。」


 私が回復魔法をかけてあげると、アスタさんのちぎれた手がニョキっと生えてきた。


「ありがてぇ……。お前良い奴だな。」


「え? まぁ……聖女ですし、それなりに良い奴だと思います。」


 アスタさんが私をじっと見ている。


「結婚してくれ!」


「それは無理です。」


「何故だ!?」


 随分唐突ね。勢いだけで生きている人なのかしら?


「もう結婚していますので。」


「なら、お前の旦那を倒したら俺と結婚してくれ!」


「アスタ。やめた方が良いわ。」


 アンリさんが止めに入る。


 助かるわ。ギャモーを倒されるのはいやよ。


「何故だ? アリエンナの旦那は俺より強いのか?」


「あなたより弱いわ。でもね、絶対にやめた方が良い。」


「なぁ、アリエンナ。良いだろ?」


「ダメです。」


「お前の旦那は強い奴じゃないとダメだ。だから戦わせろ。」


 この人、しつこいなぁ。


「手……もう一回ちぎりましょうか?」


 私はさっきのお母さんと同じくらいまで身体強化の出力を上げた。


「……。」


「ほらね?」


 何でアスタさんは、お母さんを見る時と同じ目で私を見るのかしら?


 まだちぎってないのに。


「ギャモーを殺したら、魔界を滅ぼしますよ?」


「その時はお母さんも手伝うわね。」


「す、すまん。お前の旦那とは戦わないから許してくれ……。」


 全く。最初からそう言えば良いのよ。


「アリエンナちゃん? それはやめてね? あと、瞳孔開いてて怖いわ。」


「気のせいです。」


「そ、そう……。と言うわけで、2人は魔神形態じゃない時の私より強いから、怒らせないでね? 1級上位の更に上、特級だから。」


「わかった。」

「はい!」

「……了解だ。」

「勿論です!」


 失礼ね。それだと私まで恐い人みたいじゃない。


「2人とも、ここにいる4人の悪魔が幹部よ。アンリ魔神軍では四天王制だから、あなた達は四天王の上に新設する役職に就いてもらうわ。」


 アンリさんは私とお母さんに目を向け言った。


「わかったわ。」


「わかりました。」


 私達専用の役職をくれるの? 


「そうねぇ。役職は……将軍でどう?」


 まぁまぁ恰好良い。


「良いわよ。」


「それでお願いします。」


「決定ね。それじゃあ紹介も終わったし、質問はない?」


 質問ならある。大事な事だ。


「お給料はもらえますか?」


「それは勿論。お金だと人間界とでは違うだろうから……貴金属や魔石、珍しい魔道具とかで良い?」


「それで大丈夫です。」


「良いわよ。」


 魔石とはダンジョンの核で、小さい物でも特級魔法10発分以上の魔力が込められている貴重な石だ。


「他に質問は?」


「皆さんは何歳で、どのくらい強いですか?」


「俺は3万くらいだな。1級上位だ。」


 アスタさんは長生きだわ。上位なら、通常形態のアンリさんと同じね。見た感じはアンリさんより少し下に見える。


「私は4万5千歳ね。1級上位よ。」


 シトリーさんも長生き。この人も上位なんだ……。


「……1万。1級中位」


 イブリスさんは他の悪魔より若いわ。


「1万歳で1級下位です。」


 エリゴースさんも若い。


 そして、ここでアンリさんが補足してくれた。


「ちなみに、アスタ、シトリー、イブリス、エリゴースの順番で強いわ。当然同じ上位でも多少の差は存在する。この中でアスタは特に才能があるわね。」


「皆結構おじいさんおばあさんだったんですね。私は16歳です。」


 一斉に視線が私へと向く。どうしたの?


「それなら、俺らの方が年上だな。ちゃんと年長者のいう事は聞けよ?」


「はい。色々教えてください。」


 後でお年寄りの知恵とか教えてもらおう。


「何言ってるの? 何万年も生きておいて、その程度にしかならなかったって事でしょ。なら、4人もいらないわね。」


 お母さん。そんな事言っちゃダメだよ。


「母さん。2人くらい私の練習台にしても良い? 壊れたらアリエンナがちゃんと治すから。」


「ダメに決まってるでしょ! 見なさいよ。皆怯えてるじゃない!」


 ほんとだ。アンリさんの言う通り、4人とも魔物を目の前にした村人みたいに震えてる。


「恐がって戦えなくなったらどうするのよ!」


「大丈夫よ。その時はきちんと片付けるから。」


「あんたの片付けは殺すって意味でしょうが!!」


「冗談よ冗談。母さんったら冗談通じないんだから。」


 多分冗談じゃない。お母さんはきっと本気だった。


「はぁ……。本当にあなたって人は……。絶対に仲間を傷つけちゃダメよ?」


「はいはい。……ねぇ。冗談だって分かるわよね?」


 お母さんがアスタさんに話しかけている。


「あ、あぁ……そう、冗談に……決まってる、よな?」


「冗談なんだから笑いなさいよ。」


「え?」


「笑え。」


「は……はは、ははは。」


 アスタさんの笑みが引き攣っている。


 アスタさん以外の四天王は全員下を向き、絶対にお母さんと目が合わないようにしていた。


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