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第36話 聖女の教えて魔界事情1

「この後どうすんだ?」


「家をこのままにしておけないし、大工さんに直してもらいます。」


 お母さんが暴れたから家の中はボロボロだ。


「と言ってもな……すぐには直しきれねぇだろ。」


「うーん……魔法でなんとかしてみますか。」


 私は元々あった家をイメージして魔法を発動した。


「いえー。いえよー。とにかく良い感じに直って下さい。」


 すると、ズゴゴゴっと音を立て、壊れてしまった部分の壁が地面から生えてきた。天井に空いた穴も土が塞いで固まり、綺麗に修復されいく。


「直りました。」


「なんて適当な呪文……。土魔法ってこんな使い方が出来るんでしたっけ?」


「聞いた事ねぇぜ。」


 変な事を聞くのね。出来たんだから、きっと出来るんだと思うわ。


「ミレイユさんは聞きたい事ってもう良いんですか?」


「あの……出来れば魔神とか魔界の話を聞きたいです。」


 ミレイユさんは恐怖よりも興味が勝っているようだ。


 そして私も気になる。是非聞きたい。


「やめといた方がよくねぇか? ミレイユは普通に仲良くなる事を目指せよ。これ以上首突っ込むと危ねぇだろ。」


 そうかな? お母さんは一旦落ち着いたからもう大丈夫だと思うんだけど……。


「い、いちおう親戚ですし。失礼な事を言わなければ大丈夫です。きっと……。」


「目が泳いでんじゃねぇか。」


 ほんとだ。ミレイユさんったら、そんなに無理してまで知りたいのかしら?


「いざとなれば、アンリ様や聖女様が助けてくれます!」


 あまり私を当てにされても困る。私じゃ止めきれなかったし。




 私達はアンリさんに魔界や魔神の話を聞く為、家の修理が終わった後はお茶を飲んで待っていた。


 すると……


「ただいまー。」


「ただいま。」


 2人が笑顔で帰って来た。血まみれで。


「お帰りなさい。どうして血まみれなの? またブスって言われた?」


「そんな事は言われてないわ。」


「じゃあ何でそんな恰好になってんだ?」


「それはね……」


 お母さん達は美人だと言われたそうなのだけど、その美人さ故に襲い掛かられたのだと言う。


 子供の頃はアンリさんをブスと言い、お母さんを悪魔の子と言った。


 そして大人になった今、美人だと言って目の色を変えて襲ってきた。


 見事な手のひら返しに腹が立ち、ぷちっと潰してきたのだそうだ。


「潰すってのは……そのままの意味で潰しちまったのか?」


「勿論よ。だって、私達は既婚者だもの。そんな人妻に襲い掛かる奴は碌でもないんだから、死んでも良いのよ。」


 当然のように言ってのけるお母さん。


「私は潰すのもどうかと思ったんだけど……かと言って止める気にもならなかったわ。」


 そして、仕方なかったのだと言うアンリさん。


「いい歳した大人なんだし、発言には責任が伴う事を教えて来たのよ。」


「……。」


 せめて手加減してブッ叩いてあげたら良いのに。


「アリエンナ。やっぱお前は良い奴だよ。」


「え? まぁ……はい。」


 急に褒められると照れるわ。


「あの……さっきは申し訳ありませんでした。怖かったとは言え、失礼な事を言ってしまいました。」


 ミレイユさんがお母さんに頭を下げる。


「私もちょっとやり過ぎちゃったわ。おあいこって事にしましょう。」


 ちょっとどころじゃなかったけどね。


 お母さんは優しくミレイユさんの頭を撫でている。血まみれで。


「ありがとうございます。」


 なんとか仲直り出来たようで私もホッとした。


「なぁ、アリエンナのばあちゃんよ。」


「どうしたの? ばあちゃん呼びは遠慮して欲しいんだけど。」


 きっと何歳になってもアンリさんは女性という事なのだ。


「それならアンリの姐さんでどうだ?」


「うーん……まぁ、それなら。」


「せっかく母ちゃんとミレイユが仲直りしたんだし、会話がてら色々と教えてくれよ。」


 ギャモーったらナイスよ。


 悪魔が知り得る情報とかをミレイユさんから教えて教えてって言うとなると、全然反省してないみたいだものね。


「良いわよ。何が聞きたい?」


 アンリさんは魔界の事を先ず教えてくれた。


 魔界……この世界とは存在する位相を異にする場所。原理は分からないが、こことは重なりながらも微妙にズレた世界なのだそうだ。


 そこには下級から上級までの約三百億程の様々な悪魔が住んでおり、この世界の生物と同じように暮らしている。


 彼らは時々人間の悪魔召喚により呼び出される事もあるが、基本は魔界で田畑を耕し生計を立てる生物。悪魔召喚は悪魔にとっての宝くじのような扱いなのだとか。


 魔界では6~8級程度の下級悪魔が大半で(8級でもBランクくらい)、人間と同等の知性を持ちながらも非常に素行の悪い者が多い。悪魔が人間達に忌み嫌われるのは、そうした素行の悪い悪魔が人間界で悪さをするからだ。


 そして、上級と呼ばれる3級以上の悪魔の数は1%程度。


 1級ともなれば、全悪魔の中でも僅かに六百体。全体の0.000002%しか存在しないという超エリートだ。


「つまり、1級下位クラスのアリエンナや1級上位クラスの母ちゃんは魔界に行っても通用するって事か?」


「通用するどころか、かしずかれるわよ? 悪魔は人間よりも強さに敏感だからね。」


「凄い……。」


 ミレイユさんは私を尊敬するような目で見ている。


 照れるじゃない。


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