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第16話 実験ですわ

「聖なるヒマ人?」


「非魔神、つまり魔神にあらずって事じゃないかしら?」


 違うの?


「俺はヒマ人だと思うぜ。」


「私は火の魔神だと思いますわ。」


『はい、そこの貴族っぽいお嬢様。正解です。特典として筋肉を強くしてあげましょう。』


「……それは見た目に変化はございますの?」


『見た目に変化はありません。美しさを損なう事なく、圧倒的な力を得る事が出来ます。』


 それは私もやって欲しい。強くなりたい。


「では、お願いしますわ!」


『ほい。』


 魔神は、やる気のなさそうな声を出した。


「……強くなりましたの?」


『これをどうぞ。』


 セリア様が受けとったのは、大きなダイヤモンドだった。


 いつかはギャモーもダイヤの指輪を送ってくれるのかな……?


 セリア様が手に力を込めると、ダイヤはあっさりと砕けてしまった。


『あー!! 壊した!! 何でそんな事するの!?』


「あの……壊してみろという意味ではございませんの?」


『違いますー。そんな事言ってませーん! これだから貴族のお嬢様は…ぶべらっ!!』


 魔神の言いがかりに対し、私はつい村人を思い出してしまって杖で打ちのめした。


「すみません。イラっとしました。」


「じゃあ私もついでに、ですわ。」


『いだだだだいだいいだいぃー!!』


「うわ……痛そぉ。」


「こりゃひでぇ。」


 セリア様は倒れている魔神の背中の肉を、先ほど身につけた力でもって握りしめていた。


 貴族なのに暴力とは、なかなかやりますね。



『酷い目にあった。最近の若者はすぐにキレる……。さあ早く願いを言って下さい。』


 怒らせてしまったかしら?


「じゃあ、お金持ちにして。」


『ふむふむ。』


「私は世界の半分が欲しいですわ。」


『ほう。』


「俺は強い剣が欲しい。」


『そうか。』


「私は……村人からの迫害を無くして下さい。」


 3人の視線が私に集中している。


『なるほど……。』



「「「「……」」」」



 皆黙ってしまったわ。


 いつ願いを叶えてくれるんでしょう?


「ねぇ。願い事は?」


『聞きましたが?』


「叶えてよ。」


 キャロルさんが催促するが……


『聞くだけ聞くと最初に言いましたよ? ですから、聞きました…ぶへっ!!』


 ふざけた事を言うので、セリア様のビンタで魔神がブッ飛ばされていた。


 流石はブッ飛び公爵夫人。


「少々お待ちください。ランプを握りしめてみますので。」


 セリア様……笑顔なのに怖いわ。


『あっ! 待って……待って下さい! 筋肉を強くしますので!!』


「そんなのいらないし。暴力聖女なんて言われちゃたまんないよ。」


 確かにそれは困る。


「暴力は良くありませんしね。」


(こいつ……どの口が言ってんだ?)


「ギャモー? どうかしましたか?」


「……なんでもねぇ。」



「無抵抗の相手を倒すのは気が引けますわね。貴方、何が出来ますの?」


『は、はい! 筋肉を強く震わせると火の魔法が出せます!』


「……無能ですわ。」


『あっ! あと、歌が得意です!』


「それは……役に立ちますの?」


『暗い歌が好きなので、皆暗くなります。』


「普通に嫌なんだけど。」


 それは私も嫌よ。


『はははっ。皆さんのように、過激な人を大人しくさせるのに役立ち……』


 ドギャッ!!

 グシャッ!!


 私は魔神を杖でブッ叩き、同時にセリア様はランプを握りつぶす。


 その瞬間、魔神はスウッと消えてしまった。


「ランプの実験は失敗ですね。」

「ランプの実験は失敗ですわ。」



「……2人が納得するならそれで良いんじゃねぇか?」


 ギャモーがポツリと呟く。


「それでは最後、本に魔法を込めてみる事に致しましょう……と言いたい所ですが。」


「休憩、というか今日はおしまいにしないと。長時間同じ体勢は辛いからね。」


「そうですね。また明日にしましょう。」


「そうしようぜ。」


 私とギャモーは、自分達の割り当てられた部屋に帰った。




 そして翌日……私達は再び集まり、本に魔法を掛ける。


 本はブルブルと震えだし、勝手に最初のページを開く。


 古代語で書かれていたのに、何故か私達は文字を読めるようになっていた。


 全員で読んでみる事にする。



『〇月〇日 晴れ

 幼馴染のダニエルが告白してきた。嬉し過ぎて、今日から日記を書く事にした。


 〇月〇日 晴れ

 ダニエルがお花をプレゼントしてくれた。嬉しい。


 〇月〇日 晴れ

 ダニエルが昨日とは違うお花をプレゼントしてくれた。嬉しい。


 〇月〇日 晴れ

 ダニエルが見たことも無い珍しいお花をプレゼントしてくれた。嬉しい。』



「誰かの日記みたいだね。」


「そうですわね。」


「特に変わった所もねぇし、普通だなこりゃ。」


「そうですね。もう少し後のページを開いてみましょう。」



『〇月〇日 晴れのち曇り

 ダニエルは毎日お花をプレゼントしてくれる。仕事は?


 〇月〇日 晴れ

 ダニエルが今日もお花を持ってきてくれた。仕事は大丈夫か聞いたら曖昧に笑っていた。


 〇月〇日 曇り

 もう何度目だろう。ダニエルがお花を持ってきた。仕事の事を聞くと、彼は不機嫌になった。


 〇月〇日 雨

 ダニエルに毎日じゃなくても良いと伝えると、あからさまに不機嫌になった。


 〇月〇日 雨

 ダニエルがお花をプレゼントしていた。違う女に。』



「ここから文章が読めなくなっていますわね。」


 それ以降、文字を何度もグシャリと潰しては書き直したような跡があり、全く読めそうになかった。


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