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第14話 聖女の王都入り

 フェルミト王国へは大分距離もあり、20日もかかってしまった。私とギャモーは運動不足になってもいけないので、道中の魔物撃退にもかなりの頻度で参加させてもらった。


 私達は今、フェルミト王国王都へ入る為の検問待ちだ。


「やっぱ身体強化は便利だな。お前の母ちゃんには感謝だぜ。」


「良かったですね。私も結構強くなりました。」


「お前はこれ以上強くなってどうすんだよ……。」


「お母さんと同じくらい強くなれば、きっと村人にも迫害されなくなると思うんです。」


 ギャモーは難しい顔をしている。


「……多分そういう問題じゃねぇと思うぞ。」


 ギャモーは何か気付いた事があるのかしら?


 恥ずかしいけど、彼には村人が私を迫害する場面を目撃されてしまった。




 村から出て行く際……


「アリエンナ……俺はお前と一緒に生きたい。何も言わず着いてきてくれ!」


 そう言って彼、昔ブッ叩いて怪我をさせてしまった男の子が、私の手を無理矢理引っ張って連れ去ろうとする。


 何も言わずブッ叩いておいた。


 だが、その場面をギャモーに目撃されてしまったのだ。


 どうしよう。手を繋いでいたと誤解されたかもしれない。


 こんな事で浮気だなんて思われたくなかった私は……


 連続で10回くらいブッ叩いて、男の子の家の方角へぶん投げてやった。


 加減を大分間違えたけど心配はしていない。ついでに回復魔法をその子の家の方角へと放っておいたので死にはしない……。多分。


 その後も村の男達がひっきりなしに襲い掛かって来たので、浮気と思われてはかなわないと思った私は、全員ブッ叩いて撃退した。


 あまりにも連続で襲い掛かって来るので、ストレスと相まって2人程加減を間違えてしまったけど……


 その2人は手足の関節が曲がってはいけない方向へ曲がっていたが、きっと関節がたまたま柔らかいタイプの人だったのだ。そうに決まっている。


 前に聞いた事がある。関節が柔らかくて、こちらが心配になってしまう程体が良く曲がる人がいると……


 多分この事だったのね。

※全然違います




「アリエンナはよぉ、信じられない程美人だから単にモテてんだよ。」


 パートナーを褒める事を忘れないなんて、紳士の鑑だわ。


「しかも、モテ過ぎるから女達の嫉妬もかってたんだろうぜ。」


 そうだったの……?


「てっきり魔女だから迫害されているのかとばかり……」


「まぁ、迫害と言えばそうかもしれねぇな。でも原因は嫉妬とモテ過ぎだなありゃ。」


 でも待って。


「お母さんだって凄く美人なのに、私のようにはなっていませんよ?」


「お前の母ちゃんはなぁ……。」


 言いにくそうに言葉を詰まらせるギャモー。


「何か知ってるの?」


 凄く気になる。意地悪されない秘訣があるなら知りたい。


「あー……実は俺も同じ事を思ってな。昨日お前の母ちゃんに聞いたんだ。そしたら……」


「そしたら?」


「アリエンナが生まれる前、何人かの村人を加減抜きでブッ叩いてミンチにしたらしい。」


 あぁ……。


「それ以来、変な事してくる輩はいなくなったんだとよ。」


 お母さん。加減しなくても良いって言葉は冗談だとばかり思っていたけど……本気だったんだ。


 お母さんは本当にヒドい。でも好き。



 私達が馬車の中で話している間に騎士団が検問で手続きを行ってくれ、迎賓館へと向かう。


「凄いですね。こんなに大きい建物に泊まれるなんて……。」


「確かにこりゃ凄ぇ。つうか今更だが、俺なんかがこんな所に泊まっても良いのか?」


 ギャモーは私の旦那にあたるのだから大丈夫に決まっている。きちんと婚姻証明書も貰ってきているのだ。


「ちゃんと役所で証明書も貰ってきているから、心配しなくても良いんですよ。」


「ありがてぇ! 心配しちまったぜ。」

※彼を護衛扱いにする為の証明書だと思っています


 私達は迎賓館の中へと入り受付を済ませる。


 その際に聞いた話なのだけど、私以外にもう1人聖女が来ているそう。


「もう1人の聖女って気になりますね。やっぱり強いのかしら?」


「聖女様が強いなんて話は聞いた事がねぇ。お前が例外なだけだと思うぞ。」


「そうなんですか? 」


 割り当てられた部屋の場所も近いそうなので、運が良ければ会えるかもしれない。


「先ずは荷物を部屋に置きましょう。」


「そうすっか。」


 部屋の中はかなりの広さで、様々な調度品や絵画で豪勢に彩られている。


「宿泊用の部屋なのに、こんなに豪華なんですね。」


「お貴族様が宿泊するような場所らしいからな。それにしても驚いたぜ。」


 どう考えても人数に対しての部屋の広さが合っていない。これが貴族の感覚なのかもしれないけど。


「せっかくなので王都を観光しませんか? パーティーは明後日なわけですし。」


「おっ。良いじゃねぇか。そうしようぜ!」


 そうして部屋の扉を開けると……


 明らかに場違いな存在が居た。


「誰かのペット……いや、ペットなのかこれ?」


 向いの部屋の扉の前に白鳥が居るのだ。正座した状態で。


 若干筋肉質な脚を綺麗に折りたたんで静かに座っている。


「白鳥さんは何をしているのですか?」


 私が話しかけると、白鳥さんは顔をこちらへ向けて口を開く。


 まさか……喋るの!?


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