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異世界ニルヴァーナの物語

異世界ハーフの娘達に赤ずきんを聞かせたが脱線しすぎる

作者: HOT-T

 お昼ご飯の後、私レム・ミアガラッハ・メイシーは3人の娘を集めお話を聞かせてあげることにした。

 我が家では輪番制で行われている習慣。様々な物語を通して情緒を育ててあげたい。


 長女のケイト。

 次女のリリィ。

 三女のアリス。

 

 私と血が繋がっているのは次女のみですが他の2人も可愛くて仕方が無いです。


「それでは、今日のお話はお父様の世界のお話、『赤ずきん』です」


 私達は異世界人である夫から聞いたお話を定期的に聞かせてあげることにしたています。

 このお話は教訓もしっかりしているので是非、聞かせてあげたいと常々思っていたのです。


「あの、メイママ。その『赤ずきん』ってどんなモンス……」


「ケイト。まずはモンスターから離れてくださいね」


「う……」


 不思議な事があれば何でもモンスターの仕業と考える長女ですが遂にタイトルの段階で疑念を抱き始めたようです。


「ちょっと待って。確か赤い帽子を被った様な見た目のゴブリン系モンスターとかいなかったっけ?」


 ここで普段はモンスター説に懐疑的な次女がまさかの助け舟を出しました。


「そうよ、リリィ。確か『レッドキャップ』って名前よ。あたしはそれを言いたかったの」


「ごぶりん、こわいよぉ」


 やれやれ、ちょっと気弱な三女が怖がってるじゃないですか。


「とりあえず今回の場合は別物なのでモンスターから離れなさい。ていうか二人とも、アリスを怖がらせてはダメでしょう?」


「「うっ……」」 


 こうして、私は赤ずきんを話し始めました。


「昔々、あるところに赤ずきんと呼ばれる女の子が居ました。いつも赤いずきんを被っていたので赤ずきんなのです」


「ねぇ、メイママ。ちゃんとお名前で呼んであげようよ」


 心優しいアリスが素朴な疑問をぶち込んできます。

 いや、確かにそうだけど……


「何か名前では呼べない複雑な理由があると考えた方がいいわね。ケイト、あんたはどう思う?」


「そうね、リリィ。これは社会の闇というものかもしれないわ」


 多分違うと思う。

 というかウチの娘達は何でこういう事を気にするのでしょう……と言いたい処ですが私も気になりました。


 離れた所でくつろいでいる夫に声を掛けます。


「ナナシさん、赤ずきんちゃんって本名は設定されて無いんでしたっけ?」


「赤ずきんの本名?基本的には無いけど設定されているものもあるって聞いた事があるな。確か……『メイジー』とか……あっ!」


 なっ!?

 私の、『メイシー』という名前と一文字違い!?

 これには娘達も驚き戸惑いを隠せない。

 

「もしかしてこれは母様の体験談?」


「違います。名前は似ていますが私とは一切関係ありません!!」


 あんな間抜けな食べられ方をする女の子と一緒にしないでください。


「まさかモンスターの……」


「ケイト、モンスターから離れなさい。お願いですから!」


「えへへ、メイママとおなまえにてるねぇ。メイママもかわいい~」


 あら、アリスったらほっこりしてくれる事を言ってくれるじゃないですか。

 ちょっと嬉しいです。


「名前は赤ずきんで通しますよ!ある日、赤ずきんちゃんはお母さんに頼まれて森の向こうに住むおばあさんの家にお使いに行くことになりました」


「ちょっと待って。何でおばあさんと離れて暮らしているの?しかも森の向こうだなんて。もしかしてお母さんとおばあさんは不仲説が!?」


 何故そうなるんですか!?


「ケイト、ウチだってライラおばあ様と離れて暮らしているでしょ?」


「でもライラおばあちゃんは旅が好きな人だから一ヶ所に長期間定住しない人だし……」


「おばーちゃーんだぁ!!」


 まあ、確かにそうですけど……というかこの娘達、本当にツッコミが好きですね。


「お母さんは赤ずきんちゃんに『寄り道をしてはいけませんよ』と注意しました。赤ずきんちゃんは『はい』と返事をしてお使いに出かけました」


「絶対これ、寄り道するパターンよ」


「わかるの、リリィ!?」


「ええ、ケイト。だって、この子親の言う事を聞かなさそうなタイプよ。返事も『はい』とかなりいい加減なものであることが何よりの証拠よ。話を半分くらいしか聞いていないに違いないわ」


 リリィ、あなたはまだ3歳なのに何て考察をしてるんですか。

 いや、まあ……当たってますが。

 というか話が進まないのですけど……


「赤ずきん、わるいこ?おかーさんにおこられるよ?」


 以前から気になっていましたがアリスの精神年齢が他の2人より低いですね。

 おかしいですね。3人とも同じ日に生まれたし、同じように育ててるので実質三つ子なんですが…


「赤ずきんが森を歩いているとその様子を伺う影がありました」


「まさかモンスター!?」


「ケイト、いい加減モンスターから離れなきゃダメよ」


 そうです。やっぱりリリィは私の血を引いてるだけあって賢いですね。


「恐らくはアサシンね」


 前言撤回。

 もっととんでもない説をぶち込んできましたよこの娘。


「アサシンが!?でもリリィ、何で赤ずきんはアサシンに狙われるというの!?」


「私が思うに赤ずきんは何かしら重要な手紙をおばあさんに届けようとしているのよ。いや、もしかしたらおばあさんというのも本当のおばあさんでは無い可能性も……」


「い、いんぼう!あさしん、こわい」


 あれ、何だか今日はいつもに増して話が脱線するんですけど……


「は、話を続けます。赤ずきんちゃんの前に現れたのは狼でした。狼は『あっちに綺麗な花畑があるよ』と言いました。赤ずきんちゃんはお母さんの言いつけを破って寄り道をしてしまったのです」


「ちょと、リリィ。本当にこの娘寄り道したわよ。お母さんの言いつけを全く守れてないわ!」


「だから言ったじゃない。でも待って。花畑なんかで赤ずきんちゃんは何をするというの?」


「そりゃ、お花畑だからね。お花を摘むのよ」


「お花摘み……………まさか、赤ずきんちゃんはお出かけ前にトイレを澄ませなかったの!?この子、自己管理がなってないわ!!」


 いや、何言ってるのですかこの娘!?

 参りました。レディの嗜みをこの間何気なく教えたのがあだとなったようです。

 

「ねー、メイママ」


「どうしましたか、アリス?」


「おしっこもれた」


「えぇぇぇ!?」


 アリスのお漏らしによりお話は中断。バタバタしていたらケイトとリリィが眠ってしまって本日のお話タイムは強制終了となりました。

 やはりこの子達、一筋縄ではいかないですね。

 こうして事前にトイレを済まさせてからおはなしタイムを迎えなければならないという教訓を得たのでした。

今回のおはなし役であるメイシーですが作中でも言われている様に赤ずきんちゃんの名前のひとつとされる『メイジー』をもじりました。


メイシーは初登場時に家臣として犬にされた剣士を連れていたのでそこから赤ずきんという発想の元、こういう名前になったと記憶しています。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ツッコミ系ファンタジー! (*^^*) 子供たちがかわいいですね~。 子育ての記憶がよみがえりました。
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