世界一ブスな私が、婚約者でごめんなさい!早く婚約破棄してください!
「お前なんか世界一のブスだ!俺に相応しくない!!近寄るな!!!」
5歳で婚約者が決まった当人同士の初顔合わせで婚約者であるエラン王子に言われた言葉。
その時、初めて私は自分がブスなのだと思い知った。私はリリアーナ・ブロンクス。ブロンクス公爵家の娘。爵位と年齢で婚約者候補になり、国王様と王妃様と何度も面談し、私が婚約者になることが決まり、初顔合わせだった。
泣きながら家に帰ると両親も兄、姉も私はブスではない、国一可愛いんだと言ってくれたけど、鏡に映る私は確かにブスだった。(実際にはリリアーナは本当に美少女だったが、エランに言われた一言に傷つき、王子様が嘘を言う訳ないと思い込み鏡に映る自分はブスなのだと思い込んだのだった)
本人達は婚約を望まなかったが、大人の都合で決まってしまった婚約。
ブスな私が少しでもエラン様に迷惑掛けないようにするには勉強やレディ教育を頑張る事と彼になるべく会わないようにする事。この不細工な顔を見せればきっとまた不快にさせてしまうから……。
顔合わせのお茶会にお城に呼ばれて登城してもエラン様は私を見る事なくいつも本を読んでいた。時間が過ぎると言葉も交わさず部屋に戻る。
そんな時間が7年続き、私達は12歳で学園に入学した。
学園だといままでより、顔を合わせる事も増え、申し訳ない事に私達は同じクラスになってしまった。
私は1番前の窓際を定位置にしていた。エラン様のお目汚しにならない為に。
私はエラン様が好きだった。好きな人に嫌われている事実は辛い。
だからお願いです。
早く婚約破棄してください……。
学園内ではたまにエラン様と側で談笑する可愛い少女が目についた。
私が可愛ければ、あんな風にエラン様も笑いかけてくれるのかしら?
エラン様は私の事が嫌いでも、婚約者の務めはちゃんとはたしてくれている。今日のパーティーでも私にドレスを贈ってくれ、エスコートもしてくれた。ドレスの色はエラン様の髪の色と瞳の色を使ったドレス。お友達にお世辞でも似合っていると言われると心が躍る。気心知る友達って有難い。
そんな方達と談笑していると……1人の少女が近寄って来て声を掛けてきた。
「いい加減エラン様を解放してください!エラン様は私を愛しているんですよ!だから早く婚約破棄してください!貴方より私の方がエラン様には相応しいのですから」
私に迫って来たのはチェルシー・モルビック侯爵令嬢だった。ピンクブロンドの目がクリクリした笑顔の可愛いと噂の令嬢。男性はこの方のように可愛い方が好みなのだと聞いたことがある。エラン様もそうなのでしょうね……。
「私達の婚約は国と我が公爵家が決めた事です。私の一存で婚約破棄など出来ません」
泣いてはいけない。私は公爵令嬢なのだから。弱い所を見せれば家族に迷惑が掛かってしまう。だから泣いてはいけない。でもエラン様はこの方を愛しているのね。
そう考えると我慢しても、とうとう涙が、一雫落ちてしまう瞬間、目の前が暗くなり、身体からは他の体温が感じられた。
「何故、リリアーナを攻め立てる!リリアーナは我が婚約者として責務を全うしている!」
暗い中聞こえて来たのはエラン様の声だった。
「お前は何故、お前より高位貴族のリリアーナに先に声を掛けた?社交界では高位の者から声を掛けるまで下位の者は待つ必要がある事くらい知っているだろう?リリアーナは公爵家で君は侯爵家だろう?」
「ですが、私達は同級生です!」
「学園では上下関係無く、平等に対応する事が必須だと言われている。だからこそ、俺自身も分け隔てる事はしていない。学園内だけなら、気軽に声をかける事も許される。
だが、此処は社交界だ!
それに大事な人を侮辱され、罪をなすり付けられて黙っているわけにはいかない!!」
大事な人…?私では無いわよね…。そんなはず無い。私はエラン様に嫌われているのだから……。
「エラン様、エラン様の大事な人は私ですよね?それなのに何故リリアーナさんを腕に抱かれているのですか?私はリリアーナさんに虐められたんですよ!」
チェルシーはそういってエランの腕を掴もうとした。
エランはその手を跳ね除け、言い放った。
「馬鹿を言うな!俺の大事な人はリリアーナだ!お前では無い!一度たりともお前に愛を囁いた事など無い!
大体リリアーナは人を虐めたりしないし、そんな暇は一切無い!日々俺の為に妃教育を受けてくれているのだから!」
「だってエラン様は私の笑顔が良いと言ってくれたじゃ無いですか!?私を選んでくださったんですよね?」
「俺は誰でも褒めるようにしている。お前は褒めるところが笑顔しかなかったんだ!俺がお前を選ぶ事などあり得ない!」
「そんな?そんな筈無いわ!だってお母様も言ってくれたもの。お前はもうすぐエラン様の婚約者になるんだって。エラン様は私の事愛してますわ!」
「妄想も大概にしてくれ!俺はリリアーナと婚約破棄するつもりもないし、リリアーナが万が一俺以外を選んだら俺は一生結婚などしない!」
「そんな?嫌ー!」
頭を掻きむしり叫ぶチェルシーを衛兵が両脇を抱えて連れて行った。
「リリアーナ、俺は最初に会った時からお前に惹かれていた。お茶会で会う時も、お前が眩しくて話しかけたいのに、出来なくて……。段々お前から笑顔が消えたのが辛くて、でも好き過ぎて手放せなくて。辛い思いをさせてすまなかった。
俺はリリアーナを愛している!俺と結婚して欲しい!!」
「……無理です……」
「……!?」
リリアーナの言葉を聞き、エランの顔は真っ青になって言葉を失っていた。そして自身の愚かさを悔やんでいた。
「……と先程までの私なら言っていました。
エラン様には相応しくないのだからと。でも、私も貴方を愛しています。私を貴方の側にいさせて下さい」
「必ず、必ず幸せにする!妻もリリアーナ以外は持たないと誓う!」
誓い通りエランは生涯妻はリリアーナしか持たなかった。
2人の間には一男ニ女が生まれ何年経っても周りが恥ずかしくなるくらい愛し合っていた。
チェルシーとチェルシーの母モルビック侯爵夫人は将来の王妃の座を狙った罪で権限も失い、侯爵家が監視する離れで一生幽閉された。
皆様メリークリスマス!
この作品を読んでくださってありがとうございます!
感謝ばかりです!!
評価も頂けたら次回作のパワーになりますので、どうかよろしくお願いします!!