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観察対象

 sideとある男性医師


 ちょっと前にここに運び込まれた少女は何回か俺も院内でみたことがあった少女だった。


 普通は何回か見た程度、それもチラッとしか見てない人物を覚えているかって言われたら俺は覚えてないって言う。そこまでの記憶力なんて持ってねぇよ。


 でもその少女は違う。あまりにも目に止まりやすい。


 幼さは残っているがあまりにも整いすぎている顔。細い手足。


 何よりも一番はその髪と目だろう。


 穢れなき純白の長い髪。そして赤い目。


 これだけの特徴があれば何度か見かければ当然頭に残るだろう。


 当然ここまで綺麗なやつなんだ、その手のやっかみとかありそうだなぁ、とかその時は呑気に思ってた。


 でもそれが現実となった。


 それも結構最悪な結果をもたらしてな。


 俺は主治医でもなんでもないから詳しいことは知らない。でも同じ医者としてある程度は分かる。


 まず外傷からだがありゃ絶対に傷跡が残る。殴られたんだろうな、酷い青あざだってあったがこれはまだ消えるから良いだろう。身体中に擦り傷、切り傷、打撲もあったがこれも大丈夫。


 だがあの背中の酷い擦り傷にあちこちにあった火傷跡は無理だろう。ありゃ酷すぎる。


 幸いなのは服で隠せる範囲にしかない。............この時の傷はな。


 ただ今回運ばれてくる原因となった首と手首の傷はそうはいかないだろう。隠すのは難しい。でもあれは結構な傷跡になるだろう。


 あの年頃でこの傷は酷すぎる。


 それに身体に傷が残るだけなら良いけど一番心配なのは精神面だろうな。


 俺は専門外だが時々精神科の同僚の話を聞くこともある。もちろん患者の個人情報までは聞かないけど病状については聞くこともある。


 そこから考えても下手したらPTSDになったり、そこまでいかなくても不眠やら人間恐怖症やら色々考えられる。


 そこまでなってほしくはないが、あの怪我から推察するにならない方がおかしいだろう。


 あんなの1人にやられたんじゃない。絶対複数だ。それも何時間もいたぶってたに違いない。


 これだからイジメってのは胸糞悪い。やってることは確実に犯罪行為なのに学校という場に守られているから滅多のことじゃ検挙すらされず内々で済まされる。


 今回のこともきっとそうなんだろうな。イジメがありましたすみません、それで終わるんだろう。


 ....................こんな制度なんて消えてなくなれば良いのに。


「ねぇ、ちょっといい?」


 噂をすればなんとやら、だな。あの子の主治医が話しかけてきたがなんの用だ?


「ん?なんだ?」


「ちょっとお願いしたいことがあるんだけど大丈夫?」


「ものによるな。金貸してくれっていったらはったおす」


「流石にそこまでじゃないよ。あの子についてだよ」


 多分あの白髪の子のことだろうな。


「この前運びこまれたあの白髪の子のことか?」


「そうよ。ちょっと男のあんたに手伝ってほしい」


「ふーん。で、その手伝いとは?」


 多分あれだろう。俺とあの子を接触させようとしているな。


「あの子が起きてる間にあんたが会いに行ってほしいんだよ。段階的に近づいて肩に手を置いてほしいんだ」


 やっぱりな。


「ほーん。俺に悪者になれと」


「ひらたくいえばそーだね」


「それ俺だけが悪者扱いされね?下手したらセクハラで首になるぞ俺」


「大丈夫。そこは私がなんとかする。..........多分」


「多分じゃねぇよ!!絶対だろ!!」


 お前の頼みで俺の生活が崩壊するなんてありえねえだろ!!もし首になったら責任とれよ責任!!


 .............まぁでも手伝ってやるか。俺も少し気になるし、何もなかったらそれで良い。何かあってもできるだけ力になってやれる。


「..............良いぞ」


「本当!?じゃあ今すぐ行ってこい!!!!」


「今かよ!?」


 急すぎね!?!?


「さっさと行ってこいのろま!!」


 この女やっぱり人使いが荒いな!!!


 ――――――


 あの子の病室の前まで来た。とりあえずノックをして入る。


 早く入らないとあの女の視線が痛いからな。


「失礼しまーす。こんにちは~」


 とりあえず手を振っとく。


 思いっきり警戒されてる。まぁここまでは普通だ。問題は次からだ。


「体調大丈夫?不自由なこととかない?もしあったらいつでも言って良いからな」


 少しずつ、ゆっくり歩いていく。


 それに応じるようにあの子はベッドの上で後ずさる。


 ............それ以外の反応がないのはおかしい。やっぱりなのか?


「ほんとに大丈夫か?」


 ここが本番だぞ。


 そっと肩に手を置く。


 ...............................................。


 やっぱりか。


 こりゃ重傷だな。


 まさか肩に手を置いただけであそこまで過剰な反応がくるなんてもう決定だろう。


 これがPTSDまでに悪化しなければいいが..............。


「.............ごめん」


「お前が謝る必要なんてねぇよ」


「...........そう。ありがとう。あんたのおかげで分かったよ。これからは精神面でも治療をしていくよ」


「........ここであったことは俺は知らないし、見てない。ただあの子が走って外に出て行っただけだ」


「ありがとう。そっちの方が助かるわ」


 主治医でもないのにこれ以上関わるのはいけないだろう。


 とりあえず俺の役目は終了。あとはあの女の仕事だ。

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