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アイデンティティ

 お姉ちゃん達との意思疎通ができ始めて1週間が経ちました。


 お姉ちゃんはお仕事、妹ちゃんは受験生だからずっとはいられない。


 まぁしょうがないよね。2人だって暇じゃないんだから。


 え?寂しいかって?さ、寂しくなんかないもん!!わたし1人でも大丈夫だもん!!


 嘘でしょ?...........はい嘘です。ごめんなさい、ものすっごく寂しいです。


 早く帰ってこないかな?私は楽しみにしてるんだよ?2人とお話すること。


 次は何話そっかな?いっつも2人は仕事であったこと、学校であったこと、私が入院する前の楽しいこととかいろいろ話したよ!!


 私って愛されてたんだ。よかった〜。


 それに!!予想通りお姉ちゃんと妹ちゃんはすっごく優しいの!!ご飯を一緒に食べてくれたり、甘いお菓子を持ってきてくれたり、一緒にいて楽しいの!!


 ルンルンした気持ちでいたら、突然コンコンって聞こえた。まだお昼だからお姉ちゃんでもないし、妹ちゃんでもない。ご飯はさっき食べたから誰だろう?よく来る女医さんかな?


 ドアが開くとそこにいたのは、見覚えのない男の人が軽く手を上げながら、笑顔で何か言ってる。


 違う。あれは本物の笑顔じゃない。


 怖い。ネットリとした視線が下から上へと動く。


 気持ち悪いよ.........。お姉ちゃん助けて........。全身が震えるの。なんでかわからないけど、この男の人を見た時から身体がおかしいの。


 いや!!こないで!!近づかないで!!


 身体を守るためにシーツを胸元まで上げる。けどそれさえも意味がなかった。


 どんどん近づいてくる。なんでこっちに来るの!?来ないで!!


 大声をだしたいけどでない。何か言ってるけど分からない!分かりたくない!!


 とうとう男の人が私の目の前に来た。もう私はどうしたらいいか分からない。涙目で睨むけど、相手はなんとも思っていない。


 トンっと私の肩に手をおく。するとよく分からないものが頭の中を占める。


 両手足を拘束された私。そんな私を狙っている男の人達。殴られて、蹴られて、服を破かれて、全身を舐め回すように見られて、撫で回される。


 何これ!?こんなの私知らない!!こんなの私じゃない!!でもこれはたしかに私.........。


 今からこんな目にあうの?いや!!絶対にいや!!


 無我夢中で男の人の手を払って、私はベッドから降りて逃げ出す。


 どこに逃げればいいの?分からない!!でも逃げなきゃ!!!


 ................あ!?あの人はいっつも私に優しくしてくれている看護師さん!!


 あそこなら、私を助けてくれるかもしれない。そんな一縷の望みを持って私は看護師さんがたくさんいるところに逃げ込む。


 私を知っている人も知らない人も看護師さんみんなが驚いていた。でもそんなの私には関係ない!とりあえず逃げないと!!助けてもらわないと!!


 すると一番仲良くさせてもらっている看護師さんを見つけれた!!その背後に隠れて袖をキュッと握る。


 全身を震わせて、涙が止まらない私を見て看護師さんはすぐに抱きしめてくれた。


 優しく背中をリズムよく叩いてくれる。


 あったかい。安心する温もりだ。


 私を入り口から隠すように看護師さんは抱きしめてくれているから、何が起きているか分からない。


 でも誰かが怒ったような声を出している。


 助かったの?私もう大丈夫なの?


 怖かったよ。なんでか分からないけど、男の人っていう存在が怖いよ。


 私って何者なの?アルビノで、余命宣告されて、記憶喪失で、いろんな障害を持っていて、男の人がダメで、一体私ってなんなの!?


 いろんな感情がぐちゃぐちゃになって涙が止まらない。


 しばらくの間看護師さんの胸に顔を埋めて泣いていたけど、それでも止まりそうにない。


 するといきなり看護師さんが私を放した。


 え!?なんで?どうして放すの!!私が邪魔なの......?


 俯いていたら、また誰かが抱きしめてくれた。


 さっきの看護師さんよりもあったかい。


 心までも暖かくなるような人が私を抱きしめてくれている。


 懐かしい感じで、安心する体温。私をすっぽりと覆ってしまうくらい強くて優しく抱きしめてくれるこの面倒見の良さ。なによりも1番落ち着く匂いがする。


 これってもしかして?でもまだお昼なのになんで?


 そーっと上を向いてみると、優しい笑顔を浮かべたお姉ちゃんがいた。


 お姉ちゃん!私寂しかったよ!!怖かったよぉぉぉ!!


 世界で1番好きなお姉ちゃんと妹ちゃん。そのお姉ちゃんが私を助けてくれた。


 お姉ちゃんありがとう!!


 お姉ちゃんが来てくれてホッとしちゃって、また大号泣をしてしまった。


 そんな私をお姉ちゃんは落ち着かせるように抱きしめてくれる。


 背中をリズムよく叩いてくれたり、私が安心するようにゆりかごのように、少しだけ身体を揺らしてくれている。


 あぁ、お姉ちゃんだ。あの優しいお姉ちゃんがここにいる。


 安心しちゃったからか、だんだん眠たくなる。


 そんな私を察知したのかお姉ちゃんは優しい笑みを私に向けて、頭を撫でてくれる。


 そのおかげで、私は安心して眠れるようになる。


 お姉ちゃん私を助けてくれてありがとう。


 次に目が覚めたら、今度こそ3人でいろんなこと話そうね?


 大好きお姉ちゃん。



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