目覚め
パチリと目が覚める。見慣れない天井が見える。ゆっくりと起き上がる。ここはどこだろうとあたりを見回す。
そこには空間を仕切るためにあるカーテン、テレビ、机、椅子があった。
何で私はここにいるんだろう?首を傾げながら考える。考えるけど分からない。
私は何年も生きてるはずだ。なのに記憶がない。これはおかしい。だって記憶って普通はあるでしょう!!
.........あれ?普通って何だっけ?よく分かんないや。まぁいいか。
それよりも、私は誰でどんな人なんだろう?名前も思い出せない。家族も分からない。分かるのは言葉くらい?
まぁこれもどうでもいいか。.........ん?右手になんか刺さってるね。......これって点滴だっけ?合ってるか分からないけど、多分そうだ。
なぜかは分からないけど、物を見るとそれの名前が分かる。なら何で自分の名前が分からないんだろう?
謎だ。.........あーでもないこーでもないって考えていると、不意に頭が重く感じた。何で重いの?
髪を手にとってみる。するとそこにはクセ1つない綺麗な白髪があった。.........白髪!?何で!?私って白髪だっけ!?しかも長すぎ!!膝まで伸びてるっておかしくない!!
.........ふぅ。落ち着かないと。......鏡ってないよね?今の私の姿を知りたいな。..............あった!テレビを見れば私って写るよね!?
.........うん写りました。そこにいたのは白髪で赤目で病的にまで真っ白い肌をした女の子がいた。
え!?これが私!?私ってもしかしてずっとここにいたの!?もうわけわかんない!!
ためしに頰を膨らませてみる。画面に写った少女も不機嫌そうに頰を膨らませる。
...........うん私だねこれは。とっても可愛いんだね私って。
とっさに自分の顔が気になったのはなぜか分からないけど、でもそこにいたのはまぎれもなく私だ。初めて見る自分の姿が異様だと感じるくらいだけど電源の入ってないテレビに写る人は私だ。
コンコンって音がした。扉が開くとそこにいたのは私より年上の女性と、同年代くらいの女の子がいた。誰かは分からない。けど.......どこかで.........見たような...........?
「ーーーーーーーー!!」
「ーーーーーーーーーーーーーー!!!」
え!?待って!!なんて言ってるの?分かんないよ!!ちゃんと喋ってよ!!それに抱きつかないで!!あなた達は誰!!
振りほどこうとするけど身体が上手く動かなかった。だから抗議の声を出そうとしたけど、声が出ない。サーッと顔から血がひいていくのが分かる。
もしかして私.........声出せない?それになに言ってるか頭が判断できてない?
途端にすごく悲しくなった。私はもう誰とも話せないんだ。誰の声も聞けないんだ。そう思ってくると悲しくなってくる。
涙が落ちる。ポロポロと落ちていく。泣く時も嗚咽と泣き声出せないんだね.........。
「ーーーーーー!?」
「ーーーーーーーー。」
2人が背中をさすってくれる。どこか懐かしい温もりを感じる。きっとこの2人は「私」と繋がりがあった人なんだね。家族か友達か、それとも.........。
少しずつ落ち着いてくる。女性がカバンから取り出したハンカチで私の顔を拭いてくれる。女の子が髪を整えてくれる。
2人が家族だったらいいなと思う。そしたらきっと私は幸せに暮らせる。
でもこのままだと私は何もできない。何も聞こえない。何も話せない。
だから治さなくちゃ。待っててね2人とも。今度はちゃんとお話ししようね。私楽しみにしてるから。
そんなことを考えていると、また違う2人の女性が部屋に入ってきた。同じ格好してるけどどうしたのかな?
すると何か女性が言ったようで、私の家族と思わしき2人は部屋から出て行く。
...........え!?何で出て行くの?もしかして私が必要ないとか?.........それだったら悲しい。けど仕方ない。だって今の私を見てがっかりしたんだろうね。変わり果てた私の姿に嫌気がさしたんだろうね。
そんなことを俯いて、泣きかけながら考えていると、1人の女性が書類を渡してきた。
「ーーーーーー。」
何言ってるか分からないけど見ろってことかな?
そしたらそこにはあることが書かれていた。
それは私の余命宣告。
私は20歳になるまでに生きていられればいい方らしい。
私って死んじゃうの?まだ起きたばっかりなのに..............。
ショックでまた泣いてしまう。でもそれには続きがあった。
それは家族には絶対に言わないこと。私に関する大雑把な説明。家族構成などがあった。しかも書いたのは翠宮シキ。
どうやらこれが私の名前らしい。
シキ.........ね。うん私はシキ。よく分からないけど、私がこう書いたのなら本当のことだろう。
あぁ................私は死ぬんだ。実感がなさすぎてよく分かんないけど、受け入れよう。というか受け入れるしかない。
でも、せめて家族には悲しい思いをさせたくない。だから私も黙っていようと思う。あの2人が家族なのはもう分かってる。家族には話したくないもんね。
分かったよシキさん。私はあなたを信じる。
書類を渡してくれたので、せめてお礼だけでもしようと、頭を下げかけたけどそこには誰もいなかった。
いつのまにか女性達は出て行ったらしい。
ありがとうございます。
私はこれからの短い人生を楽しんでいこうと思う。
周りの人に迷惑をかけないように。そして楽しく生きていこうと思う。
まずは姉と妹に「ただいま」って言わないとね!!
まぁ喋れないから言えないけどね
だからせめて笑顔でいようと思う。
神さまがいるとしたらこれだけは叶えてください。
どうか私の家族を幸せにしてください。私はどうなってもいいので。
初めましての方は初めまして。この度やっと一番最初に書いた連載の書き直しを投稿します。もし待っていたという方がいましたら申し訳ありません。終わりまでは書いていくつもりですので、良ければまた読んで頂けると嬉しいです。