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第八話 最狂医師・ドクターi 〜私の失敗確率は0%です〜

ミチビキとの闘いに勝利した覇王一行は生存者がいないか確認するため、崩れた王城の瓦礫を捜索していた。

「紫電〜!いたよ〜!」

「グッ……。」

瓦礫の下には王国の防衛大臣が挟まっていた。初老の男性という感じである。


「わ、ワシはもうダメじゃ……。こんな巨大な瓦礫の下敷きになってしまっては、いくら君たちでもどうすることもできない。」


「ほい。」

覇王が片手で瓦礫を持ち上げたところを紫電が大臣を引っ張りだす。

「な、なんじゃとォッッッッッ!!?!?!!30メートルはある鋼鉄の瓦礫を片手で持ち上げだじゃと!?!?」


「へ?あたし今驚かれるようなことした?」

「あんたねぇ……。」

虚は呆れている。


「お前、運が良かったな。あれほどの崩落に巻き込まれて足の骨が片方折れる程度で済んでいるんだからな。」

「あぁ……。まさに奇跡じゃ。そして君たち、助け出してくれて本当にありがとう……!」

「どうってことないよ!」


「ところで大臣さん。さっきの骨男みたいに、この世界の服とは思えない服装をした不審者の話を聞いたことはない?」

虚は大会の参加者の情報がないか大臣に尋ねた。


「ふむ……。そういや謎の難解な文字が書かれている服を着て、とんでもない爆音を立てる鉄でできた馬に乗っている男を見たという情報が入ってきていたのぅ……。」

「その男、間違いなくこの大会の参加者だろう。俺たちはその男たちを追っている。また情報が入ったら連絡してくれ。」


その時、突然紫電たちの元に救急車が時速200キロくらいで走ってくる。

「待て待て待て!!なんで異世界に救急車が走ってくるのよ!」

「虚、お前救急車を知っているのか。」

「ええ。転生する前の世界では当たり前にあったわ。」


救急車の中から誰か降りてくる。

「私はドクター・iと申します。城下町が破壊されたと聞いて駆けつけてきました。」

白衣に身を包んでいる男は大臣のほうに視線を向ける。

「その患者。とても危険な状態です。このまま放置していたら余命2日と持たないでしょう。」

「へ?いや、ワシはただ足を骨折しただけで……。」

「そうだよ!このおじちゃんただ瓦礫に挟まってただけだよ!」

「私は医者ですよ。医学知識には絶対の自信があります。少なくともこんなちっちゃいあなたよりはね。」


「もう!子供扱いしないでよー!」

「とにかく私の外科医院に搬送し、至急手術を行います。」

「おいおい…。異世界の医療技術で手術なんてして大丈夫なのか?」


「そんなに心配ならあなたもついてきても構いませんよ。ご安心ください。私の医療ミス確率は……『0%』です。」







「防衛大臣、ご臨終です……。」


「オイオイオイオイ!!ちょっと待て!!医療ミス0%じゃなかったのかよ!?」

「何を言っているんです?別に失敗はしていませんよ。もう手遅れだっただけです。」


「何寝言言ってやがる!大臣はただ片足を骨折していただけだ!手術室を見させて貰うぞ!」

紫電がiをつき飛ばし手術室に押し入る。


「これはッッ…!」

そこには体をサイコロ状にカットされ絶命している大臣の姿があった。

「なんてことだ……。2人は連れて来なくて正解だったな。」


「バレてしまいましたか。」

「!!」

突如iが医療用メスで紫電を斬りかかってくる。間一髪のところで紫電はそれを避ける。


2人は病棟の壁を突き抜け外に出る。

逆説手術室パラドキシカル・オペレーション!!」

iを中心に半透明の立方体状の巨大なバリアが辺りを覆う。


「これは……!?」

「ここは私の手術室。ここでは私は神に等しい。」

「!?」


その瞬間、紫電の脇腹が斬られていた。

「何ッ……!?」

「流石に硬いですね。叢雲紫電。『逆説手術室』内で私の斬撃でも完全に切断できないとは。今のメス、本当ならあなたを真っ二つにするつもりで切ったんですよ。」


「クソッ!」

紫電が電影剣で斬りかかる。

「フッ。」

「何!消えただと!?」

iは既に紫電の後ろにテレポートしていた。

執刀(キリング・ソード)!!」

iが叫んだ瞬間、紫電の全身の至る所がまるでメスで斬られたかのように傷を受ける。

「ぐぁぁぁ!!」


紫電は衝撃でバリアの壁に叩きつけられる。

「(今の斬撃、全く見えなかった。おそらくこのバリアの中の空間自体が【裂けている】のだろう。それなら!)」


紫電は体を電気化させ、iに斬りかかる。

「うぉぉぉぉ!!……何!?」

iに確かに斬りかかったはずの紫電だったが、体は斬りかかる前の場所にいるままだった。


「おかしい……。俺は確かに今動いた筈だ。」

「あなたのいる空間の座標を書き換えたのですよ。この能力を使えば、こんな事も可能ですよ。」

iがメスを前に突き出す。


次の瞬間、紫電はiのすぐ近くに移動しており、腹の中心にメスが刺さっていた。

「バカな……!俺は一歩も動いてはいなかった。俺の体をテレポートさせ、自分の手のメスと丁度重なる位置に転送させたのかッ……!」


「これでチェックメイトですよッッ!!」

iが素早くメスを紫電の腹から引き抜き、紫電目掛けて振り下ろす!



「チェックメイトは、お前のほうだ。」



「何ッッ……!?」

その瞬間、電影剣がiの腹を突き破っていた。しかし、後ろから刺されたのではない。iの内側から電影剣が生えたかのように伸びているのだ。


「さっき、お前がメスで俺の腹を刺したとき、メスを伝ってお前の体内に電流を流した。それをお前の胸の中で電影剣に再構築し、腹を突き破らせたんだよ。どうだ?見えない所から刺される気分は。」


「クッ……クソッ!!私はヒトの生死を操る力を持つ神だぞッッ!!」

「お前はただ手術と偽り人をバラバラにしていただけだ!!お前ほど卑怯かつ卑劣な神がいるものかッ!!」


「チキショウ……チキショョョョョョョウゥゥゥ!!!!!絶対に許さんぞ叢雲紫電!!!貴様は今ここで必ず殺してやる!!」


「やってみろよ…!だがその前に、これだけは覚えておけ。お前を始末するこの“手術”に、麻酔なんてあると思うなよ……!!」







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