第二話 機神降臨
バトルスタートの合図とともに、オレの体は閃光に包まれた。閃光が晴れると、オレはビル街の道に立っていた。
オレの転生前の世界によく似ているフィールドだ。オレの転生した世界はザ・中世って感じだったがな。周りを見渡してもえらく静かだ。人も車も1人もいない。
いや、誰かこちらに向かって来ている。殺意を向けた存在の位置を正確に知ることができるオレの能力がそう言っている。
が、オレははっきり言って負ける気がしない。この大会も余裕だろう。全参加者を今、このオレの能力で「「即殺」」してしまえば一瞬でオレの勝利は決まる。オレはこの能力でどんなヤツも殺してきた。
今迫って来ているヤツが十分近くに来てから全参加者に向けて能力を発動し、ヤツの絶望する顔を見ながらこの大会も優勝してやる。
そうすれば、優勝賞品の「願いを1つ叶える権利」はオレのモノだ!!
来い、来い、来い!!!!
「オレは測札 地井人!!!全てを即殺する最強の能力者だッッッッ!!!!!『即殺』、発動ッッッ!!」
「____それで死ぬようなヤツが、この大会にいると思ってるのか?」
次の瞬間、地井人の首が吹き飛ばされた。
「ここに来るやつは、お前のそんな下らない能力が及ぶほどヤワじゃない。」
男は雷で出来た剣を振り下ろす。それと同時に地井人の体も粉々に吹き飛んだのだった。
その時、男の意識に、司会の声が直接聞こえてきた。
「参加者のみなさんの転送が終わりました!どうやら早速脱落者が出てしまったようですが……。それはともかくルールの説明を行います!
参加者の皆さんは【異世界エリア】と【現代エリア】の二つのフィールドで戦って頂きます。
この二つのフィールドはフィールドのどこかに複数設置されている【ゲート】から行き来することができます。優勝条件は、その人以外の全参加者の死亡です。そして、出場前にも説明されていましたが、優勝景品は皆さんご存知の通り【何でも願いが一つだけ叶う】です!!みなさんの健闘に期待しています!それでは!」
そこで司会の声は聞こえなくなった。
「……俺は絶対に優勝しなくてはならない。異次元から来た怪物に破壊されてしまった俺の世界を復活させる為に!!」
男の名は叢雲紫電。最強の男である。
「とりあえず他の参加者がいないか辺りを散策するか。」
紫電がビル街をしばらく歩いていると、大きな足音が聞こえてきた。それを聞いた紫電は物陰に隠れる。
「生体反応、発見。」
そこには、体長5mはあるであろうロボットがいた。
「(不味い、気付かれたか!?)
「もー!ここを通してよー!殺し合いしないと優勝できないなんて聞いてなかったもん!おうちに帰らせてー!!」
ロボットと対峙していたのは、まだ幼いように見える少女だった。
「(気付かれたのは俺ではなかったか。ここはやり過ごして漁夫の利を狙おう。)」
「ワタシハ、機神 フォーミュラー999SSS。対象ヲ、デリートスル。」
次の瞬間、フォーミュラーの顔部分に着いている目のような赤いライトから、ビーム光線が辺りを薙ぎ払うように発射される。
「!?」
紫電は物陰を貫通してきた光線を間一髪で避ける。
「(子供の方はどうなった!?)」
「ちょっと!いきなりなにするの!あぶないよ!」
少女はその場から一歩も動かず、ビームを腕で受け止めていた。腕は黒くなっているが、それは焦げたわけではない。皮膚が硬化して、黒い黒曜石のようになっている。
「!?」
「ホウ……今ノビームヲ受ケ切ルカ……。」
「へへっ、これがあたしの能力、象化!象にまつわるいろん力を使えるんだよ!」
「象?哺乳網ゾウ目ゾウ科ノ総称カ。クダラナイノウリョクダ。」
少女の目つきが変わる。
「……!くだらない能力だとー!?象のことを悪くいう人は許さないぞ!本当は戦いたくなかったけど、やるしかないみたいだね!!」
「キサマ、名ヲナントイウ?」
「あたしは象牙 覇王!!夢は王様になること!!さぁ、勝負だよ!」
そのころ紫電はまた物陰に隠れていた。何してるんだ。
「(自分以外の参加者の戦闘か。今後の参考になるかもしれない。これで観戦しよう。)」
紫電は体に電気に変え、透明になった。
「フンッ!」
フォーミュラーは光の速度に近い速さで覇王に向けて突進してくる。
それを覇王は片手で受け止める。
「どりゃあ!!」
覇王はそのままフォーミュラーを持ち上げ、地面に叩きつける。5mはあるであろう鋼鉄の塊が、空を舞った。
「グッ!デストラクション・ミサイル、射出!」
起き上がり素早く距離を取ったフォーミュラーから百発近い小型ホーミングミサイルが発射される。
「コレハ一発一発が核爆弾並ミノ威力ヲモッテイル!避ケレバ星ガホロビルゾ!」
「つまり、避けなきゃいいんだね!」
覇王は一瞬で辺りを飛び回り、ミサイルを全てキャッチする。
「えい!」
覇王は手を象化させ巨大化させると、ミサイルを両手で挟むように推しつぶす。
手を離すと、ミサイルは消滅し煙だけが上がっていた。
「!?時空ガ歪ムホドノ圧力ヲカケ、空間ゴトミサイルヲ吹キ飛バシタノカ!?」
「ふふ、これがあたしの奥義、『エレファント・エリミネーション』!!」
「ナラバ、コレナラドウダ?」
フォーミュラーの右手の機甲が展開していき、巨大なガントレットを形成する。
「『エマージェンシー・フィスト』!!」
フォーミュラーのガントレットの後ろに搭載されているロケットエンジンのようなものが点火し、物凄いスピードで覇王に殴りかかる。
「きみも手をでっかくできるんだね!それなら、あたしも本気でするよ!弾けろ!『クレイジー・ファング』!!」
覇王の繰り出したアッパーカットによって、フォーミュラーの巨大なガントレットが粉々になる。
「バカナ!?」
「(今のアッパー、あまりも速い一撃だったからか、腕全体がマンモスの牙のように見えた。どうやらあいつはかなり強いようだな……。)」
「体はおおきいのに、力はあんまりないんだね。」
「グ……キサマ、ナメヤガッテ……。」
フォーミュラーは壊れた右手の装甲を触っている。
「(あのロボ、ただの殺戮マシーンかと思っていたが、明らかに感情がある。)」
「……? ロボットなのになんで自分の怪我を気にしてるの?」
紫電も覇王も同時に同じ疑問を抱いていた。
「ワタシハ、転生スル前ハ、普通ノ会社員ダッタ……。アル日、トラックニハネラレ、目ガ覚メルト、ロボットニナッテシマッテイタ。シカシ、ワタシノコノチカラデ、キニクワナイヤツハ、ミナゴロシニシテキタ。コレカラモ、ソレハユラグコトハナイ。ソレコソガ、“無双”ダ!!」
「(やはりな……こいつも【異世界転生者】だったか。」
フォーミュラーはさらに感情的にな口調になり、声も落ち着いた機械音声からカタコトのノイズ混じりの音声になっている。
「ハアァァァァァァァア!!!!!」
フォーミュラーの頭上に巨大な魔法陣が展開され、そこから超巨大なロボットが下りてくる。
「ガッタイ!!!」
フォーミュラーは体をを丸めボールのような姿になり、超巨大なロボットの胸に飛んでいき合体した。
「うわぁ……すごい大きいね!」
覇王は子供だからだろうか、超巨大なロボを見て嬉しそうにはしゃいでいる
「(デカいな……。全長500mくらいか?)」
紫電は驚いているが、慄いてはいない。
「コノワタシノカミノチカラデ、スベテヲハカイシテヤル!!!!」
「……こんなにわたしをワクワクさせたのはおまえが初めてだよ。」
覇王の前身が変異していく。それは例えるならば……象の魔神のように。
「来な!フォーミュラー!!ここから先は、本気のバトルだ!!」
機神 対 象神。
究極のパワー同士の戦いが、今、幕を開けた。
測札 地井人 死亡
残り参加者 23人
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