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不安、だけど大好き。

作者: 零雅

「ちょっと来なさいよ」


滝川 亜紀。


ただいまピンチ。


「あんたさぁー、前から思ってたんだけど…」


隣のクラスの女子に連行されてます。


しかも相手は三人がかり。


「調子に乗りすぎなのよ!」


事の発端は、あたしの彼氏。


「そうよ!


あんたなんかと龍君がつり合ってるとでも思ってんの!?」


あたしの彼氏は、安西 龍。


我が高校のアイドル的存在。


見た目もモデルのスカウトが来る位かっこよくて


運動神経も良い。


毎日のように女の子に告白されてる。


…あたしよりもずっと可愛い女の子に。


「いい加減、別れなさいよ!」


分かってるよ、あたしと龍がつり合ってない事くらい。


龍の周りにはいつもすごくスタイルの良い子や、


美人な子、可愛い子があふれてる。


みんな龍目当て。


でも、龍には別れてとはいえない手前


必然的にあたしがこういうことの標的にされる。


はっきり言ってあたしは特別、可愛いわけでも美人なわけでもない。


どちらかというとこの三人組の方がずっと男子の目を引く。


「あんた、遊ばれてるのが分からないの!?」


あたしだってたまに思う。


もしかしたら遊ばれてるんじゃないかって。


いつもすごく不安だよ。


今は放課後。


登下校だけはいつも龍と一緒に帰る約束をしている。


それが唯一のあたしだけの特権だった。


なのに、もうこんな時間だ。


龍、帰っちゃってるだろうなぁ…。


「ちょっとなんとか言いなさいよ!!」


あたしに言える事がない事くらい、分かってるくせに…。


「じゃぁ、俺が何か言おうか?」


「りゅ、龍君!」


黙っていたあたしの代わりに答えたのは龍だった。


いつの間に入ってきたのってくらい気づかなかった。


もちろんこの三人も。


「えっと、ただちょっと滝川さんに用があって…」


「ふーん、こんな人気のない所で?」


「それは…」


うろたえる三人組。


それを余裕の笑みで圧倒する龍。


「じゃぁ、俺がこいつの代わりに言わせてもらうけど…、


もうこれ以上、こいつを呼び出したりしたら許さねぇから」


「は、はいっ…」


三人はそそくさと教室を出て行く。


ずっと教室の隅で突っ立っていたあたしの体から急に力が抜けて床に座り込んでしまった。


「おい…、大丈夫かよ」


こくりとだけ頷く。


「だったら床にへたり込んだりしないだろ」


…なんで龍には分かっちゃうんだろう?


折角強がってたのに…。


でも、本当はメチャクチャ怖かった。


「立てるか?」


「…無理」


足に力が入らない。


そんなあたしに龍が手を差し出す。


「ったく、あんな奴らに絡まれてんじゃねーよ」


「だって…」


そういわれてしまうとなんだから差し出された手をつかむ気に慣れなかった。


龍はあたしの事を一番に分かってるくせにあまりあたしには優しくしてくれない。


今日だってそうだ。


「…早くつかめよ」


そうつぶやくとあたしの手を強引にとって引き寄せた。


「龍…?」


頬が龍の胸に当たる。


「ごめん…」


「え?」


「ごめん、すぐに助けに行ってやれなくて」


「…いいよ」


「よくねーよ、さっきから震えてんじゃねーかよ」


気づくとあたしの体は小刻みに震えていた。


「怖い思いさせてごめん」


「…大丈夫だよ」


「後…」


珍しく龍が口ごもる。


「いつも冷たくして…ごめんな?」


「え?」


「俺、いっつも余裕ねぇんだよ。


お前、俺といる時よりもクラスの男子と話してるときの方が楽しそうだし…。


いつまでも片思いしてるみたいで…」


初めて聞いた龍の本音だった。


あたしはずっと龍に告白する勇気がなかったから、


あたし達が付き合い始めたのは龍に告白されたからだった。


まだあたしからは気持ちを伝えたことがない。


「ずっと…不安で…」


その時の龍の瞳はいつもの余裕ありげな瞳じゃなくて


可哀想なくらいに不安そうな瞳だった。


あたしが…龍を不安にさせてたの?


頬に当たる龍の心臓がすごく早い。


…あたしだけがずっと不安なわけじゃなかったんだね。


そう思ったら涙が出てきた。


「おいっ、なんで泣いてんだよ!」


「えへへ」


「いや、意味わかんねぇし…、


しかも泣き顔、メチャクチャ可愛いしっ…」


「…可愛くないよ」


「無理、お前可愛すぎ」


龍に抑えられていた腕の力がふっと緩んで龍と向かい合わせになる。


「俺、マジでお前のこと好きだから…」


龍がそっと、でも少し強引にあたしと唇を重ねた。


やばっ…、心臓が破裂しそう…。


でも、あたしからも伝えなくちゃダメだよね…?


龍の長いキスが終わってまた向かい合わせになる。


「えっと…あのね?」


「なんだよ」


「あたしも…龍のこと大好きだよ?」


それだけ言うと、なんだか恥ずかしくなって、


さっきの龍みたいに半ば強引に唇を重ねた。


あたしからのキスは初めてでかなり恥ずかしかったけど。


「っお前なぁ〜〜////」


珍しく顔を真っ赤にする龍。


こんな可愛い龍の反応を見られるなら、


あたしからキスしてもいいかな…?って


ちょっとだけ思った。

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― 新着の感想 ―
[一言] こんにちは。 佐倉 愛です。 ちょっとアドバイスさせてもらいます。 「ふーん、こんな人気のない所で?」 の龍君の言葉、 「ふーん、こんな人が来ないような所で?」 とかの方がいいと思います。…
[一言] 良く、気持ちが書けていたと思います。
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