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天使エールはいっっっっつも笑顔  作者: 夏木有紀
1章、生き残り編
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06話 狭い部屋

エールの天使回です。

「確認なんだが」


 部屋を借り、一息ついたヤス一行は金銭面の相談をする


「今日の報酬が銀貨1枚」


「宿代が1泊、大銅貨6枚ですね(笑)」


「ご飯は3食しっかり食べたいので、3人で大銅貨9枚です」


「赤字です(笑)」


 知ってた。

 スライム討伐が人気ない理由がわかった。


「どうしましょう? もっとスライム倒すにしても限界がありますし......」


 確かにもっと頑張ればあと3、4匹は倒せるかもしれない


「結局、赤字です(笑)」


「まだ何も言ってないんだけど......」


 さりげなく心を読むのやめて欲しい。


「別に心は読めないですよ。ヤスさんの顔に書いてあるだけです(笑)」


 もうエールの言ってることがどこまで本当なのかわからん。


「他のクエストにしますか?」


「いいクエストがあればそうしようか」


「しばらくは様子見ですね(笑)」


「じゃあ、今後の方針は......」


 ・できるだけスライムの討伐数を増やす。

 ・いいクエストがあれば乗り換える。

 ・一週間は様子見しつつ、足りない分は貯金を切り崩して生活する。


「って感じだな」


「問題の先送りですね(笑)」


「もう眠くてさ。貯金もない訳じゃないからスライムに慣れて考える余裕が出るまでは、先送りでいいかなと」


「私は貯金ないですけどね!」


「......」


 でもまあルンは戦力だし良しとしよう。


「私もあんまりないです(笑)」


 ダメかもしれない。エールにもちゃんと報酬を渡しているのに何で無いんだ......


「とりあえず、そろそろ寝ようか」


 ヤスは考えることを諦めた。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 部屋にはベッドが1つしかない。

 今まではエールの隣で寝ていたが、さすがに3人横並びは近すぎる。


「私とルンちゃんが一緒に寝るとして、ヤスさんはどうしましょうか?」


「足元で良いんじゃないですか?」


「......」


 確かに妥当な案だけど、多少の気遣いとかないのか? 扱い酷くない?


「ヤスさんがどうしてもって言うなら私が足元で丸まって寝ますよ?」


「天使を足蹴にして寝るのは気が引けるなー」


「そうですよ! エールさんが足元で寝るくらいなら、ヤスさんが床で寝ますから!」


「ん? ......ん?」


 この新入りには思いやりという感情が欠如しているのか?


「そこまで言うなら仕方ないですね。ヤスさんには床で寝てもらいましょうか(笑)」


「なんかしれっと床に追いやられてるんですが......」


「ヤスさんは足蹴にされて寝たいんですか?(笑)」


「足フェチってやつですね」


 もう。この子たち怖い。


「床はかんべんしてください」


 こうして寝る配置が決まった。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


「ヤスさん、寝る前にマ○サージでもいかがですか?」


 なんで伏せ字なのか


「私、資格持ってないので(笑)」


 エール曰く、資格持ってない人がマッサージをすると法律違反らしい。でもここ日本じゃないし......


「誰が聞いているかわかりませんし(笑)」


 ......まあ、好きにさせておくか。


「で、してくれるの?」


「任せてください(笑)」


 エールは自信満々だ。


「あ、リンパがーとか言って胸を揉んだりはしないので、安心してくださいね(笑)」


「ぶふっ」


 急にぶっこんでくるのはやめて欲しい。心臓に悪い。


 エールを見るといつも通りの笑顔だ。

 本気なのかボケなのかわからない


「冗談ですよ(笑)」


「知ってた」


「では、始めますねー。ベッドに横になってくださーい」


 すっすっ。もみもみ。こねこね。


「エールさん! ヤスさんの顔溶けてますよ!」


「ふふっ。ルンちゃんにも後でやってあげますねー」


 あー。マジで気持ちいい。

 なにこれ? 神の手?


「天使の手ですよ(笑)」


「物の例えってやつだよー。というかまだ何も言ってない」


 気持ちよさに、突っ込みも柔らかくなってしまう。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


「ヤスさーん、朝ですよー(笑)」


 耳元でエールの声が聞こえる。


「良い天気ですよー。鳥さんも楽しそうに鳴いてますよー(笑)」


 ががげげげががががげげげげげげげげげげ


 謎の鳴き声が聞こえる......


 異世界に来てから何度目の朝だろうか。

 はじめの頃は無意識にスマホを探してしまっていたが、最近はそんなこともない。


「おはようエール」


「おはようございます。最近はすぐ起きれるようになりましたね。えらいえらい(笑)」


 この年になって、そんなことで誉められることになるとは......

 だが、確かにここ最近は目覚めが良い気がする。


「なんか頭がすっきりしててね。朝起きるのが嫌じゃないなんて、もとの世界じゃ考えられないよ」


 異世界に来てからは不安定なその日暮らしが続くが、身体の調子は良い。


「私のおかげですね(笑)」


 まあ、確かに戦闘以外でのエールの貢献はとても大きい。戦闘以外はね。


 それに、エールと一緒にいると、嫌でも生活習慣がよくなっていく。


「ルンちゃんも起きてくださーい(笑)」


「ふぁーい」


 隣でルンが起こされている。

 ん? 足元で寝るはずが、普通に寝ている。どうやら昨日エールのマ○サージで寝落ちしてしまったらしい。


「ルンちゃん寝癖すごいですね(笑)」


「はいー」


 ルンはまだ寝ぼけているようだ。


「よしよーし」


 エールはルンの寝癖を直している。


「お母さんかな?」


「お姉ちゃんですよー。ヤスさんもやってあげましょうか?」


「遠慮しときます......」


 一度やってもらったら癖になりそうなので断っておく。


「ふふふ。残念です(笑)」


 窓から朝日が射し込み、エールとルンを照らしている。

 その日暮らしなのに、この安心感は何なのだろう......


「今日もスライム退治頑張りましょうね(笑)」


 今日は何か良いことがありそうだ。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 スライム討伐を初めてから数日が経過した。ヤスたちはまだスライム討伐を継続している。

 スライムの動きにも慣れてきたので、赤字にならないくらいの報酬は安定して得られている。他に良さそうなクエストもないので、これからもしばらくはスライムの報酬で過ごすことになりそうだ。


「今日も美味しいご飯食べて、よく寝ましょうね(笑)」


「充実した日々だな!」


「まあ、貯金はできてないんですけどね」


 クエストの帰り道、ルンの言葉で現実に引き戻される。


「今は仕方ないということで......それはそうと、最近身体の調子が良いんだよ」


「私もです! 疲れてても一晩寝ればスッキリしてます!」


「お財布もスッキリしてますよ(笑)」


「金がないことにそこまで不安を覚えなくなったよ。ははは」


 何だかこっちの世界に来てから少し前向きになった気がする。

 それに加えて、元の世界にいたときよりも身体の疲れがとれるのが早い。

 ......何故だ?


「早寝早起き、運動、食事、日の光を浴びる。健康一直線ですから(笑)」


「なるほど」


 デスクワークで日の光もほとんど浴びず、運動も不足し、パソコンとにらめっこする日々と比べたら、それは健康にもなるか。


「よくわかりませんが、エールさんが言うならそうなんですかね」


 この世界にはまだ栄養の概念がないみたいなので、ルンが理解できないのも仕方ない。


「今日もお野菜ちゃんと食べましょうね(笑)」


「むー。わかりました」


 今までは肉を中心に好きなものしか食べていなかったようだ。


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 次の日


「ん」


 エールが起こしてくれる前に目が覚めるようになった。

 今日も、目覚めが良い。


「2人を起こさないようにしないと......あれ?」


 部屋にエールがいない。

 ルンは隣で静かな寝息をたてている。


「そのうち帰ってくるかな?」


 しばらくするとエールが帰ってきた。


「おかえりエール」


「あら、ヤスさん起きてたんですか?(笑)」


「早起きが身に付いたんだよ」


「ふふふ。良いことですね(笑)」


「エールは何してたんだ?」


「私のことが気になるんですか?(笑)」


「起きたらいなくてびっくりしたよ」


「私、お散歩が趣味なので(笑)」


 エールはこの宿に寝泊まりするようになってから、毎日散歩をするようになったらしい。


「ヤスさんも一緒にどうですか?(笑)」


「それも良いかもな」


「では明日は2時間早く起こしますね(笑)」


「やめときます」


 ✳︎ ✳︎ ✳︎


 次の日の朝


 今日もエールに起こしてもらう前に目が覚めた。


「エールはまだ散歩中か」


 ルンはまだ起きそうにない


「外でも見ながら待つか」


 この部屋の窓からは宿の入り口が見えるので、エールが帰ってきたらすぐわかるだろう。


「よいしょ」


 窓を開けて外を見ると、宿屋のおやじとエールが談笑していた。


「なんだ、帰ってきてるじゃん」


 何を話しているのかはわからないが、仲良さげな様子だ。


「エールはコミュ力が高いなー」

「そうですねー」


 いつの間にかルンも起きていた。


お読みいただきありがとうございます。


・自分の前でだけ素が出る

・いつもとは違った雰囲気を感じる

そんなシチュエーションって良いですよね。

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