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09話「崩壊」

3年も経てば、人は成長しますね

「なんだか、久しぶりに帰りたくなってきましたね(笑)」


 魔王国に滞在してから、もう3年が経っていた。その間、ヤスたちは世界征服の準備を着々と進め、軍備を整えてきた。


 エールとの何気ない会話の最中、ルンが足早にやってくる。


「ヤスさん、人間が……魔物の村で捕まったそうです。サーニャさんとキールさんが対応を相談中とのことです」


 このあたりに人間が現れるのは極めて珍しい。


「外の様子も気になるし、会って話してみたいな」


 そう言ってサーニャのもとへ向かうと、縄で縛られた数人の人間が玉座の前に並べられていた。


「おお、エール。丁度今、招いた者たちと話していたところだ」


 “招いた”というより、縄の食い込む様子を見るに、どう見ても捕虜である。


 その中の一人が、エールの姿に気づき、目を見開いた。


「エール……? エールちゃん!? なんでこんなとこに!?」


 驚いた様子のケインの隣には、ショーンとサイトの姿もある。エールはくすっと笑って近づいた。


「大丈夫ですか?(笑)」


「おや、知り合いか?」


「はい。ケインさんにショーンさん、それとサイトさんです。私の大切なお友達です(笑)」


 サーニャはそれを聞くと、危険がないと判断し、興味を失ったようだ。


「お久しぶりですね。お元気でしたか?(笑)」


 エールが3人の前に立つ。


「まあ……見ての通り、元気ではあるよ」


「それは何よりです(笑)」


 サーニャの方を向くと


「この3人は私とヤスさんが初めてこの世界に来た日にお友達になったんです。とても親切にしていただきました(笑)」


 エールが当時の様子を懐かしみながら話していると、サーニャが3人に視線を向けて言った。


「とりあえず……大切なお友達なら縄解いてあげれば?」


「あら、これはうっかりしていました(笑)」


 エールが軽やかに縄を解くと、ケインたちは安堵の息を漏らした。しばしの再会を喜び、彼らはこの3年間に起きた出来事を語り始める。


「実はさ、あの洞穴にいた冒険者たちのこと、領主が身元を調べようとしてたんだ。でも、誰も正体を知らなかったらしくて……」


 ――あの洞穴に招いたのがケインたちだけだったのは、まさに不幸中の幸いだった。


「それで、サイトが洞穴の横に刺さってた棒を何気なく引き抜いたら、巨大なスライムが出てきてな……」


 おや……?


「領主の軍は壊滅状態。俺たちはうまく逃げおおせたけど……」


「責任を問われなくて、本当に助かったよ……」


 ショーンとサイトが遠い目をしている。


「スラの助も元気そうで、安心しました(笑)」


「……ん?」


 一瞬戸惑いの表情を浮かべたケインだが、すぐに真面目な顔になり、話が深刻な方向へと傾いていく。


「王国は、崩壊したんだ」


 かつて一大勢力を誇った王国は、スライムの襲撃による壊滅的な被害を受け、求心力を完全に失ったようだ。エールの指揮で一度は立ち直りかけたものの、二度目の襲撃で完全に瓦解。各地の貴族が好き勝手に小国を建て始め、混乱は極まっているという。


 俺たちが最初に降り立ったアウルムの町は被害を免れ、あの短気で強欲な領主が自身を国王と称し、アウルム“国”として独立したらしい


「先に旅立ったスラ男もスラ子も、どこかで元気にしてるといいですね(笑)」


「きっと、元王国内を自由気ままに旅してるんじゃないですか?」


 そう言うルンも遠い目をしている。巨大化したスライムが手に負えない相手だというのは実感している。


「まとめると……王国を滅ぼしたのって、お前らじゃん」


「領主様には、感謝されてもいいくらいですね(笑)」


「エールさんのおかげで国王に出世したようなもんですもんねー」


「……」


 その場に一瞬、冷たい沈黙が流れた。


「それは、まあさておいて……今の“国王”は、あの元アウルムの領主だ。俺たちはその命令で、この辺の調査に来たってわけさ」


「駆け出しの冒険者が国王直属とは、出世しましたね(笑)」


「いや、あくまで国王側近の私兵って立場だ」


 ショーンが補足する。彼の顔に浮かぶのは、皮肉めいた笑みだった。


「俺たちの主人の屋敷では、国王暗殺の計画が進行中だ。民は重税と圧政で疲弊してる。……だが、王を倒しても、その後の“筋書き”がまだ定まってないらしくてな」


 3年という歳月で、情勢は大きく動いていた。


 当初は魔王国から世界征服を目指していたヤスたちだったが、いまやアウルム国の乗っ取りの方が後々便利なのではないだろうか?軍備は魔王国に残したまま、東西二つの拠点で大陸を挟撃する。夢の中での連絡も可能だ。


「協力してくれるか?」


「状況次第だな。……で、どうする?」


「今助けてあげたばかりだろ?」


 3人を連れてきたキールの方を見ながら言うと


「相変わらず良い性格してるよな」


 また縛られたくはないであろう、ケインたちは諦めて協力してくれるようだ。


 ヤスは静かにエールを見る。


「エールを、国王にしてしまおう」


「「「 ……。」」」


一瞬の間を置き


「まあ、今よりは平和になる……か?」


 そんな話が進んでいく中


「私は、久しぶりに教会に顔を出したいです(笑)」


 エールは相変わらずマイペースだ。


 ケインは困惑した様子で言った。


「関係あるかはわからないけどな。王国崩壊後、貧しい人が増えてさ。新興宗教が台頭してきたんだよ。しかも、その信者たちが……エールちゃんにそっくりな人形を持ち歩いてるんだ」


「えっ?」


 思い当たる節が、ないでもない。エールがほんの短期間滞在しただけで、王都に小さな信仰が生まれたことがあった。


 既存の宗教では支えきれなくなった民が、新しい“希望”を求めたのかもしれない。


 どうやらエールがかつて足繁く通った教会が、その新興宗教の総本山と化しているようだ。


「ヤスさん(笑)」


 エールがそっと耳元で囁く。


「私の許可なく、無断使用とは……直接お話をつけに行かないとですね(笑)」


 懐かしの街へ――帰る時が来た。


懐かしのキャラが出てきました。

ハーレム主人公の男性の友達は、大体、捕まっているシーンで再登場するイメージなのは何故でしょうか?


お読みいただきありがとうございます。

現在、過去のイラストの差し替えも行なっている最中です。


ご意見やご感想頂けると嬉しいです。

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