03話 夢の中へ
夢の世界へ
「これで良しっと(笑)」
エールが死体蹴りを終えて戻ってきた。
「残りの山賊どうしますか?(笑)」
「今ルンとその話してたんだけど」
「王都に偵察しに行った2人が帰ってくる前に片付けてしまおうかと思います」
ヤス達の待機していた場所が山賊の住処だったのは想定外だった。
帰ってくる2人のためにも解決しておかねばならない。
「あと何人いるかわかるか?」
「ヤスさん達が連れてかれた段階では残り18人ですね」
「正面突破は厳しいな」
「そうですねー」
しかし、悩んでいる時間はない。仲間が帰ってこないことに気がついた山賊がこちらに様子を見に来る可能性が高い。
「とりあえず隠れましょうか」
「そして隠しましょう(笑)」
倒した2人の下っ端を隠しておけば少しは時間稼ぎになるかもしれない。
死体を草陰に隠し、ヤス達も身を潜める。
「「......」」
「来ませんね(笑)」
しばらく経っても山賊は来ない
「どうしましょう?」
「とりあえず、山賊の本陣に行って様子をみようか」
「わかりました。ついて来て下さい」
ルンの案内で本陣近くの草むらまで辿り着く。
「あらあら(笑)」
ヤスたちが山賊の本陣の様子を覗くと、タマキが山賊の本体を殲滅していた。
「ふむ。大丈夫か?」
「私の服以外は大丈夫です(笑)」
「カンナさんはどうしたんですか?」
周りを見てもカンナの姿がない。
「ふむ。カンナなら――」
「誰か来ます!」
ルンがタマキを遮る。
殲滅された山賊を前に気が抜けていた。山賊の別働隊が帰ってきたことに気がつくのが遅れ、ヤスの背後から襲って来た。
「っ......!」
タマキが魔法を放つのが見えた。
✳︎ ✳︎ ✳︎
「......ん?」
ここはどこだ?
周りを見ても一面真っ暗だ。
「あれ? 死んだ?」
「死んではないぞ」
背後から声がした。振り返ると少女が1人、光に照らされて立っている。
「どちら様でしょう?」
「我はサーニャだ。貴様らの事はよく見させてもらったぞ」
偉そうな態度の少女が言う
「ん?」
何故わざわざヤス達のことを見ていたのだろう
......まさか!
「もしかして、この世界の女神様ですか!?」
「違うぞ」
違った。
「......」
じゃあ、このサーニャとかいう人は何者なのか?
「そうだな......我が何者なのかというと難しいのだが......」
この人も勝手に人の心を読んでくる。
という事は......
「エールの友人というのが一番わかりやすいかもしれん」
やはりそうか。
考えている事に対して、さらっと答えが返ってくるこの感覚はエールと話している時そのものだった。
「しかし我は天使ではないのだがな」
天使ではないエールの友人?
「まあ、人に歴史ありというだろう。色々あるのだよ」
「はあ。なるほど?」
よくわからない。よくわからないといえば......
「ここはどこでしょう?」
「ここは貴様の深層世界。我の力が及ぶ場所だ」
「つまり?」
「夢だな」
最後に見た景色を思い出す。
「なるほどな。タマキさんの魔法に巻き込まれたのか」
「貴様が極度に疲労した状態で寝るか、今回みたいに魔法による眠りであれば我の力が及ぶ世界にたどり着く」
「なるほど?」
よくわからないがタマキの魔法で寝てしまうとこうなるらしい。
「別に理解しなくとも良い。貴様にはエールへの伝言を頼みたいのだ」
「伝言ですか?」
「目が覚めたらエールに“急に麻婆豆腐が食べたくなった”と言うのだ。魔法の眠りから覚めた貴様が言えば、後はエールが察するだろう。良いか? 他に余計な事は言うでないぞ? どこで女神が聞き耳を立てているかわからないからな」
「聞かれたら不味いんですか?」
「そろそろ目が覚める頃だな。帰ったらエールへの伝言をしっかり伝えるのだ。良いな? 余計な事は言うでないぞ?」
話を逸らされた気がするが、とりあえずエールへの伝言を伝えないといけないらしい。
「わかりました」
「よろしい。ではまた近いうちにこうして会える事を願っておこう」
ヤスの視界が揺らぎ始めた。
「そうだ。エールはとぼけると思うが問題ない。一言伝えればそれで良いからな」
次第に周囲が暗くなり、気が付けばエールの顔が視界いっぱいに広がった。
「おはようございます(笑)」
どうやらエールが膝枕してくれているらしい。
「ヤスさん、タマキさんの魔法に巻き込まれて眠っちゃったんですよ。 大丈夫ですか?」
「急に麻婆豆腐が食べたくなった」
「急ですね(笑)」
伝言を伝えてもエールの様子が変わったようには思えない。
「この世界には材料がないので難しいですね(笑)」
「そうか。残念だ」
辺りを見回すと、いつの間にかカンナが合流している。山賊の住処で色々漁っていたらしい。
「あらヤス。やっとお目覚め?」
「何だかお久しぶりですね」
「本当よ。帰ってきたら山賊しかいないわ。ヤスは寝てるわ。随分なお出迎えじゃない」
「すみません......」
「ふむ。まあ別に良いじゃないか。こちらこそ巻き込んでしまってすまなかったな」
「良いんですよ。気を抜いていたヤスさんが悪いんです」
近くからルンの声がする。
「ちゃんと起きれて良かったですね(笑)」
「まあ、寝てただけみたいだし」
「山賊たちは目覚めてませんよ」
ルンに言われてゾッとする。
下手すれば永遠に眠っていたかもしれない。
「ふむ。力弱めるのが間に合って良かった」
「......助かりました」
間に合わなかっらどうなっていたのかは考えないようにした。
お読みいただきありがとうございます。
今までとは毛色が違った感じの話になりました。
今回と次回はキーポイントかもしれません。
ご意見ご感想いただけると嬉しいです。




