13話 天使の究極奥義
エールはたくましい子です。エールに限らず登場する女の子はみんなたくましいです。
「......」
エールの作戦にヤスは引き気味だった。
「私から分泌される液体って普通のとは違うんですよ。相手がアンデッドだったからというのもありますが、効果が絶大だったじゃないですか? なら天使の胃液ってかなりの威力だと思うんですよね(笑)」
この子は何を言っているのだろうか?
「一回そう思うと、気になって仕方ないんですよ。ちょっとやってみても良いですか?(笑)」
「好きにすればいいと思うけど......それって女の子としてどうなの?」
「生き残るのに男性も女性もありませんよ(笑)」
「お好きにどうぞ......」
「はい! 準備するのでルンちゃんと一緒に蛇を引きつけておいてください」
そう言って草かげに隠れるエールに一応羞恥心はあるんだなと安心しつつルンの方を向く
「ルン! 一回合流するぞ!」
「わかりました!」
ルンは蛇とヤスの距離を最大限広げるように投石してから帰ってきた。何も指示しなくてもここまでやってくれるなんてありがたい。
「おまたせしました。で、エールさんはどこですか?」
「エールなら草かげで頑張ってる」
「このタイミングでトイレですか? マイペースですねー」
「違いますよ。武器を作ってました(笑)」
いつの間にエールが戻ってきていた。
「ヤスさんのせいで勘違いされちゃったじゃないですか。どうしてくれるんですか?(笑)」
「勘違いされたほうがマシだと思うぞ」
胃液出してたなんて言うより、トイレのほうがマシだろう。
「何してたんですか?」
「じゃーん。これを作っていました(笑)」
エールの手には泥団子が2つ
「......これが武器ですか?」
「胃液で作ってみました(笑)」
「なるほど。確かに涎の威力すごかったですし、強そうではありますね」
この子も何ですぐ受け入れられるのか......
「それー(笑)」
何の溜めもなくエールが蛇に泥団子を投げる。
泥団子が身体に命中すると、蛇が悶始めた。
「苦しそうだなー」
「なんか、煙出てませんか?」
命中したところが少し溶けて煙が出ている。
「人間兵器かよ!」
「天使ですよー(笑)」
こんな天使嫌だ。
「残り1つですが、どうしましょう?(笑)」
「やっぱり口の中に放り込みたいよな。血が付いた石は投げ尽くしたし......」
「ヤスさんの足元血だまりですよ」
下を見ると確かに血が溜まっている。
ルンの投げた石が脛をかすった時の傷から結構出血していた様だ。
「あ、丁度いいですね(笑)」
エールが血だまりで泥団子を転がしている。
笑顔で泥団子を血に浸している様子は悪魔と表現した方がしっくりくる。
「お前、堕天してないか?」
「まあ、天から地上に来ているので堕天といえばそうなりますね。でも地上に留まってる間はギリギリセーフです(笑)」
こいつが神様候補っていうのが恐ろしい。
「完成です(笑)」
このギリギリ天使は、赤黒い泥団子を持って満足げな表情をしている。
「それー(笑)」
エールの投げた泥団子を蛇が丸呑みにする。
一瞬蛇の動きが止まり、その後激しく悶始めた。
「すごい効果ですね」
ルンがそんなことを言っているうちに、蛇の動きが段々と鈍くなり、最後には倒れて動かなくなった。
「これが私の力なんですね。これからは、天使の最終奥義として大切にします(笑)」
やりきった感を出しつつ笑顔なエールを照らすように陽が昇り始める。
手が赤黒く、顔だけはいつも通り天使なエールがそこにいた。
お読み頂きありがとうございます。
生き残るのに男も女も関係ありません。放っておいてもしぶとく生き残ってくれそうな子が個人的に好きです。
ぎりぎり天使ってフレーズも個人的に好きです。
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