第七話番外編 〜緑編〜
第七話、緑と坂上2人だけになったときからのお話。
第七話には入っていない2人の会話です。
緑一人称視点です。
「なぁ緑、あとちょっとしたら俺はサエを連れて先行くから、お前は坂上にちゃんと告白しろよ?」
急に副島がそんなことを言ってきた。もちろん俺は動揺する。
「な、なんだよ!」
「だって今日ゴール決めたじゃん。」
「そ、それはそうだけど…」
「親友がチャンスを演出してくれてるんだぜ?フラれることを心配してるのか?」
「ま、まぁな…」
俯いて俺は答える。
そりゃそうだ。フラれるのが怖い。
「大丈夫だ。お前は絶対大丈夫。俺は確信してるぞ。」
「え…?」
「ま、がんばれよ。」
どういうことだ?なんで副島はそんなに言い切れるのか?
頭の中でそんなことを考えているうちに、副島が口を開いた。
「なぁサエ、今からちょっと俺に付き合ってくれないか?」
真壁にむけてのようだ。
「え、いいわよ。なんかあるの?」
「ん、まぁな。」
「分かった。ということで真理っち、また今度ね!」
「うん、バイバ〜イ。緑もまた今度ね!」
「あ、あぁ…」
「んじゃお二人さん、また学校でな。」
その瞬間、副島と目が合った。
副島は俺のために、俺と坂上だけにしてくれたのだ。
決心がついた。
俺は副島にうなずく。
副島はそれを見て、真壁といってしまった。
「あの2人、仲いいね〜!」
坂上が話しかけてくる。
「うん。さすが幼馴染だけあるなぁ。」
「ふふふふ、冴っちはどう思ってるんだか…」
坂上は不敵な笑みを浮かべる。
俺は遠ざかっていく副島の背中に誓った。
今から、今から、坂上に、告白する。
「な、なぁ、今日の俺のゴール、どうだった?」
「ん?すっごいよかった!1点目のあのヘディングはすごかった!思わず席から立ち上がっちゃったもん!」
坂上はすっごい喜んでくれた。
「ホント?」
「うん!2点目のドリブルからシュートも、キレイだったよ!」
「あ、ありがと…」
俺は唾を飲み込む。
「なぁ坂上。」
「ん?どしたの、そんな深刻な顔して?」
「俺、今日ゴールを決めたら、しようと思ってたことがあるんだ。」
「へぇ〜。で、それってなに?」
息をすう。副島、お前のアシストで俺が決めてやる。
「坂上に、坂上に…告白すること。」
「…え?」
坂上は目を丸くして俺を見ている。
俺らは自然と立ち止まる。
「俺、中学のときから、坂上のこと、好きだったんだ。でも、俺臆病だし、フラれるのが怖くて…全然言う勇気無かった。」
坂上は『信じられない』という顔で俺をみている。
そりゃそうだろう。
「でも、高校最後のサッカーだし、サッカーも坂上への想いも中途半端なままで終わりたくなかった。だから、ゴール決めたら告白しようって一人で考えてた。ま、副島に見破られたけどな?」
時が止まったようだ。
「坂上、驚いてるかもしれない。だけど俺は、坂上のことが好きなんだ。」
「え…?それって…」
「冗談じゃない。大マジだ。坂上、別に俺のことが嫌いでもかまわない。別に俺の告白に応えてもらう必要も無い。だけどこれだけ知っておいてくれ。俺は、坂上のことが好きなんだ。」
2度繰り返した。
「…そういうこと!じゃ、帰ろうか?」
俺は無理にテンションを上げてさっきの状態へと戻そうとする。
だけど歩き出した途端、坂上が俺の手をつかんできた。
「…坂上?」
「私だって、緑のこと、大好きだよ…?」
思いがけない返事。
「緑のこと、いつもいつも中学から見てたのに、全然気づいてなかったみたいだったし、もうこのままでいいかな〜なんて思ってたのに…」
「坂上…」
「でも、緑がそんなこと言うから…!」
坂上は俺に抱きついてきた。
俺も優しく抱き返す。
「そんなこと言うから、想いがあふれ出ちゃったじゃん…!」
「坂上…」
俺らはそのまま抱き合っていた。
時が永遠のように感じられる。
「坂上…いや、真理?」
ドキドキしながら下の名前で呼んでみる。
「ん…?」
顔を上げた坂上…いや、真理。
「好きだ。付き合ってくれ。」
「こちらこそ。朋樹。」
真理は笑顔でそういってくれた。
そしてそのまま、俺らは唇を近づけて…
帰り道、真理を家まで送った後。
「そういや副島にお礼しないとな…」
俺は副島にメールを送った。
今日は副島のアシストに2度も助けられた。
今度、何かおごってやるか。
俺はそう思いながら、つい30分前に携帯の待ちうけになった真理の顔を見て微笑んだ。