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第六話

副島健人視点 です。

5月もある日の放課後。

俺らは例の通り、学園祭に向けての会議をしていた。

会議室には夕日が差し込んでいる。

「はい、この予算については、各々が次の会議までに絞り込んできてください。では今日はこれで終わりです。」

サエの言葉を合図に、会議室にいた役員たちはいっせいに椅子から立って廊下へと出て行った。

「なぁサエ、ここはどうする?」

「う〜ん、そこかぁ…難しいところよね…」

俺らは額をつき合わせて相談していた。

すると、急にサエが俺のほうに来た。というか正確には誰かに押されて俺のほうに来た。

俺はサエを両手と体で受け止める。そしてサエの後ろを見てみる。

と、サエの親友でイベント部門副責任者の坂上真理(さかうえまり)がニヤニヤしてたっていた。

「ちょ、ちょっと真理っち!何やってるのよ!」

「あらぁ、冴っちと副島、いい感じじゃない?」

坂上の言葉で俺は今の状況に気づいた。サエを両手と体で受け止めている。

言い換えれば、サエを抱いている。

急に恥ずかしくなって、俺はサエから離れた。サエも同じように。

そして俺の存在を忘れたかのように、2人は論争を始めた。

そのサエの顔は楽しげで、その笑顔を見ている俺はなんだか心が軽くなった。

「うぉ〜い、何やってんだ〜?」

緑が俺のほうにやってきた。

「あぁ、なんだか2人で仲良くなんかやってる。」

「へぇ〜…」

そう言うと俺は手に持った書類に目を落とす。

頭が痛くなってきた。数字は根本的に嫌いだ。

と思って緑を見てみると、緑はサエと話している坂上をじーっと見つめていた。

そこで俺は気づいた。

「なぁ緑、ちょっといいか?耳貸せ。」

「ん、どした?」

俺は緑の耳に口を近づけると、こう呟いた。

「お前、今度の試合でゴール決めたら、坂上に告白するつもりだろ。」

緑が明らかに狼狽するのが分かる。

「な、なんのことだよ?」

「見てたら分かるぜ。俺が何年お前の親友やってると思ってんだ。ま、次の試合は俺がいいパス出してやっから、決めろよ?」

「マ、マジか!」

緑はうれしそうな顔をして俺のほうを見る。

やっぱりその気じゃん、と思った俺。

「さ、そろそろ帰ろうぜ。」

俺は窓の外の夕焼けを見ながら提案した。


交差点で緑・坂上と別れた後、俺とサエはいつものように談笑していた。

「そうだ、今度の休みに映画行かないか?知り合いからチケットをタダでもらったんだけど。」

この前親戚の叔父さんから2枚チケットをもらった。

「ええ、いいわよ。」

「そっか、サンキュー。」

数秒後、俺はある事実に気づいた。

それって…世間的に言う…デート?

いやいやそんなはずが無い。幼馴染で恋人じゃないから。うん、違う。

などと変な理屈を並べ立てて自分で納得した。

サエのほうを見ると、「ん、どうしたの?」と返ってきた。特に何も思ってないようだ。

こんなこと思ったの自分だけかよ、と自分を恥じながらなんでもないと返答する。

「まぁ、GWの初日はサッカーの試合があるから、多分それ以降になるだろうけど…」

「私はいつでもいいよ?それより、試合までもうすぐなんだから、がんばりなさいよ!私も観にいくから!」

「ホント?うれしいなぁ。サエが見に来てくれるなんて。」

というと、サエは「ケ、ケンの試合だからだよっ!」といって俺とは反対のほうを向いてしまった。

人に見られながらプレーすると分かると気合の入りようが一段と深くなる。

これは、サエのためにも勝たないとな。

俺は沈んでいく太陽に誓った。

時間軸はこの小説独自のものです。

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