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最終話

時間が空いてしまいましたが最終話です。

最後まで読んでいただいてありがとうございました。

『ケン…』『サエ…』

ベッドの上で、俺らの顔の距離がだんだんと近づいていく。

うっとりした目で俺を見つめるサエの瞳が、何を求めているかぐらい容易く分かる。

俺はサエの唇を自分のそれで塞ぎ、甘い甘いキスをする。

『んっ…』

サエは色っぽい吐息を漏らす。そんな声を聞いて、俺は理性を失いそうになって。

『サエ―「パパーっ、起きてーっ!」「起きてーっ!」

ん?なんだか急にリアルな声が聞こえてきたぞ…?

と思った次の瞬間、俺の腹に勢いよく何かが飛び込んできた。

「うっっ!」

その衝撃は俺を夢の世界から引き戻すのに十分すぎる威力で。

「パパーっ、朝だよーっ!」「朝だよーっ!」

俺の腹に乗っかってキャッキャ言いながらごろごろしている子供を見て、現実の朝か…と認識する。

夢の続きが見たかったな…なんて、考えないわけでもないけども。

「海輝~っ、理奈~っ。もう少し俺を寝かせてくれよ…」

「ママが起こしてきなさいって言ってたんだよ~!ねっ、理奈?」「そーだよー!」

俺の願いはむなしく、再びまぶたを閉じようとしていた俺の腹をポカポカと殴り始めた2人。

「ちょ、ちょっ!朝からキツイって!」

コレで完全に目が覚めた俺は上半身を起こして、楽しそうに布団に包まる2人を見る。

俺とサエの間に生まれた長男の海輝は5歳。長女の理奈は3歳だ。

悪戯盛りというか、休日の日はたいていこんな起こされ方をしている。その元気、俺に少し分けてくれよ。

と思って子供とじゃれていると、聞きなれた声が近づいてきた。

「海輝、理奈~?起こしたの~?」

ひょこっ、と寝室の入り口から顔を出したサエはこの状況を見て、いつものように微笑を浮かべた。

「じゃ、私も飛び入り参加しちゃおうかな?」

ほぇ?なんて思っていると、次の瞬間にはサエが俺のところにダイブしてきたではないか。

俺はサエを体で受け止めて、ベッドに倒れこむ。

俺とサエに挟まれた海輝と理奈はキャッキャ言いながら体をジタバタ。その振動が直に腹に来る。

「ケン…」

ふと気づけば、俺の耳元で、俺にしか聞こえないように囁かれた俺の名前。

俺は何も言わず、サエの唇に触れるだけのキスをする。

そして俺たちはすぐに離れ、「さ、起きるか!」「ほら、2人ともパジャマ着替えなさい!」と何も無かったかのように振舞うのだ。

海輝と理奈を引き連れて部屋を出て行くサエと目が合う。そんなサエは悪戯っぽそうな微笑を浮かべて去っていった。

…ニヤニヤしてないで、そろそろ起きるか。









俺はサエと結婚してからも、相変わらずサッカー選手としてプレーしている。

サエと結婚した年のW杯、俺は日本代表の10番を任され、そして日本代表自体も強豪国を連破しベスト8に入るという快挙を成し遂げた。

その年の冬のJリーグ閉幕後にW杯での活躍が認められたのか、俺は海外クラブからの移籍話をもらい、イングランドの中堅チームに移籍した。サエとお腹の中の海輝は日本に置いて、単身イギリスへ。

2人を日本に残すことに抵抗がなかったわけではないし、俺としては2人と一緒にいたかったが、『チャンスなんだから、ケンはそれを生かすことだけ考えて!』というサエの言葉で全てが吹っ切れた。

それからの俺は、ただ必死にボールだけを追い続けて。

いつしか俺は、喜ばしいことに移籍先のチームでも必要とされる存在になることができた。

そんな俺の姿を、サエはいつも見ていてくれたみたいで、国際電話でしょっちゅう話した覚えがある。

そして海外にいってから3年後、海輝が生まれてから2年後には理奈が誕生。

そのころには俺は元いたチームから今度はスペインの強豪チームに移籍していた。

適応に少し時間はかかったが、慣れてしまえば何の問題も無く攻撃的MFとしてプレーできるようになり、所属していた最後の2シーズンはキャプテンマークを巻いてもいた。

また、そこでは前のチームではできなかったヨーロッパの大きな大会に出場したりといい経験もたくさんさせてもらったのだ。日本では出来ないようなことをたくさん学んだ。

理奈が誕生した1年後には、再びW杯。

当時28歳の俺は、やはり10番を任され、宮野下さんが代表を引退していたこともあって主将としてW杯に臨み、結果は前回と同じベスト8。

前回が『躍進した』と騒がれた前回だっただけに、悔いが残る結果となってしまったように思われる。

そしてその2年後の冬、つまり今、俺はJリーグに復帰することにした。

単純にクラブとの契約期間が終わったからそうしたわけであるが、契約延長のオファーだって来ていたし、他の強豪クラブからも接触があった。

だけども、俺が海外でサッカーをしている間、日本に残した子供たち、そしてサエと一緒に過ごしてあげられなかったのは自分の中で少し気にかかっていることだった。

シーズンオフの時に日本に帰ってくるぐらいだったのだから…

サエは『ケンはサッカーのことだけ考えてっ!』といつも言ってくれたけれども。

とにかく、そういうわけで俺は春から日本に復帰することにしたのだ。

何チームか移籍先に手を挙げてくれたが、アジアの舞台で戦えることを意味するアジアチャンピオンズリーグへの出場権を持っていて、更には前に日本にいたときに所属していたクラブチームに移籍することに。

監督は変わったけれども、コーチや裏方さんは俺が日本にいたときと同じ人たちで、『おかえり』と温かく迎えてくれた。

そんなチームにも合流し、合宿を終えた今はこうして家でのんびりと過ごすことができているのだ。









「ねー、今日はどこ行くの~?」

車の後部座席で理奈がそう言った。

「ん、理奈と海輝はおじいちゃんとおばあちゃんのとこ。」

そう俺が言うと、2人はやったーと歓声をあげて喜び合う。

だけど、実は歓声をあげたいのは俺も同じ。

今日は子供2人を俺の両親に預けて、サエと2人っきりで久しぶりのデートなのだ!

だから、今日はいつもよりもちょっとオシャレしてみたり。今日の俺は『副島健人』ではなくて『ケン』。

助手席のサエも、どこか嬉しそうな気がする。さっきから鼻歌が聞こえるしね。

で、両親に2人を預けて(両親が預かる際に俺とサエを見てニヤニヤしていたのは言うまでも無い)、俺はサエの手を握りながら車に乗り込んだ。

「さっ、久しぶりのデートといくか。」

「うん。海輝と理奈が生まれてから、こんなことって無かったからね。」

2人でふふっ、と笑いあいながら車を発進させる。

不意に、俺とサエの高校時代を思い出した。

確か俺らが付き合い始めたきっかけってのは、学園祭の夜の出来事だったんだよな。そのときから、俺の隣にはずっとサエがいる。

いや、それよりも前から、ずっと一緒だ。

あの夜の日はサエが『幼馴染』から『彼女』に変わっただけ。

よくよく考えてみると、俺が物心ついたときから隣にいたんだな…

そう思うとなんだか少し照れるというか、恥ずかしいと言うか。

「どうしたの、ケン?なんかニコニコしているけど…」

おおっと、いけない。気づかないうちに笑っていたみたい。

「何でもないよ。」

「え~、ホントに~?」

そう訝しがるサエの頬に、俺は身を乗り出して軽くキスをする。大丈夫、今は赤信号で停車中だから。

サエの顔もみるみるうちに赤くなっていく。

「きゅ、急に何するのよっ!」

こっちを向いて、恥ずかしそうに突っかかってくるサエ。こんな姿も、小さいころから変わんないな。

いや、中学生か、高校生のときか?

「別に~?ただしたくなっただけだって~。」

むぅ、と可愛らしくすねるサエを横目に、俺はニコニコしながら車を発進させた。












久しぶりのデートということもあって、どこを回ろうかと2人で考えたけど、結局はまずショッピングモール内の映画館で映画を見ることにした。

一応俺も世間に名前は知られている人間だから、サングラスとかでちょっと変装しようかと思ったのだけれども、サエが『素のケンがいいっ!』って言ったので結局普通に来てしまった。

たまに、「アレってサッカーの副島じゃない?」っていう声は聞こえるけれども、隣で手を繋いでいるサエはそんなことを気にしていないような笑顔を見せてくれる。

「映画館で映画なんて何年ぶりかな…?」

映画館の入り口で思わずつぶやく俺。

海外でサッカー三昧だったから、街に映画を見に行くなんていう暇はあんまりなくて。

どっちかっていうと、チームメイトの家で騒いでたぐらいの思い出しかないかも。

「2人で映画見に来るのも久しぶりよね。」

「あぁ。下手したら、高校のとき以来だぞ。」

そんなことを言いながら見た映画は話題となっているらしいコメディー系のラブストーリー映画。

けれども、俺は映画の内容なんて覚えてなかった。

隣にサエがいるだけで、それはもう幸せだったのだ。

映画を見終わった後は軽く昼食を取り、2人でショッピングを楽しむ。

服を買ったり、靴を買ったり、雑貨を買ったりとしているうちに、俺の両手は完全にふさがってしまった。

「な、なぁ、まだ買うの…?」

「えーっと、あっ、そうだそうだ。取りに行くものがあったんだよ。」

何を取りに行くんだ?という俺の質問を笑顔で流し、ずんずんと先を歩くサエ。

俺は両手の荷物と共に、少し息を切らしながらサエの後を追う。

そしてサエが立ち止まった店を見てみると、それはちょっと高級っぽそうなアクセサリー店だった。

「え?ここで何か買ったのか?」

全く事情を知らない俺はキョトン。サエはニッコリ。

とりあえず入ってみようと中に入ると、サエが店員と何かを話している。

イスに座って待っているように言われたので俺は何が起こるのかと思いながら待っていると、店員が黒い箱を持って俺らの元にやってきた。

「お待たせしました副島様、こちらがご注文のネックレスになります。」

箱のふたを開けると、そこには同じタイプのシルバーのネックレスが2点。丸いペンダント部分はどうやら開くようだ。

サエが片方を取ってペンダント部分を開く。

そこには、俺やサエ、海輝に理奈がいた。

ちょっと語弊があるか。家族4人の写真が挟まっていた。

「サエ…」

「ずっとコレを付けて、いつも家族皆を忘れないように、ってね?」

そうして可愛らしくウインクするサエに、俺も思わず微笑がこぼれたのだ。













「ふふん、気に入ってくれたみたいだね。」

晩飯を食いに来ていたとある居酒屋の個室で、俺が首もとにつけたネックレスをあまりにも触っているものだから、向かいのサエがそう呟いた。

「あぁ。ありがとな、サエ。」

そういいながら俺は目の前のウーロン茶をぐいっ。一応車を運転してきているからな。

2人で晩飯を食うことになりどこかレストランがいいかと思ったけども、サエが「2人だけで、のびのびゆっくりがいいな。」と希望したので居酒屋の個室にしたのだ。

酒の力も少しだけ手伝って、子供たちがいるときは話さないことも、今日は2人で話したりもしている。

そして、話は俺らの昔話へ。

「ねぇ、私たちが初めて会ったのっていつだっけ?」

「ん~、確か3歳ぐらいじゃなかったか?俺が公園にいたら、サエたちが来たんだよ。」

といっても、あまり詳しくは覚えていない。

俺らが住んでいたところはその当時開発が進んでいて、バンバン一戸建てが建っていた。

そこに住む家族の中に副島家があって、真壁家もあったというだけ。

母から聞いたのだけど、俺とサエの初めての出会いは3歳のとき。俺と両親が公園で遊んでいるときに、サエと両親が来たのだという。

引っ越してきたばかりで知り合いもあまりいなかったし、子供が同い年ということもあって親はすぐに仲良くなった。それで、俺らもいつしか仲良しになっていったのだ。

「で、俺らは小学校に入って、毎日一緒に登校して下校して。」

「ねっ。しかも今思えば、6年間ずっとケンと一緒のクラスだったんよね~。」

そのころの俺はまだ早起きだったから、2人で待ち合わせして朝は一緒に登校し、帰りは一緒に下校。

そして奇跡的なことに、6年間同じクラスという偉業を成し遂げたのだ。

勿論何の工作もしていない。ただ、毎年クラス分けを見るたびに、『今年もサエと一緒だな』と思ったくらいだ。

「サエは小学校のとき、好きな男の子とかいなかったのか?」

「う~ん、それがいなかったんだよね~。友達がバレンタインだって騒いでいても、私は『何それ?』みたいな感じだったし。いつもケンと一緒にいたからそれで満ち足りていたのかもしれないね。」

「そういや、サエが『バレンタインだ』って言って煎餅渡してきたこともあったような…」

「えっ!?そんな非常識なことしてないって!」

「い~や、したね。確か小3ぐらいだったな。」

そんな過去の思い出話に花が咲く。にぎやかな店内の雰囲気もあって、声を大きくしても周りにはあまり支障は無い。

「うぅ、そんなことした覚えないのに…」

サエはちょっとすねてワインを勢いよく飲む。レストランみたいな高級ワインじゃないけど、レストランじゃワイワイと騒げないからな。

「ケンは、誰か好きな子とかいなかった?」

「あぁ。誰もいなかったね。やっぱりサエと同じで、隣にいつもサエがいたからそれだけでよかったのかもしれないや。」

そのときのサエの隣ってのは、お姫様の隣のような感じがしたのを覚えている。

それだけでいっぱいいっぱい…というのは変な言い方だけど、サエと一緒だったので他の女の子に目がいかなかったのは事実だ。

「で、中学のときに緑や坂上と初めて会った、と。」「ねっ。」

サエと一緒に初めて中学へと登校した日のことだ。

小学校のころの友達がほぼそのまま上がってきたので、1日目はクラス内は小学校別のグループになっていた。

俺がサエの席に行って2人で話していて、サエが何か用があって席を外したときに俺は初めて緑と知り合いになった。というのも、緑はサエと出席番号が近かったのだ。というか、1つ後ろ。

そしてそのときの席順は出席番号順なので、俺がサエの席にいるとすぐ近くに緑もいたってわけ。

『なぁ、君、いつも真壁さんと一緒にいるよな。』

『ん?あぁ、一応幼馴染なんだ。』

ふ~ん、とそいつは納得してから、手を差し出してきた。

『俺、緑朋樹。△小だ。よろしくな。』

それが俺と緑の初めての出会いだった。

その後、緑もサッカー部に入部したことが分かり、また一緒に過ごすうちに気が合うやつだとも判明して今に至る。

坂上と会ったのもそのころ。というか、正確にはサエが坂上と知り合って俺にも紹介してくれたみたいな感じ。

緑と坂上の初めての出会いは…確か中1の5月ぐらいの遠足っぽいことだった。

4人で班を組めと言われたので、俺は緑を誘って坂上と一緒のサエと合流。そこで2人は互いを初めて知ったのだ。

今思えば、俺らがいなかったらあいつらは結婚してなかったんじゃないか、とまで思う。

「俺らのおかげで、あいつらは結婚したようなもんだよな。」

「ねっ。私たちがいなきゃ、永遠に言葉さえ交わさなかったかもしれないのに。」

感謝しろよ、と2人で笑いあいながらテーブルの料理をつまむ。

最近、あいつらには会ってないけど、きっとあの2人だから楽しくやっているだろう。しばしの間、緑夫婦に想いをはせる。

「で、高校も俺とサエは勿論一緒。高校受験のときも勉強教えてもらったよな…」

「大学受験ほど厳しくはなかったけどね。よく真理っちと緑君も含めて4人で勉強したよね。」

高校の志望校が同じだった俺ら4人は、一緒に勉強する機会が多かった。

全体的に成績がいいサエが残り3人を教える、みたいな感じだったけれども。

「で、私は確か高校のときぐらいから朝ケンを起こしに行きはじめたんだよ。」

「うぐっ。確かにそんくらいからだな…申し訳ないです。」

中学と同じように高校でもサッカー部に入り、毎日練習して疲れてしまい、家に帰って飯を食い、風呂に入るとすぐ寝ていたのだ。

なのに、翌朝は自分では起きられず、サエに起こしてもらう始末…

今思えば、我ながら情けないなぁ。

「で、高3のときの学園祭。」

「ねっ。私たちが重要なポストについちゃうなんて…」

高3のときの学園祭。

このイベントは、俺とサエの関係を劇的に変化させた。

単なる幼馴染から、恋人同士へと。

もしも俺が学園祭の実行委員長になってなかったり、なったとしてもサエが副委員長になってなかったら、今俺はこうしてサエと向かい合っていないかもしれない。

ホントに、自分の想いに気づくのが遅すぎたよ…

「ま~、ケンは鈍感だったから、私がどんなにアプローチしても全然反応なかったもんね~。」

「あ~、色々と思い当たる節が…」

ないわけでもない。

「だけど、『好きだ』って、ケンから言ってくれた…」

「サエ…」

見つめ合う俺ら2人の空間だけ、周りのワイワイガヤガヤとした空間から離れているように感じる。

今まで思い返してみたけど、やっぱり、ずっとサエと一緒だったんだな。

そしてこれからも、俺ら2人はきっと…

『オーダーいただきました~!』

外から聞こえてくる威勢がいい店員の声で俺らは我に戻る。

見つめ合っていた今までが急に恥ずかしく感じられてきた。

「…帰るか。」

「…そうね。」

2人とも相手の目を見れないまま、残りの料理を片付け、俺らは会計を済ませて外へ出た。









「なぁ、海輝と理奈を迎えに行く前に、ちょっと行きたいところがあるんだけど、いい?」

帰り道の車、俺はハンドルを握りながら隣のサエに聞く。

まぁ、サエの返事がYesでもNoでも、既に車は俺の『行きたいところ』へと走らせているんだが。

「別に良いけど、それってどこなの?」

「ふふ~ん、着いてからのお楽しみっ。」

「ケンのケチーっ。」

むー、と膨れるサエ。

それから他愛もない話をしながら車を走らせて20分。

キレイな夜景スポットにやってきた俺は駐車場に車を停め、サエに外に出るよう促す。

冬の夜はとても暗くて寒くて、俺はしっかりとサエの手を握りながらその場所へと少しだけ歩く。

「ほらっ、どうだ?」

駐車場から手を引いてやってきた、少し小高い山の上の展望場所から望む夜景は何ともいえないほどすばらしい。

「うわぁっ、キレイ…」

サエが隣で感嘆の声を漏らす。俺もその夜景を食い入るように見つめる。

さっきまでいた街の色とりどりな灯りは無数に広がり、まるでイルミネーションを見ているかのよう。

「ネックレスのお礼じゃないけど、俺からはこの夜景をプレゼントするよ。」

「うわぁ、ケン、ありがとう!」

サエは頭を俺の肩にもたれかける。俺はそんなサエの肩を抱いてやる。

こうしていると、何故か懐かしい匂いがするサエのぬくもりがよく感じられるのだ。






ふと思えば、2人でここまで一緒にきた。

いつも俺の隣にはサエでサエの隣には俺で、離れないように手を握り締めあって。

だから俺は、今もこうしてサエの手をギュッと握る。

突然のことで驚いたのか、サエは頭を起こして俺のほうを見てくる。

「サエ、これからも、ずっと一緒だ。」

俺がそう言うと、すぐに微笑んで返してくれた。

「うん。ずーっと、隣にいようね、ケン。」

暗闇の中でも互いに見つめあい、ゆっくりと唇を近づける。

この先どんな未来が待っているかなんて分からないけど、確かなことはただ一つ。


俺とサエは、ずっと一緒。

これで『2人はきっと。』完結です。

今までお付き合いいただいてありがとうございました。

感想などお待ちしております。


思えば、この初めての小説を始めたのがちょうど1年前です。

(1年で50話少しというペースはいかがなものでしょうか…)

1年間、駄作でしたが皆様に読んでいただけて非常に光栄でした。本当にありがとうございました。

感想なども執筆の励みになり、とても嬉しかったです。

伊倉自身としてはまだ小説執筆を続けるつもりなので、小説をまた連載OR短編投稿するつもりです。

その時はまた、読んでやってくださいね。


活動報告も更新しますので、そちらのほうもよろしくお願いします。

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