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それぞれの幸せ

番外編・緑真理編です。

夫は高校教師の緑朋樹、そして一児のママとなった彼女です。


感想などお待ちしております。

『―っでね、ケンったら昼過ぎまで爆睡してるのっ!高校のときから全然変わってなくて!』

「そうだね~。冴っち、毎日起こしに行ってたもんね~!」

電話の相手は、私の親友である冴っち。本名が『副島冴子』に変わったのは…もう1年前以上のことだ。

私と冴っちは、時々こうして電話をしてお互いの近況を報告したりしている。

冴っちは冴っちでプロサッカー選手の奥さんなりに大変みたいだし、私は私で教師の妻として大変なことはいっぱいあるけど、互いに幸せを感じているのだ。

ふと話しながらついていたテレビを見てみると、画面には冴っちの旦那がサッカーしたりインタビューされたりする姿が映っている。

「冴っちの旦那の特集、今テレビでやってるよ~?『日本の司令塔』だってよっ!」

『へへへ、ありがとー。』

テレビの画面には大きな国際試合で活躍する副島健人の姿。

去年あったワールドカップ、副島の活躍で日本がベスト8に進出したのは記憶に新しい。あの時は日本中が熱狂したなぁ…

そんな副島は海外のクラブからの誘いもあるみたいだけど、日本のクラブチームでプレーしているのだ。

…って、テレビのレポーターが話している内容を言ってみただけなんだけど。

それにしても、この男の活躍ぶりはすごい。高校時代のサインをもらっておけばよかったかな、なんて思うくらいだ。『副島の高校時代のサイン』とかでプレミア付きそうだし。

そのまま電話で会話していると、画面ではレポーターが副島に結婚したことについてインタビューしている。

“そうですね、やっぱり結婚してよかったな~って思いますよ。ん~、一番それを感じるのは、練習や試合で疲れて家に帰ったとき、笑顔で迎えてくれる妻がいるときですかね。”

ちくしょー、ノロケやがって。

こんなコメントをしてたぞ、と受話器の向こうの冴っちに伝えてみると、

『ホント!?うわ~、テレビでそんなこと言われたら恥ずかしいのに…』

なんて言っているが、その声には嬉しさがにじみ出ている。

「この、オノロケカップルっ!」

『ま、真理っちっ!ノロケてないってっ!』

私がイジって、冴っちがあたふたする。

こんな高校時代から変わらないやり取りがなんだか楽しい。

『…真理っちのほうはどう?お2人さんは?』

「ん~、ぼちぼちやってるよ。最近の朋樹はサッカー部の練習だ試合だとか言って、朝に出て行って夜にクタクタで帰ってくるし。それに、本職の教師としての仕事もあるみたいだからね。」

大学卒業後、私たちが卒業した高校で世界史の教師として教鞭をとることになった夫の朋樹は、高校時代にサッカー部レギュラーだったこともあってサッカー部顧問に。

最近は大会が近いみたいで、見ていても色々大変そう。

フォーメーションや選手の選抜に戦術はもちろんのこと、練習メニューだって考えるし、本職である教師としての仕事である授業準備やテスト作成など、やることはたくさんあるみたい。

だから毎日朝早く学校へ行き、クタクタで帰ってくるのだ。

となると、必然的に夫婦の時間というのは冴っちのところよりも少ないとは思うけど、『うん、うまいっ!』と笑顔で私の作った料理を食べてくれる彼を見ているときとかにささやかながら幸せを感じる。

『ふふん、二人は仲いいもんね。明るそうだなぁ。』

「まっ、冴っちたちほどじゃないですけど。」

って、こんな風に近況を報告しあっているのだ。

この電話がお互いに楽しくて楽しくてしょうがない。なので、時間を忘れることもしばしば。

『あっ!晩御飯の準備するの忘れてたっ!』

「ホントだっ!今日は朋樹が少し早く帰ってくるって言ってたんだ~、完全に忘れてた。」

電話の向こう側で慌て始めた冴っちの姿が目に浮かぶ。そんな私も、慌ててエプロンを探したりして。

私も冴っちも時間がまずい事に気づいたので、話を適当なところで切り上げて電話を切る。

『じゃ、またね。』

「うん、ばいば~い。」

ピッ、と電話を切った後は家の中の静けさが際立ってなんだか寂しい。

さっきまでにぎやかに話していたのに、と思うとそんな感じがするのだ。

私たちの子供、男の子で名前は隼人というのだが、そのベイビーもベッドで寝ているみたいで、泣き声は聞こえてこない。

私はよし、と軽く気合を入れながらエプロンを身にまとい、キッチンへと向かう。

一瞬のうちに晩御飯のメニューを決定し、冷蔵庫から食材を取り出す。

朋樹が帰ってくるまでに、何とか料理を完成させたいなぁ。

帰ってきたときに料理が出来上がっていると、その匂いで笑顔になる朋樹がいるのだ。私はそんな彼が見たい。

そして最後の一品をお皿に盛り付けたころ、玄関のドアが開いた音がした。

「ただいま~。おっ、超うまそうな匂いっ!」

キッチンからは彼の顔は見えないけども、そんな声だけで私は既に笑顔になる。

エプロンを外してお皿をテーブルへと持っていくと、朋樹がリビングに入ってきた。

「おかえりっ。ちょうど出来上がったとこだよ。」

笑顔の彼を、笑顔で迎える私。

こんなときにも、私は幸せを感じたりするのだ。

感想・評価などぜひよろしくお願いいたします。


番外編はコレでラストということになります。

そして、次のお話で遂に完結です!皆さん最後までお付き合いください!

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