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第四六話

副島健人編です。

番外編・緑編の内容がちょびっと入っているのでまだお読みでない方はそちらも読んでいただけたら幸いです。

感想・評価大歓迎です。お待ちしております。

俺とサエのこれまでの大学生活について、少し説明しておきたい。

俺は入学した後すぐにサッカー部に入り、高校のときと同じように、サッカーに情熱を注いでいた。

サッカーのおかげで単位やらなんたらが危ないときもあったが、まぁなんとか切り抜けて。

肝心のサッカーだが、最初は全然ダメだった。

というのも、俺が入った大学は全国的にも名が知られている私大で、そのため全国から生徒は集まってくるのだ。

で、この大学はサッカーがそこそこ強いことも知られていて、それ目当てで地方から出てきたやつなども多い。

サッカー部の同学年のやつにも、そんなのがいっぱいいる。

で、そいつらは多少なりともサッカーには自信があるやつで、高校時代には全国大会に出ましたよ~というのが基本レベルなのだ。

しかし俺はといえば地区予選敗退。

元のレベルが違って、最初は『新入部員の中の一人』だった。

だけれども高校のときみたいに諦めずに練習して、努力していたら、大学3年の春に急に俺のレベルが上がったのだ。

ウン、努力ってのは大事だよな。

それと同時にレギュラーの位置を獲得し、高校のときと同じ攻撃的MFとしてボールを蹴らせてもらっていた。

…とここまでくるとサッカー一色のような気もするが、実際にはそうではなくてバイトもしたり合コンと呼ばれるアレも(嫌々行かされただけだが)経験はしたし学祭でもいろいろと頑張ったし、充実した大学生活だと思う。

そして幼馴染にして俺の彼女であるサエだが、サエはどうやら音楽系のサークルに入ったようで、楽しげにキーボードを演奏している姿をたまに大学内で目にする。

サークル自体が『マジでプロ目指してます!』というのではなくて『楽しくやろうぜ!』的なものなので、気ままに友達と演奏したりと楽しんでいるみたいだ。

一回サエとその友達の『気まぐれ女子大生バンド』の演奏を聞かせてもらったことがあるが、楽しげに演奏していたのが印象に残っている。

でまぁ、もちろん、俺とサエは普通に付き合っているわけで。

最初のころは周りのやつらに隠していたけど、俺の友達にバレてからは一応、公認の仲となっている。

うれしいんだか、うれしくないんだか。

授業や練習の合間を縫ってデートもするし、お互いの家に遊びに行ったりもするし。

そうそう、それで今は同棲しているのだ。

緑から聞いたかもしれないけど、大学3年のときのサエの誕生日、サエと俺の両親が俺らに『プレゼント』といってとあるマンションの部屋の鍵を渡してくれた。

4人の怪しい笑顔が気になったのは言うまでもないが、俺はサエとずっと一緒にいられるのが嬉しく、サエも同じだったみたいで、すぐにその部屋に引越しした。

家具などは適当に自分の部屋から持っていったり、家で使わなくなったものなどをもらったり、それでも足りないものは『プレゼントの一環』といって買ってもらったり。

なんだかんだで両親たちには感謝している。

その後サエと話し合って『少しずつお金を返そう』と決め、バイトの給料などを利用し返して続けているのだ。

まぁ、とりあえず、サエと一日中一緒で嬉しいのだ。








大学4年ともなると、今後の就職が気になるわけで。

サエは早々と一流女性用下着会社の内々定をもらい、就職が決定した。

なんでその会社にしたのかと俺が聞くと、『男の人はケンで十分』だってさ。

そんな俺もはじめは企業に就職して、今のままサエと同棲していようかななんて漠然と考えていた。

しかし、俺のサッカーのプレーを見た、とあるクラブチームから声をかけられたのだ。

そのクラブチームはJ1リーグの真ん中らへんのチームだが、現役の日本代表も所属している。

他にも声はかけられているが、そこのチームが一番レベルが高いし、ホームタウンも今の家から結構近くだし、と条件はそろっている。

ただ、俺には少し不安があって。

まずひとつは、サッカー選手としてやっていけるかということだ。

例えば、入団したはいいけれども、度重なる怪我があるかもしれないし結果が振るわないかもしれないし、結局はひっそりとプロを引退するということになってしまうかもしれないのだ。

お金をもらってサッカーをやるからにはそれなりに活躍したいのが本心だし、サエだってその方が喜んでくれると思う。それに、俺も誇りに思える。

だけれども今の俺にはイマイチそんな自信がなくて。

クラブの方からは「絶対大丈夫。責任を持って育てるから。」とは言われているが…

そしてもうひとつは、大学3年の冬に緑と話して気づいたこと。

サエとの、今後だ。

緑の浮気が坂上にバレた時の話で、結局それはウチで解決したんだけど、そのあとに緑と話していたらそんな話題が出てきた。

-結婚。

そんなこと考えてもみなかった。ただ漠然と、これからも俺の隣にはサエがいるんだろうなぁと思っていた。

だけれども、結婚ともなると、それは多少なりとも『ただ隣にいる』だけのと意味は違ってくるわけで。

一生、その人を幸せにしてあげなきゃいけない。

では今の俺は、サエを一生幸せにしてあげられるか?

当然の如くそんな質問に突き当たった。

そしてその答えは-否。今の俺ではサエを幸せにする自信がない。

サッカーのこととも少し関わってくるけど、もし俺がサッカーの世界に入って例えば日本代表に選ばれるくらい成長したら、そりゃあサエを幸せにできると自信がつくけど、

例えば万年スターティングメンバーを争うようなレベルでとどまってしまったら、サエを幸せにできるかという問いにすぐに答えることができない。

確かに無難なのはサッカーの道ではなく企業に就職し、そこでサラリーマンとして働いて普通に幸せになるというのだということは分かっている。

だけれども、俺はサッカーを捨てるということをなかなか考えられないのだ。

それに、オファーが来ているという恵まれた状況でもある。チャンスは俺の手の中にある。

だけども、怖くて、怖くて、不安で、不安で、一歩が踏み出せない。

俺の将来は、どうなんだろうか-








大学4年の12月25日。クリスマス。

俺の隣にはもちろんサエがいて、雪がちらちらと降る中俺らは外を歩いている。

「ホワイトクリスマスだね。」

「あぁ。綺麗だな。」

繋いでいる手を離れないようにギュッと握る。

このとき俺は、ある決意をしていた。俺の将来に関する決意だ。

いや、既に決意はしていたんだけれども、それをサエに伝える決意といったほうが正しいか。

ということは、間接的にサエの将来に関するかもしれない決意ということにもなるのか?

外気は冷たいのに、緊張でなんだか汗を感じてきた。

「お、あの観覧車だ。アレに乗ろうぜ。」

「うわぁ~っ、ライトアップされてて綺麗だなぁ~…」

俺はサエに決意を伝える場所として、夜景の綺麗な観覧車の中を選んだ。

理由は特にない。ただ、せっかく伝えるならすばらしい景色のところがよかったから、というのは強引な理由か?

2人でいろんな色に光る観覧車を歩きながら眺める。

赤、黄、緑、青、紫-

いったい、俺の将来は何色なんだろうか?

そんな俺の内心も知らず、サエは隣で「キレイ~」と感心している。

なんだか急にいとおしくなって、そして繋いだ手が離れるような気がして、それが怖かった俺は、ただ手を強く握り締めることしかできなかった。

雪が、やさしく降っている。





観覧車はクリスマスだからか、少し混んでいて。

見たところ、並んでいた列にはカップルがたくさんだった。というか、カップル以外いるのか?

そんなことを考えながら、ゆっくりと回ってきた観覧車にサエの後に続いて乗り込む。

サエが座ったほうとは反対に、俺は腰掛けた。

係員の人がバタンとドアを閉めるとすぐに、サエは窓の外に広がる夜景を笑顔で眺める。

「うわぁ~、キレイ…」

「そうだな…」

下を見下ろすと美しい夜景。ビルの光があちこちで輝いていて、いかにも都会の夜景という感じだが、暗闇と光のコントラストは文句なしに美しい。

そして今日は珍しく雪が降っているということで、窓からは落ちていく雪も見ることができる。

夜景にキャッキャとはしゃぐサエを正面に見ながら、俺は俺の決意をサエに伝えようとしていた。

軽く息を吸って、リラックスリラックス。

「なぁ、サエ?」

「ん?」

俺が話しかけても、夜景に目を奪われたままのサエは、そのまま窓の外を見ている。

「俺さ、クラブチームに入団するっていうのは勿論知ってるよな?」

「知ってるよ?知らないわけがないじゃん。」

変なケン、と微笑んでこっちを向くサエ。

その笑顔を見るとやっぱり安心して、温かい気持ちになる。

「それでさ、俺とサエの今後を考えてみたんだ。」

ゆっくりと言葉をかみ締めて吐き出す。

ここからが本題だ。

俺が数ヶ月、悩んだ末の結論。サエは受け入れてくれるだろうか、不安だ。

「1年前くらいに、緑と坂上がケンカしたときあっただろ?そのときに緑とちょっと話したんだけど-」

いったんそこで言葉を止める。サエの視線が俺を捉えているのを感じる。

「結婚について話したんだ。」

「結婚…?」

聞き返してくるサエに、俺はそうだよと頷く。

「俺もさ、緑に言われるまでは全然そんなこと考えてなかったんだけど、急にそれが身近に感じられるようになってきてさ。」

無言のサエ。きっと、サエだって今の今までそんなこと考えていなかっただろう。

そんなことは分かってる。でも、聞いてほしいんだ。

俺はサエの目をしっかりと見る。俺の意思に曇りはない。

「俺、将来的にはサエと結婚したいって思っている。」

その瞬間、サエの目が少しだけ大きく開いた。

「けっ、結婚…?」

「そう。だけど、今の俺にはサエを幸せにしてあげられるか、イマイチ自信がないんだ。」

恥ずかしながら、と付け加える。

俺の目の前のサエは、『結婚』というワードを意識したのか、少し顔が赤い。

「ケ、ケンと、け、け、けっ、結婚なんて…」

「サエ、ちょっと聞いてくれ。」

落ち着かないサエの肩を両手でつかんで、現実に引き戻す。

浮かれたいのは分かるし、俺だって浮かれたいけど、目の前には数々の不安がいっぱいなんだ。

俺の真剣な目を見て、サエは落ち着きを取り戻す。

コホン、と咳払いをひとつしてからさっきの言葉を繰り返す。

「今の俺には、サエを幸せにしてあげられるか、イマイチ自信がないんだ…」

「えっ…?」

それから俺は、プロに入る不安などを包み隠さず語った。

サエは真剣な表情で、だけどどこか悲しげな表情で聞いている。

「…ということで、今の俺には不安が多すぎて、サエを幸せにできないかもしれない。」

「…」

不安のすべてを話し終えて、なんだか胸がすっきりした気分だ。

だけど、そんなことを思っている余裕なんてない。これから、俺の気持ちをちゃんと伝えなきゃ。

俺は片手でカバンから小さい箱を取り出し、もう片方の手で目の前でうつむいているサエの顔を上げた。

「だから。」

俺は小さい箱をゆっくりと開け、中のネックレスをサエに見せる。

これは俺がコツコツバイトして貯めたお金で買った、ダイヤモンドのネックレス。

いったん息を吸って、吐き出す。

「俺の自信がつくまで、こいつを持っててくれないか?」

「じ、自信がつくまで…?」

「そう。俺が、サエを一生幸せにできるっていう自信がつくその時まで。」

サエと俺が見つめあう時間は永遠に感じられた。

見つめあうといっても、いつものようなラブラブな感じではなく、互いの心のうちを探るように。

「…ケンらしい。」

沈黙の後、サエはそう呟いた。

「えっ?」

「そんなことしてくれなくても、私は、ケンのことをずっと待ってるよ。」

サエはそう言って箱からネックレスを取り出し、俺に「つけて。」と渡してきた。

俺は震える手でそれをつける。

「ケンの自信がつくまでずっと待ってるから。だから…」

つけ終わるとサエはこっちを振り向く。

「絶対、お嫁に迎えに来てよね!」

そこには、いつもの笑顔があった。

「…あぁ。必ず、サエを迎えに行くよ。必ず。」

そうだよ。俺はどんな不安も困難も障害もすべて乗り越えてみせる。

乗り越えて、サエを迎えに行く。どんなことがあろうとも、必ず。

俺はそう誓って、サエと長いキスを交わした。

いかがでしたでしょうか?

結婚なんて学生の僕には全然想像がつきません…

なので想像で書いた部分が多いですが、現実とかけ離れていてもその辺はご了承ください。

物語はまだ続きます。

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