第四五話
遅くなりました。年内完結は無理だと悟りました。
副島健人編です。
感想ありがとうございます。
番外編もやってみましょうか!やろう!やろう!
と、ちょっとテンションをあげてみました。
無事東都ディスティニーリゾートに到着。行きの電車は通勤客で死ぬかと思った。毎日チャリ通学してるから、電車って慣れないんだよな。
リゾートについた後、泊まるホテルに荷物を預け、早速TDLこと東都ディスティニーランドへ。
ちなみに言っておくが、TDLはトウキョウでぃずにーランドではないぞ。東都ディスティニーランドだ。
泊まるホテルのプランでTDLとTDSのチケットがついていたので、券売機でそれを買い求めるために並んでいる行列を横目に見ながら、ホテルのカウンターで貰ったチケットを入口のマシーンに投入。
アレだ、駅の改札みたいなシステムだよ。
出てきたそれを取って、視線を上げればそこは夢の国。既に日本ではない気がする。
「おぉ~、すげぇ~…」
「うわぁ~っ!すごいよ!」
「うん、いつみてもすごいね!」
「よっしゃ、じゃあ2日間で遊び尽くしちゃおうぜ!」
これが俺らの入口をくぐった後のコメント。
上から、俺、サエ、坂上、緑。なぜか俺だけコメントのテンションが低いのは気のせいだろうか?
…まぁそんなことは気にせずに。
「おい、もたもたしてくと置いてくぞ!」
気づくと俺以外の3人は既に前のほうにいた。その笑顔からは『ワクワク』というのが読み取れる。というかそれしか読み取れない。
「おうっ、今行く!」
俺は軽く右手を上げると小走りで3人に追いついて、緑が坂上にしているようにサエの右手を左手でつかんで歩き始める。
付き合い始めの頃はこうすることも恥ずかしかったが、今は何の躊躇いもなく手を繋ぐことが出来るようになった。これもちょっとした進歩かな?
なんて思いながらサエを見ると、視線に気づいたのかこちらを見てきた。
「どうしたの?」
身長差があるので、必然的に上目遣い。クラッときそうになる俺。
俺をクラッとさせた罰として、ちょっといじめてやろっ。
俺はサエの目をまっすぐ見ながら、こう口を開く。
「サエ、好きだよ。」
するとサエの顔がどんどんと朱を帯びていく。
「こ、こんなとこで言わないでよっ!バカッ!」
「え?じゃあサエは俺のこと、好きじゃないの?」
恥ずかしそうに視線をそらしたサエに、追撃してみる。
するとサエは、こっちをチラチラと伺いながら、小さい声で
「す、好きだよ…」
なんて言うもんだから、再びクラッときてしまう。この場でギュッと抱きしめてもいいんだが、俺の理性が欲望をコントロールした。
「そっか。俺も好きだよ。」
もう一度言ってから、サエの手をしっかりと握り締めたまま前に歩き出す。
「ねぇ朋樹、あそこにいちゃいちゃしているカップルがいるよ。」
「ほんとだ。恥ずかしくないのかな?」
ふと我に戻ると、俺とサエがいるところから少し離れて緑と坂上の姿。
そんな言葉が聞こえて、急にさっきまでの行為が恥ずかしくなってきた。何やってんだよ、俺。
「しかも、今からこっち行こうとしてるのに、彼女のことで頭がいっぱいになっちゃって変な方向に行こうとしてるよ?」
「ほんとだ。あの2人はラブラブだね。」
はっ、と思って俺が進もうとしていた先には、植物の茂み。危なかったぁと安堵すると同時に恥ずかしさがまたこみ上げてくる。
俺とサエは小さくなって、緑と坂上の後ろについていくことにした。勿論、手は繋いだままで。
それにしても、うぅ、恥ずかしい…
お分かりだろうが、もう一度言っておく。
俺と緑は、こともあろうに美人な2人組と一緒にいるのだ。何を意味するか分かるか?
うん、そうだ、つまり男達の視線がザックザクだ。嬉しくねぇや。
そいつは容赦なく、俺と緑のハートにズブズブと突き刺さる。
俺は少し前で楽しそうに話すサエと坂上の後ろを歩きながら、隣の緑に話しかけた。
「なぁ、緑。」
「ん?」
「さっきから、視線を感じないか?」
「あぁ、俺も思ってた。」
「理由って…」
「まぁ、前のお二人さんだよな。」
やっぱり、俺と同じ考えか。
そうして話している間にも、ほら、右斜め前の3人組のお兄さん方が俺ら2人と前の2人をチラチラと見比べ、敵意がこもった視線を感じる。
そして左側からも、怖そうなお兄さん方…じゃなかった。女子高生たちだろうか?サエや坂上とあまり年が変わらない人たちが、俺と緑のことを見ている。んん、何で?
「緑。もひとつ質問。」
「はいはい、何?」
「左側の女子高生たちからも視線を感じるのは、俺の気のせいかな?」
「いや、違うね。気のせいじゃないね。」
即答された。ノータイムで即答された。
まぁそれはいいとして、男たちから視線をザクザクもらうのは分かるけど、どうして女子高生が?
「だから、君はどれだけ鈍感なんだね、副島君。」
「はぁ?」
「お分かりか?君は非常にカッコいい。だから女子高生たちは君に惹かれるのだ。」
「はぁ?お世辞か?」
「殴るぞ。蹴るぞ。」
「すいません。」
何と言うメチャクチャなやり取り。
というか、絶対それはないない。俺は一般人レベルだぞ?むしろ緑のほうがカッコいいとも思う。
何でだろうなぁ…?ちょっと意味がわからないけど…?
「お~い、ケン?」
そんな風に考えていて自然に歩調が遅くなった俺を、前のサエが呼ぶ。
どうした、と声をかけると、早く次のアトラクション行こう、と笑顔で返ってきた。
ま、視線とかどうでもいっか。そう思った俺は、少し小走りで前のサエに追いつく。そして、手を繋ぐ。
その瞬間、うっ、また視線がザクザク…
「ねっ、早く行こ!」
だけども、サエのこんな笑顔を見ていると、そんなどうでもいいことなんて頭の中からFly Away!
「あぁ、行こうか。」
「うん!」
しっかりと繋いだ手は、視線なんかで離れるものじゃない。何があっても離すことはない。
ずっと、こうしていたいから…
「ねぇ、またあの2人、自分たちの世界にいってるよ。」
「ほんとだ。しかもまた変な方向に進んでいるし。」
またまたはっ、として目の前を見ると、今度はゴミ箱。
サエも同じタイミングで気づいたのか、どこか気恥ずかしそうにしている。
うん、俺もだけど。
ということで俺とサエは、ニヤニヤする緑と坂上の後ろにまた小さくなってついていく羽目に。
う~ん、俺ってサエに溺れているのかも?まぁ、それはそれでいいんだけどね。
夜のパレードなどを見終えて、俺ら4人はホテルに移動。
閉園ギリギリまでパレードを見ていたから、ホテルに到着したのはそこそこ遅い時間だったけどフロントの人は笑顔で俺らを迎えてくれた。
フロントで部屋のカードキーをもらってから、俺ら4人はエレベーターで泊まる部屋のある階へといく。
部屋割りは結局、無難に男性同士・女性同士となった。
なぜか緑がちょっと残念そうで、坂上が「家に帰ったら、ね?」と意味ありげな言葉をかけていたけど。
まぁそんなこんなで夜だというのに元気が戻ってきた緑と荷物を持って部屋へと入る。
西洋風な室内のところどころに東都ディスティニーリゾートだと感じさせるような模様や置物などがあって、普通のホテルとは違うんだぞ的な印象を受けた。
ベッドにダイブして天井を見上げる俺に、緑が声をかけてくる。
「なぁ、パソコンある?」
あるぞ、と俺はホテルに預けてさっき受け取ったバッグの中からNEWパソコンを取り出す。
まぁ、買ってもらったのが嬉しくて、持って来ちゃった…みたいな。俺は小学生か?
何をするんだろう、と思って緑がパソコンをいじるのを後ろから見ると、緑は明日行くTDSこと東都ディスティニーシーのページを開いていた。
「何やってんの?」
「あぁ、明日の回り方とかいろいろ考えてる。」
気になるところを手元のメモに書き写したりしている緑を見ると、女の子といる男はこうでなきゃダメなのかと思ってくる。
きっと、緑は坂上とデートするにしても計画をかんがえたりしてるんだろうなぁ…なんて。
それに対して俺はサエと気ままに行きたいところをブラブラしたりする感じ。というよりもむしろ、サエに引っ張られている感じもしないわけではないけど…
「緑ってすごいよなぁ。」
「い、いきなり何だよ、気持ち悪い。」
そうしみじみと呟くと、厳しい返答が返ってきた。
心がくじけそうになりながらも今俺が思ったことを説明する。
「皆の前ではムードメーカーだけど、裏ではちゃんとこんなこと考えているんだなぁって思うと少し感動したよ。」
「だろ?結構俺、やるんだぜ?」
ほぉ、と素直に感動する俺。
確かに、こいつが坂上に告白するときとか、試合中にもかかわらず俺に念入りに「いいパス寄越せよ!」といってきた記憶がある。
単なるムードメーカー・盛り上げ役じゃなくて、策士なのかも。
「そうだよ、俺策士だよ。」
「ホントか?」
俺が冗談でそんなことを言ってみると、緑は意外にも肯定。
「あぁ。だって、お前と真壁をベストカップル賞に出場させたの俺だぞ?」
…そうだった。
あの時は殺してやろうかぐらい憎んだけれども、それがなきゃ今の俺とサエの関係はなかっただろうからむしろ感謝してしまうのが不思議なところだ。
う~ん、なんだかモヤモヤ。
「ま、とりあえず結果オーライってことだ。」
「俺やサエを巻き込んでおいてよくそう言えるな…」
「あれ?だって結果が今なんだから、まぁ許容範囲でしょ?」
「…まぁ、今となってはそうだけど…」
ちょっと照れ気味に答える俺の返答を聞いて、ほら、と緑は呟きながら、パソコンの画面とにらめっこしている。頭フル稼働で明日のコースを考えているんだな。
何気なくそんな緑を眺めていると、不意に俺は気づいた。
この春から、俺は緑とは違う大学に進学する。
一種の『別れ』ってやつなのかもしれない。
いや、家自体はそんなに離れているわけでもないし、大学だって行こうと思えばいける距離だけど、それは『会おう』と思ったときの話であるのだ。
いつものように『会おう』と思っていないで学校に行ったら緑に会う、というような当たり前の生活ではなくなる。
そんなことをしみじみと思うと、なんだか寂しくなってきた。
「…なぁ。」
「なんだよ、しけった表情で。」
「…俺ら、別々の大学行っても、また会うよな?」
緑はそこでメモをしていた手を止め、パソコンから俺へと視線を移す。
「当たり前だろ。クサい言葉を使えば、『友情は不滅』なんだよ。」
「…そうだな。そうだよな。」
緑の言葉で俺らの関係は学校が別々になったからって途切れるものじゃないってことを、再認識させられた。
やはり、持つべきものはいい友達だな。
明日は勿論のこと皆で楽しむけれども、皆でこうして遊ぶのも実質最後なんだ。
だから、緑といろんな話もしてみよう。そう心に思った。
「おい、副島の大学と俺の大学で一緒に合コンしようぜ。」
「いや、お前坂上いるだろ?」
「お前の大学行っていい?確か文学部の近くだったよな?」
「いや、それ絶対女の子狙いじゃん。」
「副島の家行っていい?酒持っていくから。」
「うん、出来ればあと2年待とう。」
なんだよ、結局快楽狙いじゃないか。
なんて思ったのはその数分後のこと。
とまぁ、何かこんな感じですわ。
どうでしょう?
感想などお待ちしてます。