第四四話
テスト終わりました。終わりました。終わりました。
点数はお察しください。
活動報告で予告したとおり、『旅行編』その1です。
副島健人視点です。
活動報告もちょいちょい更新するんでそっちもどうかよろしくお願いします、です。
それと、活動報告のほうにもちょっと書いたんですけれど、この『2人はきっと。』の番外編みたいなを書こうかどうしようか、と思ってます。
読みたい!などと思ってくださる読者様がいらっしゃったらその旨お伝えください!伊倉のやる気が1.5倍になります。
受験が終わった俺やサエに緑と坂上は、教室でダラダラするのも大学が未だ決まらず勉強している奴らに申し訳ないということで、駅の近くのファストフード店へと移動する。
喫茶店でお茶しながらお話をする、なんて優雅な感じではなくて、ファストフード店で駄弁るという感じが俺らなのだ。
緑と2人で1階のレジで飲み物や食べ物を買って2階へと行くと、既に坂上とサエが席を取って待っていた。
「お~い、こっちこっち。」
2人の姿を探してキョロキョロしていた俺らはサエの声で2人の姿を発見する。
席へ歩くと同時に、俺と緑に周りの男子高生からの視線がグサグサ。
緑は気づいていないみたいだけど、すんごい見られている。というか睨まれている。
あそこの兄ちゃんなんて目つきヤバイって。
『なんだてめぇら、あんな美人たちと一緒にいるのか、アァン?』心の声が聞こえてくる気がする。
勿論のことサエは可愛いし、今まであまり触れていなかったが坂上だって緑にはもったいないのでは、というくらいの美人なのだ。
ウチの学校の2トップがそろったといっても過言ではない。
そして、そんな2トップの相棒が俺と緑…これでいいのか?
緑は確かにイケメンだけども、大してかっこよくもない俺だぞ?
「おい副島、それ嫌味か?」
「え?」
緑に心の中を読まれたみたいだ。言葉の意味は知らないが。
「副島がそんなこと言ったら、全世界の男性の99%が自殺するからやめとけ。」
「は?」
緑がテーブルに持ってきた飲食物を置きながらそういう。
…というか、緑って俺の心の中読めるのか?学園祭のときもそうだった気がする。
…もしや、超能力?エスパー?というかあいつはもしや異星人?
そんなことを思いながら手元のポテトをつまんでいると、緑の声が耳に入る。
「でさぁ、皆で泊まりにでも行かない?」
「泊まり?」
緑の言葉に坂上が返答する。サエも何のことだ、というような目で俺を見てくるから、何も知らない俺は肩をすくめるばかり。
「あぁ。もうすぐ卒業だしさ、このメンバーで最後の高校生活思い出作りでもしないってことよ。」
「あぁ、そういうことね。私はいいと思うけど…冴っちは?」
「うん、賛成だよ。ケンもだよね?」
流れ的に『Yes』しかないだろ。まぁ、それ以前に、可愛らしくサエに見つめられたら答えは一つだけどさ。
俺が了解すると、次はどこに泊まるかという話に。
「どっか温泉宿とか?」
「朋樹、なんだかジジ臭い~!」
本人的にはGOODな案だったのだろう、緑の自信ありげな提案は坂上の一言で廃案に。
続いて俺の意見。
「じゃあ、誰かの家に泊まるというなんともリーズナブルなのは?」
「ケン、高校生活最後なんだから、もっと派手にどっか行こうよ。」
「そうよね。それに、冴っちは365日副島の家に行ってるしね。」
ま、真理っち!
からかわれて顔を真っ赤にしたサエがそういいながらむぅ、と坂上を睨む。
「じゃあ、どこがいいのさ?」
男性陣の意見は終了。ということで、緑が女性陣に意見を求める。どうせ俺らの意見より2人のほうがいい意見出すって。
その言葉を聞いたサエと坂上は顔を見合わせて、
「東都ディスティニーリゾートに行こう!」と言った。
今名前がでたここは、日本一のテーマパークであるアレだ。
日本語で言えば『陸』=TDL、『海』=TDSと名前がついたあの2つのアミューズメントパークに加え、ホテルなどの周辺施設も充実している。
最後に行ったのは高校に入る前だったと思うけど、あの時は改めてここが日本じゃない別世界のように感じた。
そこなら、ホテルもあるし、1日中遊べるという面ではいいかもなぁ。
そこから話はまとまり、詳しいことを俺の家で俺のNEWパソコンで調べようという話になった。
「ただいま~。」
いつものようにドアを開けると、「おかえり~」といつものように母親の声がした。
「お帰り、健人。」
「今日はちょっと来客が多くて…」
俺がそういい終わるうちに、再び玄関のドアが開いてサエ・緑・坂上の順で入ってきた。
「こんにちは。」
「あら冴子ちゃん!毎日来てくれているから家族みたいなものよっ!」
ちょ、ちょっと!サエはまたからかわれて恥ずかしそうにそう呟く。
俺の母親はそんなサエをみて笑ってから、後ろにいる2人組の事を見た。
「あら、緑君!久しぶりじゃない!」
「こんちはーです!」
緑とうちの母親はなんだかんだで接点がある。というのも、中学のときからサッカー部で一緒にいた俺と緑は互いの家で遊ぶことも多く、その際に顔をあわせているのだ。
ただ、今年は受験があったからか、全然うちに来てなかったけど。
「そしてお隣の美人さんは…もしかして、真理ちゃん?」
「覚えててくれたんですか!お久しぶりです!」
ちょっと頬を赤らめた坂上が挨拶。中学のとき、よく俺の家にサエと緑と坂上という今のメンバーで集まることが多かったからなぁ。
「あとで飲み物とか持っていかせるね!」という母親の声を聞きながら、俺ら4人は靴を脱ぎ、2階の俺の部屋へと階段を上っていく。
ガチャッとドアを開けると、隣の緑が「久しぶりだなー、ここ来るの」といいながら俺のベッドにダイブ!
俺はそんな緑に向かって鞄を投げ、サエと坂上を入れる。
(『痛い!』と緑が言っていたのはきっと気のせいだろう)
そして2人に卓上テーブルの周りに座るよう勧め、俺はその上に『大学合格祝い』として買って貰った自慢のノートパソコンを広げる。
「うわぁー、いいなぁー。」
「ふっふっふ、いいだろ?」
ベッドの上から感動する緑に誇らしげに言葉する俺。
そしてパソコンのほうに視線を戻すと、坂上が勝手に電源をONしていた。目を離していたら何をするか分からないぞ、坂上は。
緑はもはや俺らと談義する気はないようで、ベッドの上をごろごろしている。
そんな緑は無視して、俺は『東都ディスティニーリゾート』とあの有名な検索エンジンでググってみた。
いや、ヤフってみた。何でもいいか。
そしてそこからホテルを検索。10分ほど皆で相談して、俺らは1つのホテルを決めた。
予約は簡単なネットでしよう、ということに。
ネットでの予約にはネット会員登録が必要だったが、幸いにも両親が登録していたので、1階のリビングにあるパソコンで母親が見守る中、予約。
というか、このとき初めて『泊まりに行きたいんだけど…』と話したのだが、何のためらいも無く了承された。
柔軟すぎるというか、放任過ぎるというか…なんだか感動だ。
ちなみに俺が予約している間、俺以外の3人は部屋で待機していることとなったが、俺がいないと何をするか分からない。
別にやましい物があるわけではなく漁られてもマズいことはないが、なんか嫌な予感がするのだ。
予約画面を印刷し終えた後、俺の部屋へとちょっと急いで戻る。
「予約し終え―たぞ?」
語尾がマヌケな感じになってしまった。
だって、ドアを開けたら顔を真っ赤にしたサエとニヤニヤしている緑AND坂上がいたんだもん。
「予約取れたけど…何か?」
状況をイマイチ理解できない俺が3人に問う。
「ん、まぁ色々とね。」
「うん、朋樹の言うとおり色々とね。」
「色々?」
ちょっと何を言っているか分からない。ということで真っ赤になっているサエに顔をむけてみる。
サエは顔を横にブンブンと振るばかり。何があったんでしょう?
「おい副島、予約し終えたんだろ?」
後ろから緑に呼ばれ、俺は振り向いてうなずく。
「これが予約の詳細。」さっき印刷した予約画面を緑と坂上に見せると、2人はそれを携帯でパシャリ。
その間に俺は、部屋にあるサッカー選手のカレンダーの日付をチェックし、ボールペンで『泊まりに行く』と書く。
「おっけー。じゃ、この日は8時30分駅に集合ってことで。」
「ということで、冴っち、私たち帰るね~。」
緑と坂上はそういうと、1階の母親に挨拶してから風のように去っていった。
俺は2人を見送って、部屋へと戻る。
サエはまだ顔を赤くして、その場に固まってた。
「お~い、お~い?」
「…はっ!」
気づいたみたいだ。というか今まで放心状態だったのか?
俺はサエが平常に戻ったのを見て、俺がいない間に何があったのかを聞いてみた。
「えっと…2人がケンの机の上に私と一緒の写真を見つけてからかってきたから…」
そこまで言ってまた顔を紅潮させるサエ。
確かに、俺の机の上にはサエとの写真が飾ってあるけど、結構古い時のからあると思う。
俺は立ち上がってその写真を眺める。
一番左が小学校に入学したときの2ショット。2人ともまだちびっ子だ。
右にいくにつれてだんだんと大きくなっていく俺ら。小学校卒業の時の写真の隣には中学入学時の写真。
行事の写真やら何やらが2~3枚あって、中学校卒業の写真。(もっとも、これには緑と坂上も一緒に写っているが。)
高校入学の写真(これも緑と坂上が写っている)からは今とあんまり変わらない俺・サエの姿を見ることが出来る。
俺にもこんな時代があったのか~、なんて密かに感慨に浸ってみる。
そして、一番右、つまり一番新しい写真は、大学の合格発表の日、サエの家で夜に撮った1枚だ。
ソファーに座った笑顔の2人が写っている。
「要は、これを見てなんか言われたんだろ?」
サエはコクンとうなずく。
「緑と坂上のことだから、どうせ『ラブラブじゃ~ん!』とかでしょ?」
再びコクンとうなずくサエ。気のせいか、顔がちょっと赤いぞ?
俺はそんなサエの隣に座る。
「だけど、ラブラブでいいじゃん。だって俺ら、恋人同士なんだから、さ。」
横を見ると、ちょっとビックリした顔で、けれどもすぐに笑顔になったサエが。
「そうだね。私たち、恋人同士だもんっ!」
そういって俺の右腕にぎゅっとつかまってくるサエ。そんなサエが可愛くて、俺はその黒い髪をなでる。
そして俺の目を見たサエに吸い寄せられるように、サエも俺に吸い寄せられるように、唇を近づけ…
「えーっと、お二人さん?」
その声を聞いて、俺とサエの距離が10センチないところでピタッと止まる。
パッ、と声のほうを見ると、ニヤニヤしたわが妹、美穂の姿。
「な、なんだよっ!?」
俺とサエは互いに急いで距離をとる。
「いや、冴子お姉さん、晩御飯食べていくかなーと思って…」
なんだよ。単なる用事か…
美穂の言葉を聞けば、今日はサエの家の両親が2人で晩御飯を食べに行くらしく、それを聞いたウチの母親がサエと秀に食べていくように勧めているそうだ。
さっき帰ってきたらしい秀も『食べていく』といったようで、今は洗面所にいるとのこと。
「あ、じゃあ私も食べてこうかな…」
「了解っ!」
美穂がそう言い、リビングへと戻っていく。
俺らはほぅ、と一息吐く。いやぁ、ビビッタビビッタ。何も言わないところを見ると気づかなかったみたいだ。
「あ、あと…」
安心している俺らの元に、再びぬっとあらわれた美穂。
「キスするなら、ドアぐらい閉めたら?」
その言葉で俺とサエの顔は赤く染まる。
美穂はそんな俺らをニヤッと見てから、ご丁寧にドアを閉めて今度こそリビングへ。
うわぁ、気づいてんじゃん。超恥ずかしい…!
その夜の晩飯時は、母親と秀・美穂にいじられ、ニヤニヤされてなんだか疲れた。
だけど晩飯後、俺の部屋で今度こそドアを閉めて、サエにキスをしたのは2人だけの秘密だ。
『旅行編』といいながらも旅行の前段階で終わりました。
ということで次回の第2弾は旅行します。
ちなみに東都ディスティニーリゾートは…分かりますよね?
千葉県に実在するハイパーでワンダーな夢の国です。