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第四二話

こんにちは。テスト前になると更新したくなります。勉強しろよです。


感想ありがとうございます。失礼ですが、この場でお礼を申し上げたいと思います。


真壁冴子視点です。

物語はまだ続きますよ~!


※重大な間違いに気づきました。改稿済み。指摘してくださった方ありがとうございました。

「行ってきま~す。」

朝の7時40分。いつものようにケンを起こしてから学校へ行こうと玄関で靴を履いていると…

「あれれっ?どこ行くの?」

ドタドタと秀がやってきた。秀も制服姿だ。

「えっ?いつものとおり、ケンの家だけど…」

そこまで言ってから、私はハッとなった。

秀はニヤニヤしている。

要するに、秀は私に、『ケン』という単語を言わせたかっただけなのだ。

「へぇ~、姉貴、健人兄さんの家に行くのか~。」

リビングでお皿を洗っている母親に聞こえるように、秀はわざとらしく大声でそう叫ぶ。

「バッ、バカッ!い、いつものことよ!」

「冴子~?朝からラブラブで電柱に衝突とかしないでね~?」

「ち、違うったら!」

もうっ、お母さんまで…!

行ってきます、と言い残し、赤くなった顔を感じながら逃げるように玄関を出た。

朝日がまぶしい。

昨日の夜から、まだ一日どころか半日も経っていないのかぁ…

そう思うと、なんだかケンに会いに行くのがちょっと恥ずかしく思えてきた。

昨日の夜、家の前でケンとキスをしているところを秀と美穂ちゃんにバッチリ見られた私は、家に入るとすぐに部屋に閉じこもった。勿論、恥ずかしいから。

ベッドの上でじたばたしているとそのうちに秀が帰ってきて、2階の私にも聞こえるように玄関から大声で私とケンがキスしていたことを喋った。

思わず秀のニヤニヤした顔が目の前に浮かんできて、「ちょっと!」と部屋を飛び出しリビングに突入したところで罠にかかったことに気づいたのだ。

ニヤニヤした母親がソファーに座って、私を見ていた。

慌てて部屋に戻ろうとするけど、後ろにはいつの間にか秀が立っていて、退路をふさいでいる。

「さて姉貴、健人兄さんとなにしてたのか、教えてくれない?」

「健人君とキスしてたんだって~?あらあら、私嬉しいわよ!」

異様にテンションが高かった2人。

そんな2人に負けて、全て話してしまった自分が情けなく、更にこの上なく恥ずかしい。

しかも、今日の朝にはその場にいなかった父親から『冴子、健人君と付き合い始めたんだって?』とか言われるし。

答えるかわりに秀をキッとにらんでやったけど、無意味だった。

…っと、そんなことを考えていると、ケンの家の前。

いつものようにインターホンのボタンを押し、応答を待つ。

『…冴子ちゃん?玄関あいてるから勝手に入ってきていいわよ?』

「はい。分かりました。」

ケンのお母さんが対応してくれたようだ。これもいつものこと。

流石にケンの家では何も言われない…だろう。だって、ケンのことだから、何があっても話さなそうだし。

そう思いながら、玄関扉に手をかけて扉を開くと…

「いらっしゃい、冴子ちゃん。」

「お兄ちゃんは上で寝てるよ~?」

ニコニコしたケンのお母さんと妹の美穂ちゃんが待ち構えていた。いつものこと、ではないぞっ。

思わず後ずさり。

ちょうどそのとき、タイミングよく『バタン』とドアが後ろで閉まる。

「「♪どうぞ~!」」

異様にテンションが高いお母さん・美穂ちゃんと極力目を合わせないようにしながら、私は靴を脱いでケンの部屋がある2階へと向かう。

何となくだけど、ウチのお母さんがケンのお母さんに私から聞き出した全てをリークしていそう…

じゃなきゃ、『私たちはは全て知っていますよ。』と顔に書いてあるような笑顔はしないでしょっ!

そんなことを考えていたせいで、ケンの部屋の前で深呼吸をせずにはいられなかった。昨日のキスのときのケンが、頭の中でぐるぐるとよみがえってくる。

真っ赤になりそうな顔を必死で平常にキープして、そ~っと部屋のドアを開ける。

いつもどおり、ベッドで爆睡しているケン。

その顔は、学園祭実行委員長としての副島健人でもなく、クラスの中での副島健人でもなく、昨日私だけに見せてくれたケンの顔だった。

頬に微笑を浮かべながら眠っている。いい夢でも見たのかな?

ケンの顔を覗き込んで、私だけに見せてくれるこの顔にちょっとウットリしていると…

「ん~…」

ケンが声にもならない声をあげて、目を開ける。

気づけば、私の顔とケンの顔は結構な至近距離だった。全然気づかず顔を見ていたようだ。

私は顔を慌てて離す。

「お、おはよう…」

ケンの顔を見つめていました、なんて馬鹿正直に言えないのでそう言うと、

「朝からキスでもして欲しいの?」

ケンが悪戯っぽい笑みを浮かべていった言葉に、私の頭はオーバーヒート。

「え、ち、ちがっ…!」

「冗談だよ。」

真っ赤になった私の反応を楽しむように笑いながらケンはベッドから軽やかに降り、閉じていたカーテンを開ける。

朝の日差しが部屋中に飛び込んでくる。秋なのに、けっこうまぶしい。

「ふぁ~…って、何やってんの?」

ケンが大あくびをしてドアのほうを見ながら言う。

私もその視線を追ってみると、少しあいたドアの隙間から私たちの様子を覗き込むケンのお母さんと美穂ちゃん。

「い、いや、なんでもないわよ~、美穂?」

「そ、そうだよ~?」

私たちの様子を除いてたに違いない。バレバレだっ!

2人は愛想笑いを浮かべながら、ゆっくりと1階へ退散していく。

「…ったく、何やってんだか。」

ケンはドアにそう吐いたかと思うと、私のほうを見る。

「改めて、おはよ、サエ。」

「うん、おはよう。」

いつもしているこの挨拶も、なんだか今日は違うように感じる。

何て言うんだろう?いつもより、ちょっと特別な感じ。

そう考えると、全てが特別に見えてきた。

例えば、窓から飛び込んでくる日差しとか、脱ぎ捨てられたパジャマとか、上半身裸のケンとか…

「ってちょっとっ!」

思わず両手で顔を覆う。ついでに後ろを向く。

「何で急に着替え始めるのよっ!」

ケンがいきなり着替え始めたことにビックリ。

女の子が部屋にいるんだから、普通そういうことはしないでしょ!

「え?悪かった?」

「わ、悪くはないけど…」

恥ずかしいのよ、と続ける私。もちろん、両手で目を覆ったまま。

でも、ケンのそんな姿にちょっと照れちゃうのも事実かもしれない。

「っし、準備完了。」

ケンのそんな声が聞こえたので、後ろを向いて恐る恐る手を顔から遠ざける。

ちゃんと制服に着替えたようだ。パジャマが床に散乱しているのは気にしない、気にしない。

「じゃ、早く朝ごはん食べて学校行こ!」

「あぁ、そうだな。」

私がケンの右手をぎゅっと握ると、ケンは笑いながらその手を引いてリビングへと向かう。

これは、幼馴染の私たちにとっては『いつものこと』じゃなくて、『特別』なこと。

そして、幼馴染からワンランクステップアップした私たちにとっては、これが『いつものこと』になる予感がする。








異変に気づいたのは学校に近づくにつれてだった。

いつものように、ケンにしがみついて自転車に乗っているとき。

何故か、周りの生徒たちが私たちのことを見て何か喋っている。

「そりゃ、ベストカップル賞のことだろ?」

そういえばそんなものもらったなぁ、なんて昨日の記憶を検索。

昨日はその後にいろいろあって、だから忘れていたのかもしれない。

ケンが自転車を自転車置き場に止めているときも、後ろで待っている私にはいろんな声が聞こえてきた。

「あっ、あの2人ってベストカップル賞じゃなかった?」

「付き合ってないって言ってたけど、どうなんだろ?」

ここで悪戯心がむくむくと湧いてきた私。

自転車を止め終えたケンが隣に並んで歩き始めたとき、ケンの左腕に私は両腕を絡ませる。

周りの視線が集まっているのは重々承知だ。

「なっ、何するんだよ、サエ!」

私にささやくようにケンがそう言ってくる。ちょっと、照れてる?

周りの声も私の行為で大きくなったりもした。

「えっ!本当に付き合ってるのかな!?」

「ま、マジかよ!?」「本当!?」

ちょっと恥ずかしいけど、みんなに見せつけとかなきゃね。

「いいじゃん、私達、恋人同士なんだし。」

ケンにだけ聞こえる声でそうささやく。

「それに…」

「それに?」

「ケンは、私だけのケンにしたい。」

再びささやくと、ケンは赤みがかかった顔をして恥ずかしさからか周りをキョロキョロと見回した後、私の耳に『お返し』といわんばかりにささやいてくれた。

「サエは、俺だけのもの。」

そ、そんな台詞言われたら、照れちゃうでしょっ!

私がそう言うとケンは「ははっ。」と笑って歩き出した。私も、ケンの腕にくっついて歩き出す。

教室へ行くまで同じ体勢で、勿論のこと周りからたくさんの視線を浴びたけれど、ケンは持ち前の鈍感っぷりを発揮し『あれ?なんか俺ら注目されてる?』とたくさんの視線をいなした。

そして、私が今日二度目の異変に気づいたのはそれからすぐ。

何故だか、私たちのクラスの窓には朝なのにカーテンがひかれ、廊下側の窓には光が入らないように黒い画用紙が張られている。

そしてまたもや何故だが、私たちの教室には溢れんばかりの人。入口からすごい混んでいる。

「何かしているのかな?」

「俺は全然知らないぞ。」

ケンとそう言い合いながら後ろの入口へ突入。

「ちょっと、ゴメンよ。」ケンがそういうと、入口から中を見ていた生徒はビックリしてこれまた何故だかどっかへ走っていってしまった。

ますます訳が分からない。

またもやケンが前をふさいでいる生徒に声をかけると、今度はその生徒は私たち2人を見て「おめでとう!」と声をかけてきた。

何がおめでとうなの?ケンも疑問そう。

ケンの腕にくっついてやっと教室に入ったとき、その理由が分かった。

黒板らへんから垂れ下がっているスクリーンに、何か映像を映写しているみたい。

『改めて、サエ、好きだ。』

『うん、私も。』

…えっ!?

思わずケンと顔を見合わせる。周りの人たちは、私たちが私たちだと気づいていないようで映像に見入っている。

というか、これは何の映像なの!?

急に頬が火照ってくる。

『ねぇ。』『ん?』『私、キスしたことないんだ。』

な、何なのよ!これは!昨日の夜のことじゃない!

声も出ずにその場でじたばたもがいてみるけど、全く効果なし。

『意外だな。サエならしたことあると思ってたのに。…とか言う俺も、したことないんだけどね。』

ギリギリ見えたスクリーンは、私と、私の肩に手をかけて私を見つめるケンが映っている。

『私にとってのファーストキスなんだから、とびきり甘いのじゃないと嫌よ?』

『任せとけって。』

こ、こんな恥ずかしい台詞、みんなに聞かれるなんて…

私たちがいくらもがいても、映像はとまるはずがなく。

スクリーン上で、私とケンの唇は近づいていって…

そして今にも触れそうだ、というところで画面が真っ黒になり、後から『END』という白い文字が浮かんできた。

教室中は、私とケンを除いて「おぉ~」というような声。

私とケンは、恥ずかしくて顔を俯かせて。

突然、目に光が飛び込んできた。誰かがカーテンを開けたのだろう。

数分ぶりの光だけど、何故だか数時間ぶりに感じてしまう。それほど、あの上映中が長く感じられて恥ずかしかったのだ。

「はいっ、というわけで我ら学園祭実行委員会緑部隊による『委員長と副委員長のロマンス』の上映を終わりたいと思い…」

首謀者であろう、緑君がスクリーンを片付けて壇上からそう叫ぶ。が、途中で緑君がフリーズした。

緑君の目線を追うと、ケンの目線と一致。

ケンの目の中に炎が見える。

「みぃどぉりぃ…」

そう呟いたケンは、人ごみを掻き分けて壇上の緑君へとまっしぐらに向かう。

「あれ?副島いたの!?」「あっ、真壁もいるじゃん!」ここで私たちに気づいた生徒がほとんど。

ケンはそんな声を無視し、硬直している緑君へと向かう。

「よぅ、緑。」「そ、そそそ、副島くんじゃないかぁぁぁ。」

緑君、ガクガクいっているぞ。近くで見ている真理っちはそんな緑君を笑っているみたいだ。

「人のああいうところを勝手に撮影して、勝手に流すなんてなかなかいい度胸してるじゃないか。え?」

「い、いやいやいや、あああああれはだな…」

結構本気で、ケンは怒っているみたい。

私はそんなケンに、今までの恥ずかしさなんて忘れて、目が釘付けで…

「問答無用ーっ!」「ぎゃぁぁぁぁぁぁっ!」

思わず目を背けたくなるような、ケンの制裁が始まった。

周りの生徒たちも目を覆っているようで、聞こえてくる音からしか状況を推測するしかない。

「そ、副島、ホントにごめ…ぎゃぁぁっ!痛っ!」

「わ、わるかったぁぁぁぁっ!」

「ご、ごめ…ぐふっ…」

などなど。

要するにケンが緑君をぼこぼこのボッコボコにしているのは何となく分かった。

なんだか、痛快だ。

「ふぅ…」

成敗完了、といった声で教卓に突っ伏す緑君を見下すケン。

「でさぁ~?」

シーンとなっていた教室の静寂を破るかのように、真理っちが口を開く。

真理っちを見ると、少しニヤッとして。

「副島と冴っちは、付き合っているの?」

やられたっ、と思ったのは遅かったようで。

一瞬の静寂の後、(未だやられている)緑君以外の生徒たちが私とケンに津波のように押し寄せてきた。

「ま、真壁さん!そうなの!?」「副島と付き合ったのか!?」「どっちが告白したの?」「キスは!!??」

そんな質問ばっかされて、勿論恥ずかしくなる。

どうしよう、と思って教卓付近のケンを見ると、同じような状況。

「で、付き合ってるの!?」

仕方ないから、私は、首をほんのちょっとだけ縦に振った。

オォッというどよめきと共に、その瞬間だけ、窓から入ってくる光が、いつもよりまぶしく感じた。







「えー、では、実行委員長からです。」

司会の先生の声がマイクを通じて聞こえてくる。

体育館に集まっての全校朝礼。忘れていた。今日は、学園祭の後片付けの日なのだ。

壇上に普段と変わらない様子で上がるケンを体育館の後ろのほうから見ている。

高校3年生は、並ぶ場所が後ろのほうなのだ。

隣には真理っち。何か聞いてくるのかと思ったけど、意外にも聞いてこないので、逆に怖い。

「えー、委員長の副島です。…」

その後はいつものように、学園祭の来場者数の発表や、売り上げNo1の店舗発表や、今日の片付けの注意事項などを淡々と話すケン。

最初のころと比べると、『委員長』って感じがしてきたなぁ。なんてちょっとウットリ見とれたりして。

「…ということです。では今日も頑張りましょう。いじ「副島~っ。発表することないのか~?」

私の推測によれば『以上です。』と言いかけていたケンをさえぎって、(もう復活した)緑君が何か含みのある声でそう叫ぶ。

「副島~っ!」「ご報告しろ~っ!」

緑君の声をきっかけにして、高3がノリはじめる。

何のことだろう?なんて思いながら真理っちに聞いてみると、

「すぐに分かるよ。」という曖昧な答えを何かありそうな笑顔で返してくれた。

何だろう?

さっきから、いろんな人の視線をチラチラと感じるのは気のせいかな?

「わ~かったよ!言う、言うから!」

ケンのそんな声が聞こえてきた。その言葉に、高3の(緑君を中心とした)一部は「オォーッ」などと歓声を上げる。

ケンはゴホン、と咳払いをひとつして。

「えーと、私、副島健人は、縁あっていただいたベストカ―「じれったいぞ~っ!」

またもや緑君の野次。

「早く言え~っ!」「単刀直入に~っ!」

「わ~かったって!」

ケンは再び咳払いをし、何故だか顔をちょっと赤らめて、

「俺は、サエの彼氏だ!」

何を血迷ったかそんなことを大声で叫んだ。

え、えっ…!?

周りの視線が私に集まる。

状況を理解するのと、顔が真っ赤になるのに、たいした時間差はなかった。

「オォーッ!」「ヒューヒュー!」

高3のあちこちからそんな声が。

そんな歓声が大きくなるにつれて、私の恥ずかしさもピークへと向かう。

「ね?こういうこと。」

「う、うぅ~…」

真理っちが真っ赤な私に追い討ちをかけるように、含みのある笑顔でそう呟く。

そして気づけば、何故だか拍手まで起きていた。

壇上のケンも、私と変わらないくらい真っ赤になっているのが確認できる。

だけど、これをそれほど嫌だとは思わない私もいて。

私はちょっと恥ずかしかったけど笑顔で、壇上から戻ってきたケンの手をぎゅっと握り締めた。


こんな派手な交際宣言があって、私とケンは、学校中誰でも知っている恋人になってしまったのだ。

感想などどしどしお待ちしております。


物語は続きますよ。といってもあと5話前後です。

最後までお付き合いお願いします!

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