第三八話
学園祭2日目編 その1です。
いよいよクライマックス編突入!といったところでしょうか。
真壁冴子視点です。
そういや投稿遅れました。すいません。頑張ります。
『俺は、サエしか見てないぞ。』
机に肘を突いてボーっとしていると、昨日ケンに言われたあの言葉が頭の中でぐるぐる回る。
あんな告白まがいのことを言われたら、顔が真っ赤になってドキッとしちゃうのもしょうがないでしょ!
だけどきっと、ケンは告白だとか、そんなこと考えずに言ったんだろうなぁ…
私だって、ケンの鈍感っぷりは嫌というほど知っているつもりだ。
だからあの言葉も、きっとケンにとってはなんでもないもので、だけど私にとってはすごい嬉しくて…
「お~い?」
「ひゃうっ!」
急に視界にケンが入ってきたので思わず変な声を出してしまった。
「さっきからボーっとしてるけど大丈夫か?」
「あ、うん。なんでもないから。」
笑顔を見せてなんでもないことをアピールする。
そうか、とケンは微笑んでから教室の外へと出て行った。
学園祭2日目の今日は、昨日みたいにどこかの部の食品販売を手伝うとかいうことはせず、
本部で各部署に指示を出したりとか道案内とか、ちょっとは楽なお仕事をすることになっている。
なので私は、こうして本部の奥のほうでぼーっとしていても後輩くんたちが頑張っているのでいいのだ。
…と、副委員長がこんなこと言っちゃマズいんだけどね。
「ほーら、副委員長様、起きて起きて!」
「ふぁ~…あ、真理っち。」
机に突っ伏して少しの間ボーっとしていると、真理っちに呼ばれ体を起こす。
「あれ?イベント班の方は?」
「ん、今は休憩中なんだ。後輩くんの企画だからね。」
でも、と言って真理っちは私の隣のイスに座る。
「後夜祭は私たちがメインだから、ちゃんと見に来てよ!」
後夜祭。
学園祭が終わったあと、野外イベントステージでイベント班が中心となって行われるもののこと。
全校生徒、参加は自由だけど、高1は『初めてだから』、高2は『去年楽しかったから』、高3は『最後だから』という理由で結局全校生徒の80パーセントぐらいが参加する、生徒たちにとっては非常に楽しみなもの。
また、外部からきたお客さんも見たければ見ることが出来る。
大抵は学園祭にやってきた高校生だけど、『兄弟が出ているから』という理由で残る人たちもいるようだ。
私も勿論、過去2年は参加した。
だから、イベント班も準備に熱が入る。真理っちも昨日の遅くまで準備してたみたい。
参加するといっても、ステージで行われる『ミスターandミスコンテスト』などの決勝を見るのだ。
「絶対見に行くよ!頑張ってね!」
「ありがとう!ま、メインは冴っちなんだけどね…」
「ん、何か言った?」
真理っちが小声で言った最後のほうの言葉が聞き取れなくて聞き返すと、真理っちは何故か慌てて否定。
「な、何も言ってないよ~?あ、そろそろ行かなきゃ~。」
そして慌てて部屋を出て行った。
最後の台詞、棒読みだった…ということに気づいたりして。
…ま、真理っちが小声で言ったこと、きっと私には関係ないことだから、大丈夫だよね?
学園祭が終わり、明日の総片付けに向け軽く片付け・清掃を済ませて、クラスごとに終礼。
終礼が終わったクラスから、『待ちきれない』というように生徒が飛び出し、後夜祭が行われる野外イベントステージへと向かう。
早く行って、前のほうで見たいからだ。
私も去年まではあんな感じで走っていたが、学園祭実行委員は既にちゃんと場所が確保されているのであまり焦らなくても大丈夫。だからこうしてゆっくりと歩いているのだ。
一番前、というわけではないけれど、なかなかいいポジションなので、『実行委員特権』として他の生徒たちからうらやましがられていたりする。
「サエ。」
場所取りのため走る同級生を横目で見ながらのんびりと歩いていると、うしろからケンがやってきた。
「ケン!」
ケンは私の隣に並んで歩き出す。
「学園祭、終わったな~。」
「そうだね~。」
2人で達成感を感じる。なかなか盛況・好評だったみたいで、さっきぼーっとしていた私もあの後案内とかで忙しかったんだから。
「サエ、ありがとな。リーダーシップのかけらも無い俺だったけど、支えてくれて。」
急にケンが真面目なことを言い出す。ちょっと不意打ち。
「リーダーシップないから、手伝うの大変だったよ?」
なんて言ってみたりすると、ケンは「そうか」と言って苦笑い。
「だけど、ケンと一緒にやれて、私はすごい楽しかったし、嬉しかった。こちらこそありがとう!」
私がそういうと、ケンは嬉しそうにニコッとした。
思えば新学期のはじめにケンと私が実行委員長・副委員長になって。
最初はなにをどうすればいいのか分からない状態で本当に出来るのか、と自分でも疑ったけど、最終的には立派なものを作り上げた。胸を張って言える。
いろいろ大変だったけど、ケンが側にいたおかげで、楽しかったし。
おまけで、ケンへの恋心にも気づいたし。
そんなことを考えていると、野外ステージが見えてきた。
「サエ。」
またまた不意にケンに呼ばれる。
「何?」
ケンのほうに顔を向けると、ケンは目を下にやりながら、顔を少し赤らめて、
「えーっと、その、出来たら2人で話がしたくて、あー、もしサエがよかったらだけど、後夜祭終わったあと、イベントステージで―「冴っち~!!!」
いつもらしくないケンの言葉は真理っちの声でストップした。
「来てくれたんだね~!」
「もちろん!期待してるよ!」
と2人で言葉を交わし、真理っちがステージ裏へ行くのを見届ける。
「で、どうしたの?」
ケンが何か言いかけだったので聞いてみると、
「い、いや、また後ででいいや。」
そういい残し、焦ったように実行委員がかたまっているほうへと走っていってしまった。
どうしたんだろ?何かいつものケンとは違う気が…
ステージにはオレンジ色の夕日が差し込んでいた。
「―ということで、今年のミスを制したのは高校3年の~~さんでした~!皆さん、大きな拍手をお願いします!」
緑君の声で、観客からワーッと拍手。
ステージ上の優勝者はペコリと頭をさげ、その仕草に男子たちが「うぉーっ!」と色めき立つ。
ミスコンテストで優勝した彼女は私の同級生。話したりもするし、結構仲がいい。
彼女の栄冠を祝って拍手、拍手。
「真壁先輩、出ればよかったじゃないですか~!きっと優勝でしたよ?」
隣で見ていた後輩の女の子が拍手の嵐の中、話しかけてくる。
「そんな…私はでるほどの人間じゃないし…」
「でもこの前副島先輩が言ってましたよ?真壁先輩が出たら俺は1票を投じる、みたいなこと。」
そういってその子は再びステージのほうを向いてしまった。
私の頬が赤くなっていくのが自分でも分かる。
幸い、周りがさわいでいるので、私の頬の赤さは誰にも気づかれていないようだ。
で、でも、ケンのその言葉っていうのは、その、私がミスコンに出たら、…!!!
なんだか恥ずかしくて考えられない。というか頭がパンクしそうだ。
「さて!最後となりました!後夜祭!」
ステージ上の真理っちの声で観客のテンションは更に上がる。
「最後は…毎年恒例!ベストカップル賞!」
わぁ~っ!という声が観客のあちこちから聞こえてくる。
この熱気じゃ、まだ夏かなぁと錯覚してしまいそうだ。
「まぁ、この学校にはたくさんのカップルがいるわけですが―」
そこで真理っちが何故か、私のほうを見た気がした。
「その中でどのカップルがこの学校1のラブラブなのか、お似合いなのか、というのをここで発表しちゃいます!」
きっと、真理っちが私のほうを見たのは気のせいだね。
なんて思っている私の背後からは、わーっ、とさらに歓声。
「ま、俺と真理は出たら勝っちゃうから出なかったけど~?」
とおどけていう緑君に、会場からは「緑帰れ~!」「うるせ~!」「緑ばーか!」と、緑君に対し猛烈なパッシング。
そんな様子を見ながらも、ステージ上の真理っちはどこか嬉しそう。
「じゃ、じゃあ、早速発表していきます!第5位!」
真理っちが呼んでいくたびにステージの後ろから手を繋いではにかんだカップルが出てくる。
第3位には勉強合宿で私たちが冷やかしたりもした、男性国語教師と女性理科教師が出てきた。
理科の先生は美人で有名で、校内の男子からの支持率がほぼ100パーセントという高さ。
そのためか、出てきたとたんに国語教師への羨望と恨みが混じった声があちこちから聞こえてきた。
そんな様子に笑いながら、1位は誰なんだろう?と期待。
「お待たせしました!1位の発表です!」
2位のカップルのインタビューを終えた真理っちがそういうと、会場は再びわーっとなる。
「1位は文句なしの優勝といったところでしょうか。投票総数の4割がこのカップルに流れています!」
うわぁ、すごいなぁ。どんな有名なカップルなんだろう?
「発表します!第1位は―」
そんな私の考えは、裏切られた。
「高3で今回の学園祭実行委員長、副島健人と同じく高3、学園祭副実行委員長である、真壁冴子!」
この台詞によって。
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