第三三話
忙しくてなかなか書けませんでした。スイマセン。
…ネタがなかったわけじゃないです。ほんとに。
これから頑張ってペースあげてきます。
副島健人視点です。
目を開けると、まぶしい光が入ってきた。
あれ?寝るとき、カーテンは閉めたはずなんだけどな…
「あ、起きた。」
そんなことを思っていると、聞きなじみのある声が俺の耳に届く。
上体を起こし、その声の主を探すと、ベッドの足元のほうに制服姿で座っていた。
「ケン、おはよう。」
「あぁ、おはよう。」
サエは立ち上がって窓の外を見る。
「今日は自分で起きれたんだね?」
「あったりめーだ。流石にガキじゃないからな。それに、今日は始業式だし。」
そう、今日は久しぶりの高校。
夏休み中も学園祭関係などでちょくちょく行っていたが。
そして今月は、遂に学園祭。俺らの集大成。
そんなことを思うと胸が躍る。
「朝ごはんできてたみたいだから、早く降りてきなさいよ?」
「りょ〜かい。」
サエはそういうと俺の部屋から出て行った。
…あいつは母親か?
腰にかかっていたタオルケットを払いのけ、ベッドから立ち上がる。
ハンガーにかけてある制服を取ろうとしたとき、机の上の携帯が目に入った。
…そういや、今野さんとの決着つけなきゃな。
サエへの想いに気づいた今、今野さんとあのままではいられない。なんとなく気持ちが悪い。
あの夏祭り以来、俺と今野さんが接触したのは予備校のテストでたまたま会っただけで、話すことはおろかメールでさえもしていないのだ。
制服に伸ばしていた手を携帯の方向へ修正し、青いボディをなぞる。
「そろそろ、連絡するべきか…」
「ケン〜!」
そんな俺の呟きはサエの声でかき消された。
「あ、あぁ!今行くって!」
気持ちが引き締まるのはクリーニングに出した制服を着たせいなのか。
それとも、今月が学園祭だからなのか。
あるいは、今野さんとの決着をつけると決心したからなのか。
もしくは、…
恐ろしいほど何事もなくに始業式は終わった。
クラスメイトと夏休みについて語り合うのもほどほどに、俺とサエは委員会室へと向かう。
ドアを開けると、そりゃまぁ大勢の委員がいた。
基本委員は各々が所属するチーム―イベント班や総務班みたいな感じだ―のスケジュールに従って各々の仕事場で仕事をするのだが、
今日は2学期初めということで皆集合しているのだろう。
なるほど、だからこんなに多いんだな。
「おっ、委員長様と副委員長様が来たか。」
「ん?あぁ、これはこれはイベント班責任者でいらっしゃる緑君じゃないか。」
イスに座ってペン回しをしている緑が俺の存在に気づいたのか、声をかけてきた。
そして変な敬語を使う俺ら。端から見ればアホだろう。高3にもなって。
「よし、副島が着いたということで〜」
ピタッとペン回しをやめ、そう呟きながら立ち上がる緑。
何するんだろ?そう思いながらボーっと緑をながめる。
「は〜い、じゃあ2学期も始まったということで、委員長様からお言葉をいただきましょう〜!」
ボーっと眺めている間に俺の目の前に移動していた緑が部屋全体に呼びかける。
話し声が聞こえていた部屋はシーンとなる。
…おいおい、この状況でアドリブが大の苦手な俺にしゃべらせるのか?
緑を見ると何故かウインクをしてきた。殴りたい。
後ろにいるサエを見ると同級生の委員と机に座りながら笑顔で手を振ってきた。
苦笑しかできない俺。
…仕方ない、あきらめるか。
「え、えーと、急に振られてむっちゃ困ってるんですが…」
シーン。
…芸人泣かせの舞台だな。
ん?お前は芸人じゃないだろうって?気にするな。
「2学期が始まるとあっという間に学園祭が来るので、1日1日を大事にして準備に精を出してください。そして、本番を成功させよう!」
ちょっと遠慮がちににぎったコブシを胸の辺りまで上げてぐっ!とする。
やべ、やっちまった。こんな雰囲気でこんなことしちまった。
と思って委員たちを見ると、男子委員は俺と同じようなポーズをして近くの仲間と成功を誓い合っている。
そして女子委員はというと、(サエなど一部を除くが)皆して俺のほうを何故かキラキラとした目で見てくる。
なんか怖いので、とりあえず空いている左手を軽く挙げて会釈をすると(何故怖いのに会釈したんだろう?)、
「キャ〜」という声が女子委員の間から上がった。
…なんかやっちまった系ですね。こりゃ。もうだめだ。
「はーい、じゃあ各自仕事頑張ってね〜!」
タイミングを見て緑が皆に呼びかける。
その声をスイッチとしたかのように、部屋を出て移動する委員もいれば机に座って書類と格闘する委員、さらにはパネルを製作している委員などと違うことをし始めた。
なんか爽快だな。いや、別に委員長だから見下しているわけじゃなくて。
そう思いながら俺の定位置のイスに座ると、左側からいつもと違うオーラを感じる。
「…え〜と、冴子さん…?」
「な・ぁ・に?」
いつもの数倍速のスピードでサエのシャーペンが唸りを上げている。
「…なんでもないです。すいませんでした。」
視線を書類に戻す。
何かサエがキレているぞ。具体的に怒らせた覚えはないんだが。
心臓がドキドキしている。ただ、花火大会の人は違う『ドキドキ』だ。
バクバクといったほうが正しいだろうか。
とりあえず、サエのフィールドから脱出しようと緑の席へ向かう。
「よし、じゃあそこ3人でミス&ミスターコンテストの出場者とプロフィールと看板確認しといて。そこの2人は野外舞台のバンド演奏順確認。そこの5人は野外舞台で行うイベント班主催のイベントの準備頼むよ!…どうした副島?」
うわぁすげぇ。こいつ、できる!
部下をバリバリ使っているカリスマ責任者だよ。俺よりこいつのほうが委員長に適任だろ。
「えーと、サエが怖くて逃げてきた。」
そういうと緑はニヤッとした。
「そりゃ、嫉妬してるんだよ。」
「嫉妬?何に?」
「さっき副島がぐっ!ってやったポーズや会釈が女子委員にむっちゃうけただろ?」
緑は俺のまねをしてそういう。
「まぁ、あれが『うけた』というなら… で、何に嫉妬してんだ?」
緑は『ハァ…』と大げさに溜息をつく。
「だぁかぁらぁ、君が他の女の子にそういうことしたことについて。」
ふーん…
なんかサエに嫉妬されるのも悪くないな…
そう考えるとなんだかニヤニヤしてしまう。
「おーい、戻って来い?」
「あ、あぁ。」
おっと。思わずイキかけていたようだ。
急に緑は俺に顔を近づける。
「で、どうだ?お前が誰に恋してるか分かったか?」
「…なんとなくは。」
俺はサエのほうを見る。
相変わらずダークオーラ満載でシャーペンをガリガリいわせている。
「そっか。ならいいよ。後は頑張れ!」
俺の背中を叩いて席に戻らせる緑。
どーゆーことだ?そんなことを考えていると、後ろから緑が部下に発している声が聞こえた。
「ねぇ、ベストカップルコンテストの出場者一覧表持ってる?ちょっと正式に書き加えなきゃ…」
あ、あいつと坂上で出るのか。見せつけてくれるじゃねぇか。
そんなことを思いながら自分の席へ戻ると、ダークオーラは幾分か和らいでいた。
が、まだ多少感じる。
…どーしよ、好きになったやつを怒らせたよ…
はぁ、と溜息をついて机の上にある携帯に目をやる。
誰からもメールが来ていないことを確認しながら、朝思ったことを思い出していた。
―そろそろ、今野さんと話さなきゃな。
家に帰ったらメールを打とう、そう決意した俺。
誰も見ていないことを確認してから、さっきみたいに左こぶしをぐっ!とやってみた。
そして誰も見ていなかったことを確認し―たわけではなかった。
サエが隣でニヤニヤしている。
そして俺が今やったように、左こぶしをぐっ!とやった。
…あ、オーラ消えてる。
彼女の笑顔はいつものだった。そう、俺が惚れたいつもの。
そしてその日中、事あるごとにサエにぐっ!とやるのを見せ付けられて、なんだか恥ずかしくなった俺がいたのは別の話。
感想お待ちしております。
キャラ説明みたいなやつも作って投稿したほうがいいですかね?