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第二八話

久しぶりの真壁冴子視点です。

二七話のサエver. とでも言いましょうか。

―勉強合宿当日。

バス内ではカードゲームなど、勉強とは無縁のことをやっている生徒がほとんどなので、とってもにぎやか。

「真理っち、覚悟しなさ〜い!」

ババ抜き最終決戦、残っているのは私と真理っち。

真理っちはカードを2枚持っていて、どっちかは私のカードと数字が同じだがどっちかはジョーカー。

「右だっ!」

そう言って勢いよく真理っちの手からとったカードは…まさかのジョーカー。

「うそっ!?」

「へへ〜ん、見たか〜!」

誇らしげな顔をする真理っち。

真理っちにはカードゲームというカードゲームで勝った覚えがないのだ。

今回は勝てると思ったのに…

「くやし〜!」

「おいおいお二人さん、早くしてくれないかな。俺が終わってからもう5分も経ってるじゃねぇか。」

そんな私たちをよそに、一抜けした緑君が言う。

その隣では、発車のときから変わらない体勢でケンが窓の外をボーっと眺めている。

月曜日からこんな調子だ。

最後に会った土曜日は何ともなかったのに…

土曜日の夜か日曜日に何かがあって悩んでいるのだろう、と私はにらんでいる。

だけど、なんだか『どうしたの?』って聞きづらい。

「よーし、冴っち覚悟〜!」

真理っちの言葉で我に返り、視線を緑君と話し始めたケンから戻す。

「とりゃっ!…やったー!私の勝ちっ!」

「えぇぇぇーっ!?」

手元のカードを裏返すと、不敵に微笑む悪魔の姿。つまり、ジョーカー。

うっ、何か未来を暗示されているようで嫌だな…

「ふー、やっと終わったか。じゃあ第14回戦いくぞ。」

私と真理っちからカードを取り、シャッフルする緑君。

ふとケンを見ると、また窓の外を見てボーっとしている。

じーっと見ていると、ケンが私の視線に気づいたのか、

「なんか用か?」

と聞いてきた。

『悩み事なら相談に乗ってあげるよ!』と言うのもなんだか恥ずかしくて、

「べ、別に…」ケンから視線をはずしてこたえる。

「なら、そっとしておいてくれ。」

と随分無愛想に私をあしらい、窓の外を再び見るケン。

なっ、何よ、人が心配してあげているっていうのに…

「むぅ…」

なんだかいつものケンと違う。だとしたら、随分深刻な悩みなのかな…?

私に相談してくれてもいいのに…

このとき、真理っちがそんな私の姿を見ていたなんて、知る由もなかった。

そしてサービスエリアに着いたとき。

「ちょっとお手洗い行って来るね。」真理っちが席を立つ。

すると、後ろから「ちょっと外の空気吸ってくるわ。」とケンの声が聞こえた。

ケンがバスを降りたことを確認して、緑君にケンの異変について聞いてみる。

「ねぇ、なんだかケン、変じゃない?」

「だよなぁ。俺もそう思うんだけど…なんか心当たりあるのか?」

首を横に振る。

「そうか…俺も全くないんだけど…」

「雰囲気がいつもと違うんだよね。」

う〜ん、と緑君は唸ってから、「よし!」と声を出した。

「俺が合宿中にどうにかしてみるよ。」

やっぱり今は、緑君に任せよう。気になるけど、私じゃなんだか聞きにくいし。

真理っちが戻ってくるのが見え、私たちは話すのをやめた。







あぁ〜っ、集中できないっ!ケンのことが頭に浮かんできちゃうっ!

「う〜…」

ここは静かな自習室。小声で呟きながら、壁の時計を見る。

あと少しで終わりかぁ。それまで集中しよう!よしっ!

………

……

…ケン、何で悩んでいるんだろう…

って、またケンのこと考えちゃってんじゃん!

この際だから参考書を眺めているふりをして、それについて考えることにしよっと。

う〜ん…

やっぱり、私と会っていない1日半の間になにかがあって、それであんなに変になっているんだと思う。

まさか…ケンに好きな人とか…!?

うぅ…

私がケンのこと見てるって気づいてくれたっていいのに、ケンは私以外の人を見てるっていうのかな…?

斜め前のケンを見ると、黙々と勉強している。私の視線にも気づかずに。

ねぇケン、あなたは何を考えているの?






「よーし、消灯!早く寝ろよ〜!」

廊下から先生の声が聞こえる。

足音が遠ざかっていくのを確認して、真理っちが「では、お話大会開催〜!」と宣言。

女の子の夜は長いのだ。

そして女の子の夜といえば、もちろん恋バナ。

「ねぇねぇ坂上さん、緑とは最近どうなのよ?」と誰かが口火をきったらそれが合図。

「朋樹〜?まぁまぁだよ?」

そういう真理っちの顔はすんごい嬉しそうで。

そんな笑顔がうらやましくて。

「あ〜、オノロケ〜?」

「うらやまし〜。私も彼氏欲しいな〜。」

皆がこの部屋唯一の彼氏持ち・真理っちをうらやましそうに見ているのだろう。

前まではそうは思わなかったが、ケンのことが好きとなった今は私もその一人。

だけど、ケンは私を見てないんだろうな…

「え、じゃあ誰がタイプというか、好きなの?」

真理っちが逆に聞き返す。

「え〜、例えば…副島君とか?」

その言葉にビクッと反応してしまう。幸い、暗いこともあり誰にも気づかれてないようだけど。

「あ〜分かる!副島君かっこいいもんね〜!」

「あのクールさがいいわよね〜!」

ケンは他の女の子からも人気があって、この盛り上がりようがそれを物語っている。

だけどその盛り上がりは、幼馴染の私から見るとなんだか切ない。

「ねぇねぇ、真壁さんは副島君の好きな人とかタイプとか聞かないの?」

「えっ、私が?」

きゅ、急に聞かれるとビックリするでしょ!

…ケンの好きな人?タイプ?

全く知らない。ケンのことを一番知っているであろう幼馴染の私が知らないのだ。

ケンはちょくちょく告白されるらしいが、今まで彼女を作ったという話も聞かない。

「う〜ん、全然そんなこと聞かないなぁ…私にもそんな話をしないもん。」

「ふ〜ん。でも誰なんだろうね、副島君の好きなタイプって。」

「ホント〜!気になる〜!」

ケンについての話は最高潮に達し、皆はワイワイキャッキャと楽しそう。

だけど私はそんな話を聞いていると胸が痛くなる。

この話中はなるべく笑顔でいようと努めているけど、その笑顔は作り笑いだってことぐらい自分でも分かる。

「ちょっと疲れたから先に寝ちゃうね。」

皆に私の心が破裂しそうなことを隠すために布団に顔をうずめる。


何故だろう、涙があふれてきて…


次から次へと涙がこぼれ落ちてきて…






次に私が気づいたときは、全員寝息を立てていた。

時計を見ると12時15分。

泣いていたら、自然に寝ちゃったのだろう。

私は大きな音を立てないようにそっと起き上がって部屋を抜け出す。

今はそんな気分なのだ。一人で、ゆっくり考えたい気分なのだ。

誰もいない廊下を抜けてロビーに出ると、やっぱり誰もいない。

靴を履いて外に出てみると、満天の星空が私の視界に飛び込んでくる。

…綺麗。

そういえば、誕生日の日も、こんな綺麗な星空だったかも…

星空を見ているとそこにケンの顔が浮かんできそうで。

それが今はなんだか怖くて、私はすぐ下を向いてロビーに戻った。

「冴っち。」

ロビーに戻ると、ソファーに真理っちが座っていた。

「真理っち?なんでここに?」

「ん、誰かが部屋を抜け出すのに気づいたからね、ついてきたんだ。」

そっか〜、と相槌を打ちながら隣に座る。

「…さっきは辛かっただろうね。」

「な、何が?」

真理っちが唐突に口を開く。そして内容が何のことだか分からない。

「アレよ、副島の話。」

うっ…

真理っちにはバッチリ見抜かれていた…

「べ、別に辛くなんて…「バスの中でも、難しい顔して副島のこと見てたよ?」

「あ、あれは…」

「あれは?副島がいつものようにお喋りしてくれないから?」

どうやら真理っちは私のことをすべて知っている、と思えてきた。

「…そうかも。」

ふ〜ん、とニヤニヤしながら私のことを見てくる真理っち。

「な、何よ…?」

「そろそろ認めちゃいなよ?ウン、絶対そのほうがいいって。秘密にしておくから。」

「何のこと…?」

青白い月明かりが窓を通って真理っちを照らす。

真理っちはニコッと笑って、こういった。


「だ〜か〜ら〜、副島のこと好きなんでしょ?冴っち。」


「ち、ちち、違うよ!」

慌てて否定する私。きっと、すんごい真っ赤になってるんだろうな。

「そ〜んな真っ赤な顔で言われても、説得力ないぞ?」

うぅ…

やっぱり顔が真っ赤になっていた。

それは真理っちに、私はケンのことが好きってことが知られていたから。

心臓がバクバクしているのが分かる。

「で、ホントのところどうなのよ?」

これ以上、真理っちに隠していてもムダだ。きっと真理っちは確信しているんだろう。

「す、好きだけど…」

ニヤッ、と真理っちが不敵に微笑むのが月明かりで照らされる。

「で、いつからなのよ?」

「う〜…」

ちょっとふて腐れながら、なんだかんだで真理っちの質問に全部答えてしまった。

その間もずっと、心臓はバクバクしたままで。

「つまり、総合すると、冴っちは副島のことが大好きだ、と。なるほどね。」

恥ずかしいけど、それは正解なので何も言い返せない。

ソファーに顔をうずめる。

「で、告白しないの?」

「や、やだぁっ!恥ずかしいっ!それにもし失敗したら…」

正直、告白を考えなかったといったら嘘になる。

だけど、もし告白して『ごめん。』といわれたら、これまでの関係が崩れてしまうのが怖くて。

「…今の関係が崩れるのが怖くて…。」

「そっか。でもやっぱり、いつかはちゃんと伝えたほうがいいよ?例えば…学園祭が終わった後とか。卒業するまでに悔いは残したくないでしょ?」

「うん…。」

そうだよ。卒業するまで、あっという間だ。

いつかは気持ちを伝えたいけど…

「ま、冴っちだったら大丈夫だと思うけどね?」

「なっ、何を根拠に…」

「え〜?冴っちと副島の観察によると、かな?」

「てきと〜なこと言わないでよ〜!」

気づけば私の頬には笑顔が戻っていた。

それと同時に、外から誰かの話し声が聞こえる。

「ねぇ、外に誰かいるみたい…」

真理っちも同じ事を思ったのか。2人で口をつぐんだ。

そして静かに、静かに待っていると…

「朋樹と副島?」

玄関から入ってきたのは、緑君とケンだった。

「真理!」彼女を見つけ緑君が嬉しそうに言う。

なんだかケンの雰囲気がコレまでとは違う。いつもの感じに戻っているみたい。

「あ、ケンも。何してたの?」

ちゃんと答えてくれるかな?そう思いながら聞くと、

「ん、男の友情の再確認。」

緑君と顔を見合わせてケンは答えた。久しぶりに見たケンの笑顔。心が弾む。

「やだ〜。むさ苦しい〜。」

「う、うるせぇ!そういう真理は真壁と何してたんだよ!」

『え、それはねぇ…』真理っちとアイコンタクトを取りながら目で会話。

「「ガールズトーク!」」

ははっ、そっかぁ、と緑君が笑う。

「ま、そろそろ寝るか。」

「そうだな。」

緑君の言葉にケンが賛成する。それを聞いて、

「冴っち、私たちももどろうか?」

「そーだね。」

私たちもそうすることにした。

男子の部屋と女子の部屋は右側と左側の廊下と分かれているので、違う方向に歩き出す。

「サエ!」

不意にケンに呼び止められた。いつもの声で。

「ん、何?」

ちょっとドキッとしながら答える。

「えっと、その…」

なんだかモジモジしているケン。

何を考えているんだろう?

だけど、次の言葉が私にとってはとっても嬉しくて。


「おやすみ。」


「うん、おやすみ!」

ケンの微笑を見て、私も自然に笑顔になっていた。

作り笑いなんかじゃなくて、心からの笑顔に。

高鳴る胸を押さえながら後ろを向くと、真理っちがニヤニヤしながら待っていた。

「よかったじゃ〜ん、冴っち〜?」

「うん!」

もうこの気持ちに偽りはない。

やっぱり私、ケンが好きだ。

結構急いで書いたので何かちょっとアレですね…


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