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第二七話

勉強合宿編その一。副島健人視点です。

―勉強合宿当日。

勉強合宿はバスで山の中の施設へ移動し、そこにこもってやるらしい。

ということで今はバスで移動中。

これから勉強に行くというのにもかかわらず、バスの中はトランプやウノなどで遊ぶ生徒がほとんど。

それ故周りのテンションは高かった。

が…

「はぁぁぁぁぁ…」

「おいおい副島、なんだかテンションががた落ちだな。」

サエ、坂上とトランプをしている緑が俺に話しかけてくる。

ちなみに席は窓側で緑の隣、前にはサエでその隣は坂上だ。

「あぁ。ちょっとそっとしておいてくれ。」

そういって窓の外に目をやる俺。

高速にのったのだろうか、車しか見えない。

はぁぁぁぁぁ…

この前の夏祭りのことを思い出すとこうなってしまうのだ。

俺はどうなっているんだろう?

なんでサエの顔が浮かんできたんだろう?

そして更に、彩さんの背中に両手を回したのには罪悪感を感じる。

あのサエの悲しそうな顔が頭に浮かんだのに、突発的にそうしてしまったのだ。

『ありがとうございました。それじゃ…』目をとじれば思い出す、閉まる電車のドア越しに見えた彼女の微笑み。

俺は電車が行った後もその場で立ちすくむことしかできなかった。

そう、立ちすくむことしか。

彼女のことが好きなのか?

ならなんで、サエの顔が浮かんできたんだ?

好きでもないのに抱きしめるなんて、俺は最低じゃないか。

深いため息をつく。

隣を見れば、緑が楽しそうに坂上とおしゃべり。

ふと前の方を見るとサエがじーっと俺を見ていたが、顔を背けてしまった。

「なんか用か?」

「べ、別に…」

向こうを向きながらも答えるサエ。

「なら、そっとしておいてくれ。」

そういい残し再び窓の外を見る。変わらない風景。俺の心もさっきから変わっていない。

ふぅ…

ため息をつくのはこれで何回目だろうか。

家で単語帳を見てても問題集を解いていても頭の中を支配しているのはそのことばかり。

考えてもしょうがない。寝よう。

そう決めた俺は目を閉じ、何も考えないことにした。




集中して勉強してると時の流れははやいもので。

「よーし、2日目終わりだ。後半分だ、気合い入れて頑張れよ!」

午後十時になり自習をしていた俺らに担任が話しかける。

この勉強合宿はひたすら勉強。朝は八時半から十二時半まで、昼食休憩を挟み二時から七時まで、夕食休憩を挟み八時半から十時までが勉強時間として割り当てられている。

俺は例のことを考えないために、今も必死で勉強している。

「副島っ!」

「は、はい!」

「もうみんな風呂行ったぞ。おまえも早く行け。」

「あ、すみません…」

周りを見ると俺と担任しかいない。

あわてて英語の問題集をしまい部屋から出ようとすると、

「副島、この合宿集中しているな。頑張れよ。」

と担任からお褒めの言葉をいただいた。

がむしゃらにやっていたからか、周りからはそう見えたみたいだ。

礼を言いながら風呂場へ向かい、皆と風呂にはいる。

「あ〜、辛いぜ〜…」

湯船につかりながら緑が愚痴をこぼす。

「全くだよな。こんな勉強したのいつぶりだよ。」

「でも、副島は俺から見てもすんごい熱心にやってるな。」そりゃそうだ。

あのことを考えたくないから、忘れたいから。

俺は適当に返事をし、

「先にあがるぞ」と湯船から出る。

窓からは夜の河原が見えた。

…一人で、行ってみるかな。

そう決めた俺は脱衣所へと行った。緑が俺をじっと見ていたとは知らずに。






部屋は男子6人。

それなりに広く、布団も余裕を持って並べられる。

11時の消灯後、ほかの奴らは疲れからかすぐに寝てしまった。

念のため一時間じっとしていたが、誰もピクリとも動かない。

先生も寝てるだろう、そう考えた俺は布団からもぞもぞと出て部屋を後にする。

靴を履き、一人で外に出るとそこは夜の夏だった。

昼とはうって変わって静かであり、時折ひんやりとした風が吹いてくる。

風呂の時に見た河原の方へ向かい、芝生の斜面に寝転がる。

…星が綺麗だ。

そういや、サエの誕生日の時もこんな星だったかもな。

見とれていると、急に声をかけられた。

「誰〜だ?」

目の前が真っ暗になる。

「緑だろ。そんな気持ち悪い高音の声だして…サエの真似か?」

「いや、誰も真壁とは言っていない。」緑は俺の隣に寝転がる。

「…なんでここに来たんだよ。」

「そりゃ決まってるだろ。お前が部屋出るのに気づいたからついてきただけだ。」

屈託のない笑顔でそう言われると、何も言い返せない。

「それに、昨日から気難しい顔してるやつは何かあったなってふつう思うだろ。」

…バレていた。

なるべく普通に振る舞っていたつもりなのに。

「真壁も俺に言ってきたぞ。ケンが変だ、ってね。」

サエが?

サエにも気づかれていたのか。きっとサエは、日曜日に何かあったのだろうとまで考えているだろう。

「なぁ、何かあるなら相談しろよ。」

俺は無言のまま。どうすればいいか分からないのだ。

「俺は、お前の親友だろ?」

そうだった。

親友を信頼しない馬鹿がどこにいるんだ。

緑は普段なかなかおちゃらけているが、こういうときは真剣になるのを知っている。

「あぁ。親友よ、実は…」

俺は信頼して、日曜日のことを何もかも話した。

出来事も、心情も、今悩んでいることも。

すべて話し終えると、緑はすぐに口を開いた。

「そりゃ、恋だ。」「恋?誰が誰に?」

思わず上体を起こしてしまった。

「お前が。誰に、かは言わないでおこうか。」

恋?

俺が?

俺はこれまで、異性を好きになるということが無かった。

サエは好きだが、それは幼なじみとしてのだ。と思う。

だからもちろん、恋なんて経験ない。

「俺が誰に?」

「じゃあヒントやるよ。相手は、今野さんじゃない。」

彩さんじゃない?

としたら誰なんだよ?

「なら俺が今野さん狙っても大丈夫だな。」

「てめぇ、坂上に言うぞ。」

「じょ、冗談だって!」

あたふたとあわてる緑を横目に、星空を見上げながら考える。

誰かに恋してる、だって?

この俺が?

少し考えてみた。

が、明確な答えは分からない。

そのかわり…

「何か分かったか?」

「あぁ。サエは大事な存在だってこと。」

が分かった。

これは恋じゃないと思う。

が、俺の中でサエは大事な存在だ。

俺の答えを聞くと、緑は満足そうに、

「それが分かればいいよ。じゃ、戻るか。」

そういって立ち上がった。

俺も後を追う。

帰りは他愛もない話で盛り上がりながら歩いた。

玄関の近くまでくると、中から話し声が聞こえる。不意に口をつぐむ俺ら。

「ヤバいな、先公だったらマズいぞ。」

緑がつぶやく。

気づけば向こうも静かになっていた。

「緑、覚悟を決めて行くか。」

「そうだな。男にはやらなきゃいけないときがある。」

謎のせりふを残し緑は突撃。

俺も続く。

すると、ソファーに座っていたのは…

「朋樹と副島?」

「真理!」緑がうれしそうに言う。坂上だった。隣にはサエもいる。

「あ、ケンも。何してたの?」

微笑みながら聞いてくるサエ。

「ん、男の友情の再確認。」

サエの質問に緑と顔を見合わせながら答える。

「やだ〜。むさ苦しい〜。」

「う、うるせぇ!そういう真理は真壁と何してたんだよ!」

坂上、むさ苦しいとは何事だ。そんな俺の気持ちを代弁してくれた緑が聞くと、サエと坂上は顔を見合わせて、

「「ガールズトーク!」」と答えた。

なんだそりゃ?

「ま、そろそろ寝るか。」

「そうだな。」

緑に同調する。

「冴っち、私たちももどろうか?」

「そーだね。」

じゃ、と俺らは軽く挨拶を交わし、男子は男子部屋がある右側、女子は左側へと別れる。先を歩く緑に付いていく俺。

不意に後ろを向くと、坂上に付いていくサエが目に入った。

「サエ!」

思わず口に出してしまう。

サエはこっちを不思議そうに振り返る。

「ん、何?」

やべ、呼んだはいいが、何言うんだよ。

「えっと、その…」

言葉に詰まっている間もサエは俺を不思議そうに見ている。

「おやすみ。」

思いついた言葉を口に出した。顔は自然に笑顔。

サエは一瞬キョトンとしたが、すぐに太陽のような笑顔で

「うん、おやすみ!」

そう言ってくれた。

それだけで何か嬉しい、幸せだ。

布団に再びもぐり目を閉じたとき浮かんできたのは、あのサエの笑顔だった。

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