第二四話
なかなか更新ペースが上がりません…
が、これから頑張ってあげていきます。
副島健人視点 です。
夏真っ盛りの1学期終業式。
「よし、じゃあこれから夏休みなわけだが、君たちは受験生だ。長い休みだからといってダラダラしていると本番に間に合わないぞ!夏の間に弱点はしっかり補強しとけよ!」
この暑い中、担任が汗をかきながら声を張って言う。
「では今から成績表を返す!名前順に取りに来い!」
クラス中がうわぁ〜、という雰囲気になる。
成績がいいやつはいいが、悪いやつにとっては地獄だ。
さっきまで全員が席に座って静まっていた教室も、成績表を見せ合ったりしているのでザワザワしている。
「副島〜!」
自分の名前が呼ばれたことに気づき、教卓へと歩んでいく。茨の道でしかない。
担任は俺が横に来たことに気づくと、無言で成績表を差し出してきた。
せめて何か、一言でも言ってくれ…
そう思いながら席に戻り、成績表を見る。
「う〜ん、もうちょっと頑張んなきゃね〜…」
「そうだな〜…ってうわぁっ!」
気づくと後ろからサエが覗き込んでいた。
「なななな、なんで人の成績表見てんだよっ!」
「い〜じゃん〜!」
プゥッと頬を膨らまし、「むぅ」とうなるサエ。
そんな可愛らしいサエの姿に見とれてしまう。
「真壁〜!」
「あ、呼ばれたから行ってくるね!」
「…お、おぅ!」
その声で我に戻る。
しかし、サエの甘い匂いをすぐに俺は感じる。
これまでも毎日、同じ感じだったのに、どうして今更サエの甘い匂いにドキドキしているのだろう?
はぁ…
最近、俺は変かもしれない。
うちの高校は期末テストの返却日から終業式まで数日何もない日があり、そんな日はサエの家に行ってサエに勉強を教えてもらっていた。
いつからだろうか、急に俺はドキドキし始めたのだ。
勉強を教えてもらうことで近づく、俺とサエとの距離に。
そんな些細なことにドキドキし始めると、サエに関するすべてのことにドキドキしてしまう始末。
俺らしくないなぁ…
「そうだよ、副島らしくないよ。」
「そうだよなぁ…って!」
今度は前から緑がそんなことを言ってきた。
「『俺らしくないなぁ…』だって。副島がそんなこというのは副島らしくないなぁ、と思って。」
あぁよかった。また気づかぬうちに声に出していたみたいだが、声に出してたのがそれだけだったみたいで。
「うん、なんか最近ね…」
「そうか…ま、困ったことがあったら、俺に相談しろよ!俺たちは『親友』だろ?」
「…あぁ。」
やはり持つべきものは『親友』。
緑は、頼りになる。
所変わって実行委員会室。
「え〜と、これから夏休みになるわけだけど、2学期が始まったら学園祭はあっという間です。だから、夏休みもサボることなく、各自で仕事してください。基本は各班ごとの行動となるけど、2週間に1回は全体の集まりもあるから忘れないでね。」
う〜ん、委員長のお話みたいな感じでやれっていわれてやったけど、担任みたいにスラスラとは話せないなぁ…
締め方がわかんなくて隣にいるサエを見る。
「じゃあ、今日はこれで解散!各自夏休み中もサボんないでね!」
は〜い、という声とともに部屋を出て行く委員たち。
皆が出たのを見届けると、サエは俺のほうを向いて一言。
「さっ、帰って勉強するわよ!」
「え〜、今日ぐらいいいじゃん〜…」
「ダメっ!サボると受かんなくなるわよ!」
「ちぇ〜…」
まだ文句を言い足りない俺。
だけどサエはそんな俺の手を強引にとり、廊下へと歩き出す。
こんなときも、俺はサエの手のぬくもりを必要以上に感じてしまう。
前までは、同じようなことがあっても全然気にしなかったのに、何なんだ?
何の躊躇いもなく照りつける太陽の日差しとは反対に、俺の心はもやもやしたまんまだった。
「…ってこと。分かったわね?じゃあ、ここからここまでやりなさい。終わったら私に言って。」
「へ〜い…」
結局、サエのスパルタ勉強でそんなもやもやについて考える暇なんてなかったんだけど。
感想お待ちしております。