第二二話
再び更新が遅れてしまい、申し訳ありません。
更新間隔があくことはしばしばあるとは思いますが、この小説の途中終了は全く考えていません。
最後まで完結させますので、どうか最後までお付き合いください。
副島健人視点 です。
「サエ〜、来たぞ〜。早くしろ〜。」
『あと3分!ちょっと待ってて!』
インターホンから聞こえてきたサエの元気な声。
俺が思わず微笑んでいるのはこの声を聞いたからなのか、それとも今日が快晴だからなのか?
…まぁいいや。
この前、なぜだか知らないがサエが怒っていたとき、俺がお詫びに何でもするといったら
『遊園地に行きたい』といったので今から行くところなのだ。
で、俺はサエの家の前で待ってるってわけ。
余談だが、小さいころに俺とサエが喧嘩すると、最終的に頭を下げているのは8割方俺。
ウン、なぜだか知らないが。
絶対俺が悪くない、と言い切れるときも気づけば俺が頭を下げてたりする。
だから今回も『何でもする』というのはちょっと言うのをためらった。
何かひどいこと言われそうで…
たとえば、『Do Get There』を命じられたりとか…
でも今回は遊園地でよかった。
そんなくだらないことを考えていると、玄関のドアが開く音がした。
「ごめん!準備に手間取っちゃって!」
カッカッカッ、と階段を降りてきて俺がいるインターホンのところまでサエは歩いてきた。
「よっ。準備に手間取っただけあるじゃん。」
「むぅ、どういうこと?」
「準備に手間取っただけ、似合ってるぞ。」
サエの姿にちょっと照れながら言う。恥ずかしいんだけどね。
「〜〜〜〜〜〜〜っ!」
サエは顔を真っ赤にしながら声にならない声を出して先へ先へと歩き出す。
また怒った…?コレはマズイ。
「ちょ、ちょっと待って〜…」
だけども、そういいながら追いかける俺は、気づいたら微笑んでた。
どうやらこの微笑みは天気のせいじゃなさそうだ。
電車に揺られること約一時間。
その間にサエの機嫌も直り、俺らは遊園地がある駅に着いた。
駅から徒歩10分ぐらいのところにあるみたいで、駅出口からもその全貌が見える。
「というか、これって遊園地じゃなくてテーマパークだな。」
「え?テーマパーク?」
「そうだ。テーマパークと遊園地の定義は厳密に見ると違うんだぞ。そもそもテーマパークというのはな、…」
「はいはい、ウィキペ○ィアで身に着けたような付け焼き刃の知識は結構です〜。」
と軽くあしらわれた。
しかもウィキペ○ィアまであたってるとは…ちょっとショック。
そんなことを言いながら歩いていると、テーマパーク(意地でもこっちで通させてもらう)の入り口に着いた。
入場券を買い入り口をくぐると、これぞテーマパーク、というような感じのものが視界に飛び込んできた。
べ、別に東京ディ○ニーランドに来たわけではないからな!
そして飛び込んできたのがもう一つ。
「うわぁ、人すごいなぁ…」
人、人、人。
今日が休日でそれなりに人気があるテーマパークだからなのか。
アトラクションに並んでいる人も多い。
「で、サエ、この人の中、どこ行く?」
そう言って右を見ると、人ごみなど関係なしにパンフレットをじーっと見ているサエがいた。
「お〜い…?」
サエは目を輝かせながら顔を上げる。
「よしっ!まずはここのアトラクションに行くわよ!」
そういってサエは俺の手を取り、ずんずんと歩き出す。
元気だなぁ、そう思っているとすぐに一つ目のアトラクションについた。
このアトラクションは、俗に言うジェットコースターというやつ。
結構スリルがあって、人気があるらしい。
その証拠にも、アトラクションの順番待ちには列、列、れつ、レツ、RETSU、列。
要するにすんごい並んでるってわけだ。
「なぁサエ、ここ凄い並んでないか…?」
「もちろん!超人気アトラクションなんだからっ!」
目を輝かせていうサエに何も言い返せない。
…ていうか、サエは『お詫び』とかじゃなくて、素でここに来たかったんだろうなぁ…
サエの笑顔に負けて、俺はこの列に並び続ける覚悟を決めた。
「ふぁ〜、コレも楽しかったわね〜っ!」
アトラクションの建物から出てきてサエが言った。
あのむちゃくちゃ並んだジェットコースターの後は、思ったよりも並ばずにすいすいいろんなのに乗れたのだ。
「あぁ。すんごい久しぶりにここ来たけどやっぱり楽しいな。」
そういって時計を見ると、既に2時を過ぎている。
時間を忘れて楽しんでいたようだ。
「う〜ん、なんだか小腹が空いたような…」
「私も…」
と2人で言いながら周りを見ると、何か食べ物を売っている屋台みたいなのがあった。
「お、あそこで何か買ってくるわ。ベンチに座って待ってて。」
俺はそういってその屋台に行く。
数分後、飲み物や食べ物などを両手に抱えて戻ると、サエと3人の高校生らしき男が絡んでいた。ナンパか?
「ねぇ、俺らとどっか行かない?」
「おことわりね。」
「そんなこと言わないで〜。」
「嫌だって言ってるでしょ!」
「まぁまぁ、でも俺は気の強い女の子も好きだよ〜?」
といって男のうちの一人がサエの手を強引につかむ。
と同時に、気づくと俺は「おい。」と言葉を発していた。それも自然に。
男たちは驚いたのか、ビクッとしてこっちを見る。
まぁ、自分でも何でいったんだろう、って驚いているんだけどね。
「何やってんの?」と聞くと、
「あぁ?お前には関係ねぇだろ?」だって。
すんごい喧嘩腰だなぁ…めんどくさ。
「いやぁ、そういう訳にもいかないんだよね。」
「そうよ。私はこの人を待ってたの。」
サエがベンチから立ち上がり、俺の腕をつかむ。
「っていうわけ。」
と結構分かりやすく説明したつもりだが、何か相手がキレた。
「おい、いい気になってんじゃねぇぞ?」
サエに飲み物や食べ物を渡していた俺は相手の顔を見る。
あれ…?
こいつら…?
………
……
…
「あっ、思い出した!」
「何がだよ!」
「お前ら、○○高校のサッカー部の高3だろ。」
この前、俺らの学校と1回戦で当たって、俺らが確か3−1で勝ったときの相手の高校の名前を言う。
こいつら、DFで見た!ウン、絶対そうだ!
「なっ…」
相手はそれで意表をつかれたのか、動揺する。
「で確か、1回戦でお前らのとこ負けたんだよな。俺のチームに。」
「うっ…」
「お前は確かセンターバック。その隣のヤツも多分同じ。その隣のヤツは…ボランチだったかな?」
「うっ…」
おおっ、俺の記憶力すごっ。どうやら当たってるみたいだ。
自分に感動する。
「確か俺、お前らを抜いてゴール決めたような気が…」
そこまで言って前を見ると、3人組はどっかへ走り去っていった。
「あ、おい!…せっかく俺の記憶力を披露しようと思ったのに…」
残念がっていると、サエが声をかけてきた。
「あの、その…ありがと。」
「ん?あぁ、大した事してないしな。」
「それもあるけど、手を握られたときに『おい。』って言ってくれたこととか…」
あのシーンを俺は思い返す。
あの時は、頭より体が先に反応していたというか、反射的にというか、そんな感じだった。
何でだろう?
「あぁ、あれか…考えるよりに先に言ってた、ってことだな。」
そして俺は隣にいるサエを見る。
「っとまぁ、この話はこれで終わりにして、早速食べようか!」
「うん!」
あ、分かった。
さっき反射的に『おい。』っていった理由。
きっと、このサエの笑顔を守りたかったんだろう。
と自分で納得した俺は、買ってきたジュースを一気に飲む。
「今日は楽しかったっ!」
駅を出て家へと歩く途中、サエがそういった。
空は夏にもかかわらず暗い。それだけ遅くまで、俺はサエとあのテーマパークにいたのだ。
「良かった。サエがそう思ってくれて。」
サエの横顔を見ながら、心からそう思う。
「それに、俺もサエと一緒で、すんごい楽しかったしな。」
「な、何からかってるのよ!」
「からかってなんていないって!ホントに!」
「…わ、私もケンと一緒で、楽しかったわよ。」
サエは恥ずかしそうに俺の反対側を向きながらそういった。
「そうか。それは良かった。」
「むぅ…」
何が不満なのか、可愛い顔してこっちをにらんでくる。
俺もじーっとサエを見る。
じーーーーー…
じーーー…
じー…
…
「「何だ(何なのよ)、コレは?」」
ハモってしまった。
顔を見合わせながら笑いあう俺ら。
こんな日々が、こんな関係が、いつまでも続けばいいかな、と願っていた。
その想いが揺れることになるとは全く思わずに。
キャラクター紹介でも、そろそろやりますかね…?
ご意見ご感想お待ちしております。