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第二話

副島健人視点 です。

俺は部屋を飛び出す。

が、すぐに手にカバンを持っていないことに気づき、部屋へと戻った。

今日の朝も騒がしい。

これが俺らしいといえばそうなんだけどね。

「ケン、急いで!」

下からあいつの声が聞こえる。

俺はいろいろとだらしない自分に苦笑しながらその声に答える。

「あぁ、今行く!」


俺は副島健人(そえじまけんと)。この春で高3になった。

1年もしないうちに大学入試とかだけど、今の俺はそんな勉強よりもサッカーが大事だ。

今度、俺の高校生活最後の大会が開幕する。

チーム一丸となってそれに向け、今は猛練習中だ。

言い訳する気はまったく無いが、昨日も練習で結構遅くに帰ってきた。

…ってサエに言っても、「だから?」とか言われると思う。


そしてさっき、俺を起こしに来たのが真壁冴子(まかべさえこ)。同じく高3。

俺とサエは俗に言う「幼馴染」っていうやつで、家も歩いて5分圏内。

小学校から高校まで、違うクラスになったことは何故か一度も無い。

そのせいもあるのか、俺らはかなり仲がいい。

ちなみにサエは、幼馴染の俺から見ても美人で、男子生徒に声をかけられているのを何回か見たことがある。

彼氏の1人や2人いてもおかしくないはずだが、いない。

何で分かるかって?

幼馴染の勘、とでも言っておこうか。

そしてここで断っておくが、俺とサエは恋人同士とかではない。絶対に。

非常に仲が良いのは認めるが、俺らの関係はただの「幼馴染」だ。

高校に入学したとき、多くのクラスメイトに「お前らは恋人なのか!?」と聞かれたのは言うまでも無い。

というか、いまだに聞いてくるやつもいるんだけどね。


「待たせたな、サエ!」

俺がリビングに行くと、サエはソファーに座って待っていた。

「あら健人、おはよう。冴子ちゃんが待ってるんだから急ぎなさいよ!」

母親の副島美佐子(そえじまみさこ)がキッチンから俺に声をかける。

「分かってるって!」

テーブルの上にあったパンを口に押し込む。

「お兄ちゃん、レディーを待たせるなんてサイテー。」

「うるさい!お前も早くしないと遅れるぞ!」

のんびりとサエの隣に座りながら中3の妹の副島美穂(そえじまみほ)が憎たらしい口調で俺を責めてくる。

「ざんね〜ん。今日は開校記念日でお休みなんだよね〜。」

「マジかよ…」

何で中学は休みで高校は休みじゃないんだ、という魂の叫びとともにパンを飲み込む。

「っし!サエ、行くぞ!」

「人を待たせておいてよくそんなことが言えるわね…」

「ホント〜…」

うぅ、サエと美穂の視線が痛い…

この状況は俺にとって完全アウェーだ。こんなときは逃げるに限る。

ということで俺はサエの手をつかんで玄関へと走り出した。

「じゃーなー!行ってくる!」

玄関からリビングに向けて叫ぶと、美穂の声が返って来た。

「お似合いカップル、行ってらっしゃい!」

「ちょ、ちょっ…!」

サエが何かを言おうとしたが、俺は強引に手を引っ張って外に出た。

自転車のロックをはずし、「行くぞ?」とサエのほうを見ると、何故かサエの顔が赤かった。

廊下を走ってきたからか?

「ん、どうしたんだ?赤くなって。」

「べ、別になんでもないわよっ!それよりほら、早く行かないと…!」

「あぁぁぁ〜っ!すっかり忘れてたぁっ!」

サエが後ろに乗ったのを確認すると、俺はペダルを思いっきり踏む。

自転車のスピードが上がるにつれ、俺にしがみついているサエの腕の力が比例するかのように強くなる。

こんなシチュエーション悪くないな、なんて思っていると遠くに校門が見えた。

しかし、そこには門を閉めようとする先生の姿がうっすらと認められる。

「ケン、見て!」

サエも気づいたようだ。

「よし、ラストスパートだ!しっかりつかまってろよ!」

そういうと俺は自転車のペダルを思いっきり、思いっきり踏んだ。

俺とサエをつつんでいる風を感じながら。

次の回で、学園祭の話が出てきます。

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