第十六話
副島健人視点 です。
「えっ、サエの誕生日!?」
「やっぱり〜。副島君知らなかったでしょ〜!」
「わ、忘れてただけだって…」
というわけで冷や汗タラタラの俺。
教室で緑と他愛もない話をしていたところ、そこに坂上がやってきて俺にそういった。
「で、いつだか分かる?」
「確か…2週間後の日曜日だったっけ…」
「そうよ!」
幼馴染の誕生日を忘れるわけにはいかないなぁ、と思う。
最初忘れていたのは、とりあえず流してくれ。
「んで?サエの誕生日がどうしたの?」
「だぁかぁらぁ…」
坂上はもったいぶって俺に話す。
「ちゃんとアンタからもプレゼントあげなさいよ?」
「あ、あぁ…」
俺は小学校1年のときから、サエに誕生日プレゼントを毎年あげている。
それもホントにちょっとしたものだが。
サエはいつも喜んでくれているので、渡す甲斐もあるというものだ。
しかしいつも悩むのがプレゼント選び。
年頃の女の子はどういうのが好きなのかまったく分からない。
仮に分かったとしても、男一人で女の子専門店行っても変な目で見られるのがオチだろう。
「なぁ坂上。」
「ん?」
「緑と一緒でいいから、俺のプレゼント選びに付き合ってくんない?」
「え〜っと、サエの誕生日まで、あいてる日が無いのよね。」
頼みの綱が…
机に突っ伏す俺に、緑が「ま、まぁ何とかなるって!」と声をかける。
そして緑と坂上はどっかへ行ってしまった。
それにしても、どうするかなぁ…
こればっかりはサエに聞くわけにもいかないし…
………
……
…
!
俺の頭に名案が思い浮かんだ。
そうだ、今野さんならなんとかしてくれそうだ!
俺は期待を胸に、早速メールを今野さんに送った。
『今度、俺の幼馴染にあげる誕生日プレゼントを選ぶのに、付き合ってくれませんか?』
そして放課後。
部活に行く前のわずかな時間、俺は何気なく携帯を見てみた。
『新着メール1件』
あ、今野さんに送ったんだった。
思い出した俺はなんとかしてくれ!という願望とともにメールを開く。
『もちろんです!私はいつでも大丈夫なので、日時は副島さんが決めていただいでたいじょうぶですよ。』
ふぅ。
これでサエの誕生日プレゼント、なんとかなりそうだな。
適当に買ってあげるよりも、同年代の女の子のアドバイスをもらって買ったほうが何倍もいいだろう。
俺は安心感とともに、グラウンドへ向かった。
「よーし、集合!」
コーチの声で俺ら部員は集まる。
「じゃ、2週間後の日曜に迫った○○高校との試合に向けて、○○高校の試合のビデオを見てもらう。去年もウチは負けてるから、今年こそは絶対勝つぞ!」
「「「はい!」」」
周りの部員は元気よく返事をする。
ただ俺は、ひとつ気になるところがあった。
『2週間後の日曜』。
今日、どこかで聞いた気がするな…
もしや…
サエの誕生日の日?
毎年、サエの誕生日の日は昼ぐらいから夜まで秀、美穂、サエ、俺でパーティーをしていた。
もちろん、親もいるけれど。
ちなみに言っておくが、うちの親とサエの親は仲が非常にいい。
だから家族ぐるみで誕生パーティーとかするのだ。
でも、まさかかぶっちゃうなんて…
熱心なコーチの説明も、今の俺の頭には全然入ってこなかった。
どうしよう…
さっきまでの安心感はどこかへ消え去り、かわりにやってきたのはなんともいえない不安。
画面の中の選手が元気よく動いているのが、なんだか腹立たしかった。
テスト期間中なので、ただでさえ遅い更新速度がさらに遅くなります。