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第十四話

副島健人視点 です。

次の日。

俺は昼休み、学園祭担当の先生に呼ばれた。

毎年、うちの学校は学園祭のポスターを他校にはらせてもらっているらしいのだ。

で、今日の放課後、早速行って挨拶も兼ねてはってこい。 ということだった。

そういえば、うちの学校にも他校の学園祭のポスターはってあるし、そんな感じか…

「先生、俺一人で行くんですか?」

「う〜ん、副委員長の真壁が休みだからな…」

「いや、流石に心細いです。」

「そうか。じゃあ役員の中で、誰か勝手に選んでいいぞ。」


ということで、放課後、俺は緑と電車に乗っている。

目的地の学校へ向かうためだ。

そして結局、パートナーとして俺が指名したのは緑だった。

やはり、俺の親友だけあって、心強い。

だか緑は何かテンションが高かった。

春のあたたかな陽気よりも熱く。

「なぁ副島、ワクワクしないか?」

「なんで?」

「だって、記念すべき訪問1校目が、女子高なんだぜ!」

「はぁ…」

ということで、緑はテンションがいつもより高い。軽く3倍はあるのではないかと思う。

「いや、お前、坂上がいるじゃん…?」

「ま、まぁ、今日ぐらいは…」

途端にテンションが下がる。

「そんなこと言ってると、俺が坂上に言うよ?」

「すいません、副島様…」

ということで緑の異常なテンションもなおった。

その女子高の最寄り駅に着き、女子高へと歩いて向かう。

反対側からは同じ制服を着た女子高生が歩いてくる。

俺はその中を歩くのにためらいを感じた。完全に部外者というか、女子高生の中に男子2人とか、とりあえず変な目で見られないか心配だったからだ。

緑はそんなこと気にもせず、むしろ楽しんでいるかのようだ。

「さぁ副島君、何をビビっているんだい?」

さっきのテンションに戻っている。

「いや、ビビっては無いけど、流石にこれ…」

といって俺は女子高生の流れを見る。

やっぱり、多くの視線が俺らのほうに向いていた。

「…部外者だから変な目で見られるじゃん。」

緑に言うと、

「いや、そんなこと無いぞ?」

といって歩き出してしまった。

こいつ連れてこなきゃよかった。軽く後悔しながら緑の後を追う。

ふと女子高生の話し声に耳を澄ますと、「カッコいい!」とか「どこの高校だろう?」とか聞こえてきた。

カッコいいのは緑で、俺らは普通の共学から来ました〜。

そんなことを思いながら緑の後を歩いていると、校門に着いた。

「なぁ副島、どうやって入るのよ?」

「えーっと、確か…」

昼休みに先生から言われたことを思い出す。

「多分、ここの学園祭の実行委員の人がどっかで待っててくれてるはず…」

「ふ〜ん、そうか。ま、気長に待ってましょう!」

緑は門によっかかって携帯をいじり始めた。その横で不安とともに待つ俺。

そんな俺らの横を、女子高生たちはチラチラ見ながら通り過ぎていく。

で、向こうのほうで「あの人たちカッコいい!」「超イケメン!」とか訳の分かんないことを言っている。

う〜ん、やっぱり俺ら、話題にされていると言うかなんと言うか、居心地が悪い。

と思っていると、どうやら俺に話しかけてきている声が聞こえた。

「あの〜…」

「はい?」

俺は声の方向に振り向く。

見ると、そこにはおとなしそうな女の子が立っていた。

「○○高校の方ですよね?」

「ええ、そこの学園祭の委員長です。」

というと、相手も話が分かったのか、すぐに中に入れてくれた。

「遅くなりました。私、ここの学校の学園祭の委員長をしてます、今野彩(こんのあや)です。よろしくお願いします。」

「あ、副島健人です。こちらこそお願いします。」

俺らは互いに頭を下げる。

どうやら美人だ。ウン。

といってもサエのように活発そうな美人ではなく、おとなしそうな美人。

日本美人というのがしっくりくるだろうか。

「あ、こいつは緑です。」

緑の存在を忘れかけていた。

「よろしくお願いします、緑さん。」

「あ、よ、よろしくお願いします…」

多分、今野さんが美人だったんで、緑の頭の中の回路がショートしたんだろう。

「では、ご案内します。」

「お願いします。」

今野さんの後について歩き出す俺。

数歩進んだところで、いまだショート中の緑を思い出し、急いで引っ張ってきた。

あわててきた緑をクスクスと笑う今野さん。

普通の女子が笑ってたら緑はキレてるところだが、エヘヘと頬が下がりっぱなしの緑。

こりゃ、帰ったら坂上に言わないとな。


校内と学園祭の実行本部を案内してもらったところで、俺はうちの学校の学園祭のポスターを取り出した。

「実は、こちらの学校にこれをはってもらいたくて…」

「ええ、例年そうですよ。私たちのポスターも持っていってくださいね。」

「はいっ!勿論っ!」

緑が口を突っ込んできたので「てめぇはヘラヘラしてろ!」と耳元に囁く。

そんな様子を見てクスクス笑う今野さん。

うん、やっぱり美人だ。別に恋とかしたわけじゃないけど。

俺の視線に気づいたのか、「どうしました?」と聞いてきた。

「いや、今野さん美人だな〜、と思って。」

どうしました と聞かれたのだからそのままの事を答える。

「いや、そんな…」

彼女はポッと顔を赤らめる。

何かまずかったか?しかも初対面なのに…

「おーい副島、ちょっと〜!」

後ろから野郎の声が聞こえたので振り向く。緑が数人の女の子と楽しそうに話していた。

「あ、彼女たちも実行委員ですよ。」

「ホント、あいつは浮かれすぎですよね。」

「副島!は〜や〜く〜!」

なんで俺を呼んでいるのかは不明だ。

俺と今野さんは顔を見合わせて笑い、ゆっくりと緑たちの元へ歩いていった。

窓からは既に夕日が差し込んでいる。


帰るときになって、俺は今野さんに呼び止められた。

「あの…携帯のメールアドレスとか、持ってます?」

「アドレスですか?ありますよ。」

「よかったら交換しませんか?ほら、その、委員長同士、これから何かあったときに連絡がつきやすいですし。」

今野さんはモジモジしながら言う。

「そうですね。じゃあ早速お願いします。」

30秒後には、アドレス帳の『か』行に『今野彩』が追加された。

「今野さんのアドレス届きましたよ。ありがとうございます。」

「いえ、こちらこそありがとうございます…後でメールしますね?」

「ええ、ぜひ。」

といってから緑の存在を思い出し、周りを見ると、やっぱりさっきの女の子たちにつるんでいた。

「ほら、もう帰るぞ。」

「え〜!あと10分〜!!!」

「ということで、今日はありがとうございました。」

「いえ、こちらこそ。」

ガキのように駄々をこねる緑を横目に、今野さんに今日のお礼を言った。

「また何かあったら、よろしくお願いしますね、副島さん。」

「はい。分かりました。」

俺はそういって校門の外へ出る。

やっぱり緑はついてこない。

俺は一回戻り、緑の襟首をつかんで引っ張ってくる。

「副島ぁぁ〜!何するんだ〜!!」

「坂上にばっちり言うぞ?」

「あ、そうだった…」

シュンとなる緑。

もう一度向こうを見ると、今野さんたちが俺らのほうを見ていた。

俺は手を振り、駅に向かって歩き出す。

暖かな風を感じ、夕日を正面にのぞみながら。

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