第十三話
真壁冴子視点 です。
次に私が気づいたのは、自分のベッドの上だった。
あれ?確か、テストの後会議室で仕事して、頭がクラクラして…
そこから覚えてないけど…
今も少し、頭がクラクラする。風邪でもひいてしまったのかな?
気づいてみれば、隣からは話し声が聞こえる。
「すいません。俺がサエの一番近くにいながら、体調が悪そうだって気づけなくて…」
「健人君が謝ること無いのよ。むしろ、冴子を家まで運んできてくれて、こっちがお礼をいうべきなのに…」
ケンとお母さんだ。
え?ケンが私をここまで運んできてくれたの?
そう思うと何だか恥ずかしくなってきた。
音を立てずにもぞもぞっと布団にもぐりこもうとしたところ、それがお母さんに気づかれた。
「あら?サエ、起きたみたいよ?」
「本当ですか!?」
ケンのうれしそうな声が聞こえる。
そんな声だされたら、寝たふりはダメでしょっ。
私は『今起きましたよ、話とか全然聞いてませんよ』感を出しながら上半身を起こした。
「ん、ん〜っ…あれ?ここどこ?」
「サエ!」
ケンは私を見るとベッドのほうに近寄ってきた。
「健人君がね、あんたが学校で倒れたっていうからここまで運んできてくれたんだよ。」
後ろからお母さんの声がする。
「え、そうなの?」
「ホントは保健室に連れてこうと思ったんだけど、緑や坂上が『看病してやれ』っていうから仕事おいといて帰ってきちゃった…」
ケンは恥ずかしそうに、頭をポリポリとかく。
「ケン。」
「ん、なんだ?」
「あの…ありがとね。」
「…おぅ。サエも調子悪かったら、遠慮せずに俺に言えよな?」
「うん…ごめん…」
確かに、皆に迷惑かけちゃいけないと思って、頭痛のことは誰にも話してなかった。
「多分疲れたんでしょ。俺の勉強見てくれて、自分の勉強して、おまけに毎日遅くまで学園祭の仕事だもんな…こっちこそ助けてくれてありがとな、サエ。」
お礼を言われるとは思ってもいなかったので驚く。
「いや、そんなお礼言われるようなことしてないし…」
「ということで、サエが元気になったら、また何か奢ってやるよ?」
ケンは私に笑顔を見せてそういってきた。
「ホント!?ありがと〜!」
「元気になったら、だけどな。じゃあ俺はそろそろ帰るから、今日とか明日とかゆっくり休んで、早く元気になれよ!」
「うん!」
そういうとケンは部屋を出て行った。
ドア越しに、何を話しているか分からないがお母さんとケンの話し声が聞こえる。
私はふたたび布団の中にもぐる。
今感じている、この頬の熱さは風邪をひいたせいなのかな、それとも…
あぁぁっ!こんなこと考えるなんて私らしくない!
頭をブンブンとふって、考えをどこかに吹き飛ばす。
そんなとき、ちょうど襲ってきた睡魔によって、気づけば私は寝ていた。