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第十話

真壁冴子視点 です。

ん…

よく寝た…

まだ眠い目を開けると、天井にはってあるサッカー選手のポスターが目に入った。

あれ?私の部屋、こんなポスター無かった気がする…

そういえば、ここはどこ?

私はそれが気になって、上体を起こした。

部屋の中を見回す。考えてみれば、ほぼ毎朝見ている場所だった。

あぁ、ケンの部屋かぁ。

ケンの部屋!?

え、ということは、私、ここで、寝たの…!?

そう思うと何だか恥ずかしくなってきた。

そんな私に追い討ちをかけるかのように、新たなものが目に入った。

私の右に誰かいる…

向こうを向いているので誰だかわからないし、掛け布団を頭までかぶっているから顔さえ見えない。

でも、順当に考えて…ケン!?

この瞬間、目がパッチリ覚めた。

わ、私、ケ、ケ、ケンと同じ部屋で…ね、寝た…!?

顔が火照ってくのが分かる。

べ、別にそういう関係とかじゃないから!うん!そうだよっ!

理屈を並べて自分を納得させようとしても、所詮は無駄ということが分かる。

というか、私いつから寝てたんだろう…

必死に思い出す。

確か皆でカレー食べて、ソファーに座ってドラマ見て、で…

うん、どうやらそのとき寝ちゃったみたい。

じゃあ何で私はケンのベッドの上にいるの?

美穂ちゃんや秀が運んでくれるとは考えにくいし、私が無意識のうちに起きて移動したわけないし…

と考えると、やっぱりケンが運んでくれたのかな…

やっぱり恥ずかしい。

だって、幼馴染とはいえ男の子と、ケンと一緒のベッドで寝たみたいだから…

うん、でも変なことは無い!無い!無い!

ふと時計を見ると6時。

気づけば、自分の服も昨日の映画のときのまま。

そっか、今日学校あるんだ。

私はそうっと、ケンを起こさないように、ベッドから降りる。

ケンの顔を覗き込んでみた。やっぱり寝ている。

わっ!

ケンの寝顔に引き込まれてた…何やってんだろ私…

とりあえず、家に戻って着替えなきゃね。

私は最後に、ケンに向かってこう呟いた。


ありがと、ケン。


下からは美穂ちゃんと秀の声が聞こえる。

もう2人は朝食をとってるみたい。

昨日ケンは疲れてたみたいだし、そっとしといてあげよっかな。

部屋を出るとき最後に見たケンの顔は、何だか微笑んでるような気がした。



あの後、私は朝食を副島家でとってから家に戻って着替え、ケンを起こしにもう一回副島家を訪れた。

ケンはいつものように爆睡してた。

いつものように布団をはがして無理やり起こそうかなと思ったけど、

今日はケンの耳に口を近づけて「お〜い、ケン、起きろ〜」とささやいてみた。

するとケンは意外にも一発で起きた。

時計をふと見ると遅刻確定。

でも、こんな日があってもいっかな、と思った私。

いつものように焦っていくのではなく、ケンと2人でゆっくり登校した。

で今はお昼休み、真理っちのオノロケ話を聞いている。

「でね、朋樹がね…」

一昨日、つきあい始めたという真理っち。

昨日は早速デートに出かけたそうだ。今はその話についてだ。

「冴っちは昨日何してたの?」

私は急に聞かれて軽く狼狽した。

「えぇっと、ケンと映画を見に行ったかな?」

「ほうほぅ、それで?」

真理っちの目があやしく光る。

私は光った意味が分からずに、思い出した順に全部言っていった。

「買い物して、家帰ったけど誰もいなかったし弟もケンの家に行くみたいだったからケンの家でご飯食べて、で…寝ちゃった。」

「寝た?」

「うん。寝ちゃった。」

「どこで?」

「え〜っと、ケンのベッド…あっ!」

ここで私は気づいた。真理っちの目があやしく光っている理由を。

「ふぅ〜ん、冴っちは副島君と一緒に寝たんだ〜!」

「ち、違うわよっ!ただケンのベッドに気づいたらいただけで、ケンも隣で寝てたけど…」

「あ、やっぱり一緒に寝たんだね?」

「うぐっ…で、でも、変なことは何もしてないからね!」

何か形勢不利。ということで私は逃げた。

「あ、ちょっと〜!」

遠くから真理っちの声が聞こえてくる。

けど、今は恥ずかしくてそこにもどれそうには無い。

しかしどこかへ行こうと思ってもどこにも行く場所は無い。

「…仕方ない。会議室行くかぁ。」

誰もいないだろう会議室に行って、学園祭の仕事を少しでも進めようと思ったからだ。

会議室の前に来てみたが、やっぱり中からは物音がしない。

しかし予想とは裏腹に、扉を開けるとケンが寝ていた。

ケンが突っ伏している机には書類がいっぱい散らばっている。

どうやら、ケンは私たちが知らないところで一人頑張っていたようだ。

ありがと、ケン。

今日このセリフを言うのは2回目だな、とか思いながら、私は書類をかき集めてそれを読み始める。

ケンがある程度やっておいてくれたおかげで、残りの部分を片付けるのは難しいことではなかった。

さて、一通り終わったし、ケンを起こそうかな…?

と思ってケンの寝顔を見ると、随分幸せそう。

見てるこっちまで幸せになってきた。

部屋全体は、春のあたたかな光によってつつまれていた。

学園祭編じゃなかったです。

次からになります。

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