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プロローグ

TS百合作品です。苦手な人はご注意ください。

「フフフフフ……いいね。いいね。毎日見ても飽きないよ。

 まさか後輩君が後輩ちゃんになるなんてね」

「先輩、そんなにじろじろ見られると恥ずかしいんですけど……」


 高校の美術室。絵の具のなんとも重たい香りの中で、僕は先輩にじろじろと見られている。そんなに見なくても、鏡を見れば美人が居るのに。

 それこそ、目を皿のようにして僕を観察してくるので、思わず身をよじってしまうのだけれど、そんな姿も先輩を喜ばせるだけだと思うとため息が出てくる。

 だけれど、それもまた悪い気はしないのだけれど。


 僕の苦言に先輩は開き直ったようににやりと笑うと、鉛筆をこちらに向けて堂々と宣言した。


「これは美術部の活動だよ。後輩君。

 今日のモチーフは君。絵のモデルなのだから、じろじろ見ても問題ないだろう?」

「僕も部員なんですけど……」

「そんなことを言って、後輩君はほとんど絵を描かないじゃないか。

 コンクールがある時にだけしか描かない。最低限だ。こう言っては何だけれど、下手なわけじゃないけれど、上手いわけでもない。

 絵がうまくなりたいと思って入ったわけでもない君をモデルにして、何が困るんだい?」


 顔を近づけてそんなことを言う先輩の言う通り、僕は絵に興味があって美術部に入ったわけではない。

 不真面目な部員である僕に、真面目に活動する先輩に意見をするのもどうかと思ったので、あきらめてモデルにはなることにする。


「分かりました。モデルになりますから、離れてください」

「良いじゃないか。今の君は同性だ。何の問題もないよ」

「抱き着かないでください。当たってますから」

「はっはっは。当てているんだよ。

 これだけで意識してくれる子がいるというだけで、私は嬉しいね」

「それだと、先輩が絵を描けないですよね。はーなーれーてーくーだーさーい」


 残念そうに離れる先輩を横目に、赤くなった顔をどうにかしたくて自分の顔を仰ぐ。

 低くなった身長に、高くなった声、女子用の制服。

 違和感だらけながらも、先輩からのスキンシップが多くなったことが、嬉しくもあり、困る要因でもあり、そして僕の胸をじくじくと蝕んでいた。


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