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孤独と愛、激情と小宇宙

作者: SOY BEAN

孤独なあなたへ。


床に倒れ込んで、視界は狭くフィルターがかかったよう。

心臓は破裂するように早鐘を打ち、意識は幽かに遠く。

手から脚から波のように打ち寄せる快感を頭の天辺から爪先までの全身で感じ、ときおり腹から素晴らしき孤独への愛と笑いが込み上げる。

やがて、そのままゆっくりと全ての感覚がフェードアウトする。


30分の宇宙を超越した永い旅を終えると、視界と意識は何時も通りに戻っているが、まだ胸の高鳴りは続いている。

そして気づく、自分はこの素晴らしき孤独を心から愛しているのだと。

だから孤独なのだと。

自分は自分しか愛せないし、自分は自分に一番愛されている。

身体はやや気怠いが、心は穏やかで、常世の全てを受け入れられる気がする。赦せる気がする。

愛の自己完結、これこそが全人類の至るべき境地。

きっと誰かが言うだろう、不健全極まりない、と。でもこの瞬間の俺は思う。

自分の欠落したピースを、他人で埋めることの方が不自然だろうと。

自分で自分の穴ボコを受け入れ、悦に入ることができるなら、それは良いことだ。


跪いて、自分の右手に恭しく口づけを。


どれだけ気狂いだと蔑まれてもいい。憐れまれようが構わない。

そんなもの、自分が浸って悦に入っている孤独に比べれば、海に注がれた一杯のワインのようなもの。

そして、グラス一杯分だけ、海が拡がる。


これが自分の望んだ世界だ。


そう思って居た方が楽だから、というのも、否定はできない。そう思えば楽なのは事実だ。

でも、きっとこれが望んだ世界なのだ。そんな確信が、心のどこかにある。


そいつが果たして何時から棲み着いているのか、思い当たる節がある。

もうあの頃の記憶は殆ど捨てたが、理想や希望が尽く裏目に出て、苦しい思いをしたことだけは微かに覚えている。

あの狭く寒く仄暗い物置部屋の勉強机で、親に隠れて、世界の入口に背を向けて、果てしなく広く眩しい電子の海を彷徨った。

あのときに、持って帰ってきてしまったのかもしれない。


俺は釈迦に似ている。

悟りを開き、あらゆる雑念を捨ててなお、その教えを広めたいという欲だけは捨てきれなかったように。

どれだけ孤独を受け入れようと、その孤独をぶちまけないと満たされないのは。


「ひとりの激情とその末路なんて予測がついちゃうわけで。」

孤独を捨てた彼女は語った。

でも、少なくとも俺はまったく予測がつかないし、きっと誰も予測できないよ。

だからこその激情だ。

収束なんかするわけがない。激情とはエントロピーそのものだ。


自分以外の何かに身を任せる愚者は、本物の激情など持ち合わせてはいない。

真の狂気とは正気の中に内包されている。

まるで1錠のカプセル剤のように。


世界を動かすのは狂気じみた正気だ。歴史が証明している。


狂気じみた正気とは、別の方法で言い表せ、それを愛という。


ガンジー?マザー・テレサ?ナイチンゲール?彼らの博愛とはつまり狂気なのだ。


ナチスドイツのユダヤ人大量虐殺も、つまり正気だった。


さあ狂おう、笑おう、歪もう、愛そう。

静かに、激しく、凍えるほどに燃えよう。


それはアカシックレコード。

精と卵が結びつき誕生した宇宙の全てを識っている。覚えている。

そして語ることができる。

地球に存在する70億の小宇宙。


俺は、泣いていたのかもしれない。


孤独なわたしより。

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