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ASTERIA  作者: 吹風友泣
2/5

第2話 鮮血と理想と

「ね、ねぇ・・・ユウ・・・大丈夫?」

  タクシーが深夜の都心部を走れ抜ける。

  橙色の街灯が、ユウの目をほのかに照らす。

「ああ、多分大丈夫じゃない」

 まるで、死人でも見たかのように。

「途中で降りる?」

「いや、大丈夫・・・運転手さんそのままで大丈夫です進んで下さい」

 心配で仕方がない。

 意識も朧げになっている。


 五分もすれば彼は眠りについていた。

 寝息をたてているその姿に、私も、運転手も安堵した表情を浮かべた。

 その時、齢六十程度の運転手は私に一言話しかけた。

「とても仲が良いですね。彼氏さんは」

「いえ・・・彼氏というよりかは・・・家族の方が近いかもしれないです」

 少し照れた顔でそう答えた。

「それは失礼・・・」

 後方席に座っていたものの、運転手の笑顔はしっかりと見えた。

「ほんと彼、周りが見えてないんです。今も無茶して・・・ほんとは止めなきゃいけないと思うんですけど・・・私のために無茶な努力をしているのに、それを無駄にさせちゃうのは違うかなって・・・」


 今は彼女の肩に寄っかかっている彼の寝顔をそっと撫でる。

「お嬢さん、男ってのは案外バカなんですよ。守りたいって思っちゃったものは、自分の命より大切にしちゃうんですよ」

 少し苦笑いして、続けた。

「でもね、自分が死んだら守るべきものは誰が守るんだと思うのも男なんですよ」

「・・・・・」

 今は、タクシーのエンジン音と低くて渋い声だけが聞こえる。

「男は守るために生きる。太古の昔からのお約束だよ」

「そんなもんなんですかね」

 苦笑いで答えた。

 私は少し不安だった。彼の大切な物になれているのかと。

「そんなもんさ。だからこそお嬢さん」


「彼が自分を失って困っていたら助けてあげなさい」

「・・・・・!」

 驚いた。まるで私を透かして見ているような感覚。



「もうすこしで着くよ・・・彼を起こしてあげなさい」

「・・・あなたは・・・」

 聞こうとした時・・・それは見えてしまった。

「なに、ただの老いぼれだよ」

 苦笑いで答えた。

 いや、伝えたい事を伝えられたことによる、安堵の微笑だったのだろうか。


 “正気でいられるよう、狂気の沙汰を演じた。”



「ユウ、ちょっと」

「ああわかった」


 タクシーの中は赤い口元の彼女と片腕が丸々喰われた運転手だけになった。

「流石、その程度では即死には至りませんか」

 彼女・・・いや、化け物は口の周りの血を舐めて狂気をあらわにした。

「なるほど・・・お嬢さん・・・そういうことか」

 切られたはずの運転手の首は肌を薄く切っただけ。

「怖いですか?苦しいですか?恐ろしいですか?私は・・・楽しいですよ!!」

「・・・」

 運転手は俯いて表情を見せず黙ったままだ。

 彼女の狂気に翻弄される事なく、ただ、黙っているだけ。

「ごめんください・・・あなたの・・・心臓くださいな」

 そして赤黒い瘴気で編まれた手が化け物の手から現れた。

 禍々しさをピリピリと感じるおぞましい腕。

 その腕が運転手の胸を穿とうとした時、

「嘘」

「・・・・・!?」

 とある一言に赤黒い手が胸の目の前で止まる。

「・・・」

 それ以上、化け物はその手を動かそうとはしなかった。

「・・・そんな狂気が本心なら彼との意思疎通なんぞできんだろうからな」

「お嬢さん・・・なぜ俺を一撃で仕留めなかった?さっきの言葉が胸にでも響いたのか?」

 ついには、彼女は伸ばした手を消した。

「それと見たんだな・・・俺の足」

 そう、見てしまったもの。それは男の足が義足だった事。

 それも両足とも。

 その一言とともに、男は初めてこちらを向いた。

「久しぶりに見たよそんな顔・・・俺への哀れみではないんだろう?」

 私の顔を見て、少し悲しそうな顔をした。

「この平和な世界ならそんな顔をする子がいなくなると思ったんだがなぁ・・・」

 彼女はつい、自分の頬を触った。

「隠せないよ・・・その表情は」

「なんの・・・表情・・・なの・・・?」

 声は隠せないほど震え、怯えていた。

「保護されたばかりの戦争孤児の顔だ。俺は、その顔をウンザリするほど見た」

「自分のひ弱さに嘆いた顔。いつ殺されるか分からないが故周りを怖がっている顔。ああ、本当に似ている」

 彼女は的確なその言葉になみだが溢れ出てしまった。

「うぅ・・・」

 顔を伏せた。

 すでに見られた惨めなこの顔をもう二度と見せまいと。

「俺は・・・軍人だった。」

「俺はな・・・妻子供全て・・・戦争で奪われた」

 傷跡が悪化してきているのか息が上がり始めている。

「それも・・・俺が命令した・・・自軍の大砲の・・・流れ弾・・・でな」

「っっ・・・!?」

 悲惨すぎる話に息を飲む。

「逃げ遅れてたみたいでな・・・でも俺はそれを知った上で・・・突き進んだ・・・自分に・・・俺は正しいって・・・嘘ついてな」

「・・・」

「その途中で・・・相手国が出してきたの兵器が・・・少年兵だったんだよ・・・そん時俺は・・・もう一回嘘ついたんだよ・・・俺は・・・少年たちを虐殺した」

「・・・」

「だから・・・俺は・・・子供に殺される運命だったんだろうな」

「・・・っ」

 腕からの出血量を見るからに、もう生き耐えることはできなさそうだ。

「最後に・・・一回ぐらいは・・・誰かの為になりたい・・・」

 静かに笑顔を浮かべて。

「俺を喰ってくれ・・・それが・・・お嬢さんの為になるなら」

「・・・でも!」

 でも・・・わたしには生きる意味が・・・


「お嬢さん名前は?」

言おうとしたことを遮るように聞いてきた。

「名前?!・・・レイナだけど」

急に聞かれたから驚いてそのまま口走った。

「そうか・・・いい名前だな・・・」

そして、この男は力を振り絞って唇を揺らした。

「彼の助けになってやれ・・・それが・・・レイナちゃんの・・・生きる・・・意味・・・だ」

「!」

 この男は最後までこちらを見透かしてきた。

 敗者は勝者の言う事を聞く。

 彼女は今回だけそうすることにした。


 タクシーのドアを開け、彼の元へ向かう



「まだ、足りないだろう?」

「気持ちがもうお腹いっぱいだよ」

「そうか、ならいいが」

 きっと目を見て言ったんだろう。

レイナの目は赤く光っていた。

それは決意に近い眼差しだった。







 非常階段から屋上のヘリポートまで登り終わった。


「おお、カイト、よくやったぞ!」

 その真ん中でヘリの操縦士と話をしていた社長がカイトに気付き、笑顔で駆け寄った。

「ありがとうございます。私の責務なので・・・当然の事です」

 落ち着いた声音でその赤いシャツと黒いスーツをただす。

 青き目は鷹のように鋭く、死人のように暗い。

「しかし、あの銃・・・普通じゃないな」

 社長は少し訝しんだ声音で話した。

 カイトと社長は先程の銃弾の飛んできた方向を向いた。

 あの大爆発が脳裏から蘇る。

「30キロ以上遠くからの射撃ですか・・・」

 社長はポケットからタバコをとライターを取り出し、火を点けた。

 タバコから煙が上がる。



人外(アウトヒューマン)



 カイトは心悲しげな表情をしていた。


「・・・タバコいるか?」

 社長はあえてそのことに言及はせずに、タバコの箱から一本伸ばして、カイトに向ける。

「・・・いただきます」

 カイトは一本取って、スーツの裏ポケットからライターを取り出す。


「ん?・・・朝日か」

 ちょうど丘の裏から日が昇り始めた。

「かなり・・・眩しいですね」

 カイトの声音はいつもより弱かった。


「お前とあって・・・もう五年か」

 社長はふと思いだしたように呟いた。

「・・・」

 二人の話す姿は・・・そう、


「初めて会った時のお前は、狼のような目だったな」

「・・・」


 遠い昔の話をする先生と生徒の様に見えた。


「・・・なんで殺さなかった?殺すタイミングはいくつもあっただろう?」

「・・・そんなタイミングありましたかな?」

 カイトの悲壮な顔は笑みへと変わっていた。

「ふっ・・・今も殺せる状態だろうて・・・最強の生物が」

 社長もがははと豪快に笑う。

 普段は見ない微笑がカイトの顔に浮かぶ。


 長い沈黙が静かに明ける。

 日は登り、タバコの長さは半分にまでなっていた。


「まだこの老いぼれを生かすつもりか?」


 その、一つしかない答えにカイトは


「もちろんですとも」


 失えるもののほとんどを失った。

 握れるものは拳だけとなった。

 そんな俺を見つけて、認めてくれた。


『お前さん名をなんて言うんだ?』


『まさか社長、こんな怪物じみたやつをスカウトする気ですか?!社長が殺さ・・・』

『うるさい!こいつじゃあ・・・俺を殺せない』

 その意味を知ったのはかなり後だった。

『でも社長・・・』

『大丈夫だと言ってるだろう?』

 彼は、自分の信念を曲げない、正直な人だった。

『何より・・・こいつが俺や俺じゃない誰かを殺したら・・・俺がこいつを殺す』

 周りの人間にも、不器用だが優しさがわずかながらあった。



「あなたに会えてよかった」


 カイトは笑みを浮かべた。

 といっても微笑程度の顔だが、不器用が故にそれ以上の顔ができない。

 社長だけが、そんな顔をよく知っていた。

 不器用なお互いだからこそ。

 その顔につられたかのように、社長も口角を上げた。

「何言ってんだ・・・あたりまえだろ?」




 ー何言ってんだカイト!ヒーローは俺一人で十分だ!ー

 ーはぁ?アホユウにはなれねえよ!ー

 ーなんだと?ばかカイト!いや、バカイト!ー


 ふいにあの不器用男との記憶が脳裏に浮かんだ。


 ー人外ー

 人間とはかけ離れた力や姿を持った生物。

 その起源は分からない。

 分かることはたった一つ。

 人を街を国を文明を・・・そして世界を滅ぼしかねないこと。

 だから、見つけたら殺せ。躊躇するな。さもないとお前が死ぬ。

 人を守る為人外を抹消せよ。


 手を伸ばして掴み取れその“平和”を


「人外三人抹消を確認。」

「残り対象者・・・十八人。」

大変お待たせしました!

んんんんん・・・第2話ですうううう!

まずは第1話ユニーク100突破ありがとうございます。

名無き小説家としては嬉しい限りです。

ファンアートも一話から貰えるとはもう最高です。

今回、みなさんから少し好評だった戦闘シーンを入れられなくて残念でしたが・・・次回はガツガツ戦うと思います。

どうぞこれからもよろしくお願いします。



「人の命奪って生きてる意味。それをもう一回考えてみろっっっ!!!」

「大賢者の・・・一閃!」

第3話 一矢一閃 カイト大活躍回になりますね!wkwkしてお待ちください!

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