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ASTERIA  作者: 吹風友泣
1/5

第1話 星がなく夜に。

夜空にきらめく満天の星空…

なんて見えるわけがなかった。


季節は冬の最中。

目に入るのは、オフィスビルの蛍光灯、橙色の街灯、薄汚れたコンクリートの建物ばかり。

車は止まらずに行き交い、鉄道は走り続け、光が消えることの無い、眠る事を知らない近代文明の賜物。 

 大都市“夜鳥都(よどりと)”。


煌々と輝くビル群たちから、少し離れたところには、狭い路地が入り乱れ、住宅が所狭しと並んでいる。

その住宅に沿うように、ポツポツと薄暗い街灯が立ち並ぶ。


そんな住宅の密集地の一つ、小高い坂の上に立つ、落書きのされた白いコンクリート壁の六階建てのマンション。

針金のフェンスで囲まれた屋上の真ん中。


都心部から漏れ出す光に遮られるも微かに輝く星。

この夜空を見上げる人影が銅像の様に静かに立ち尽くしていた。

まるで黒色の(からす)が降り立った様に。

年は20前後だろうか、淡い黒色の目に黒褐色の髪、身長170センチ程度の細身の男。

羽織っている黒いロングコートのポケットに手を入れ、目を線の様にかすめて、空のその先を眺める。


木々を揺らす風がコートをなびかせる。

フクロウや猫の鳴き声も聞こえず、電柱にたかる虫もいない、肌寒い深夜である。



「今日も星の観察?体が冷えちゃうよ」

屋上の入り口のドアから、白い息を吐きながら、一人の女性が歩いてきた。

小柄な体に、紺色の柔らかいボブの髪。

青白く澄んだ目は闇夜にうっすらと輝き、白く透き通るような肌を隠すように、髪色によく似たステンカラーコートを羽織っている。

「はいこれ。まだあったかいよ」

彼女がコートのポケットから買ってきたばかりであろう湯気を上げる二つの缶コーヒーを差し出した。

「どっちがいい?私ブラックも一応飲めるけど…?」

ブラックと微糖の二種類がある

「こっちで」

彼は迷いもせずブラックの缶コーヒーを手に取った。


缶コーヒーに残っていた温かみが手の内をじんわりと広がる。

かじかんでいた手がゆっくりとほぐれる。

屋上の針金のフェンスに体を寄せて、軽くほぐれた手でカチッと開けて一口飲む。


口いっぱいにコーヒーの苦く良い香りが広がる。

「ふぅ…」

つい、彼から嘆息(たんそく)が零れ出る。


「ねぇ、ユウ?」

彼女は彼の隣に寄っかかって名前で呼んだ。

「あの星は何て言うの?」

「どれ?」

彼女と視線を合わせて彼女が指差す先を見つめる。

「ああ、あれか」

指先には一際光る星があった。

「あれはシリウス・・・ギリシャ語で・・・」

太陽の直径の一.七倍もある一等星の一つシリウス。

古代エジプトでは生産の神オシリスと関連があるとされる。

「“焼き焦がすもの”だそうだ」

「ふーん」

(聞いてきただけか・・・。)


「ねぇ・・・そろそろじゃない?」

コーヒーを飲みながらさっきと同じ様に声を掛け、彼女は輝き続ける・・・ビル群の方を向いた。


「・・・ああ、そうだな」

彼は少し間を開けて答えた。

飲み干した缶コーヒーを床に置いた。


__カツン。


 そして、横に立てかけられた、細長いバックから何かを取り出した。


ひどく冷たく感じる。

今ではもう慣れたことだが。


__体をしゃがませて、針金のフェンスの隙間から、取り出した何かの矛先を高層ビルの一つに向ける。


 これが今の僕のすべきことならば


__ スコープを覗いて、大きな窓ガラスへと銃口を合わせる。



 そう、それは大振りのスナイパーライフル。


 ぼくはヒトを殺す機械(にんぎょう)

 そう、ぼくに心などあってはならないのだ。




四十階をゆうに超えるビルの上層階。

一面ガラスの大窓の横のソファ。


「なんだあいつらは?何を考えているんだ?!」

怒鳴り散らす声がその階に響く。


「さあ?クズの考えていることなど分かりかねます」

その声を返したのはひどく落ち着いた声だった。


片方は髭を生やして、出ている腹をティーシャツとスーツで無理矢理とめたソファに座る低身の黒髪の男。



片方はソファの横に毅然(きぜん)として立つ身長百八十はあるだろう黒いスーツと赤いシャツの似合う寡黙(かもく)な金髪青目のメガネの男。


そして黒いサングラスと黒のスーツを着こなした十数人のSPが立っている。

「あの社長・・・お言葉ですがそれは言い過ぎでは・・・?」

 そのうちの一人が声をかける。


「なんだと?」


ソファに座った社長と呼ばれた男はSPの一人を睨みつける。

「あ、いえ!・・・なんでもありません・・・」

SPの男は言葉を続けず、前を向き直した。


「・・・」

ふと、周りを見回していたカイトは窓の外を見つめた。

 

 遠くを見つめる。

 まるで、遠くの獲物を見つけた狩人のように鋭く。


「総員・・・構え」


__一息で短く、冷淡なカイトの一言で周囲のSPがソファに座る男を囲む。


「カイト・・・何者だ?・・・まさかとはおもうが・・・」

「社長、そのまさかです。」


社長は少しの迷いを振り切って、

「・・・いいだろう能力の使用を許可する。俺を守れ!」

「御意」


__カイトは動いた。


  重心を下に下げ、右手を後ろに引き、その先を鷹のような目でかすめて見る。




「・・・・・あいつがいた」

「え・・・?あいつって・・・カイト?」

 

 返答する余裕もなかった。

 動揺している。

 落ち着かなければ・・・



忘れるもんか。


「大丈夫?」


「やれるだけやる」


集中が切れないように短い会話で意思疎通をする。

男は再びスコープを覗き、黒い狙撃銃のトリガーに手を置く。



___風を感じる。


「左に四度修正・・・カウント十、九、八・・・・・」


この距離ですらあいつにこちらを見られているのを感じる。


冷や汗が溢れ出る。


鳥肌が収まらない。


「三、二、一・・・」


トリガーはゆっくりと押し込まれ・・・


「勝負だ・・・カイト」


ほんの少し、隣の彼女にすら見えないほど僅かに口角が上がり、トリガーは引かれた。





計算されて逸れた軌道をその弾は正確になぞっていく。


窓ガラスまで残り3秒。身構えていたカイトが右手で分厚い強化ガラスを破り、その身を外へと投げ出す。


「甘いぞ・・・ユウ!」


___左の手のひらを目の前にかざすと、その手のひらから淡く輝く光が現れた。

___光から光線が縦横無尽に伸び、固体となった光線同士が絡まり合った。


正六角形型の直径三メートルは下らないだろう大きな半透明の光の壁が左手の前に猛然と(たたず)んだ。


そして銃弾はその壁にぶつかり、全ての勢いを失った。

壁や、ビル、カイトも無傷だ。


「お返しだ・・・!」


左の手のひらを内側にすると光の壁は瞬時に圧縮され、再び形を形成していく。


大賢者の一閃(ストライクケイローン)・・・!!!」

今度は大弓となった。

銃弾を防いで僅か2秒。それでも落下する体を上に向けて一気に引き絞る。


「死ぬなよ」


そう笑うカイトの手から閃光の矢は放たれた。




「やっぱ・・・一筋縄じゃ行かねえか・・・」

「どうなったの?ねぇねぇ!」

「落ち着けそれどころじゃない」


そう言って、ユウと呼ばれた男は彼女の声に耳を貸さず狙撃銃に俊敏に銃弾を込める。手の震えが止まらない。失敗したらまず死ぬ。そして(それ)の威力もわからないもしかしたら隣の彼女も・・・


___逃げろ

 いや間に合わん。

  

___ならば!!


「誰が、そんなんで死ぬかよ」

素早く、正確に一等星よりも輝くあの光に向けてその銃弾を撃ち放つ。



軌道の逸れた銃弾とまっすぐ進む光の矢が一ミリもブレず向かい合い、

衝突し、

大爆発を起こした。


「・・・やった!」

ユウよりも早く彼女が喜んだ。

「逃げるぞ。・・・喜ぶのは後だ」

「うん!・・・あ、ここの人に挨拶しなきゃ」

急いで下に降りる。

カイトもすぐに向かうが屋上の階段前でふと立ち止まって振り返った

「またすぐになカイト」

そう言ってユウも階段を駆け下りた。




「引き分けか・・・」

周りのビルに光を糸のように伸ばし、ネットを張り巡らさせて無傷で地面についてカイト。

 

「ああ、またやろうユウ」


 そうぽつりと呟いて、カイトは再び、ビルへと戻る。



 途中の自動販売機の横のベンチに腰をかける。

目を瞑って・・・




真っ白な空間の中にオンボロな木の椅子が二つ向かい合っている。


 ゆらりと、片方の椅子に人影が一つ。

 全身に纏った白い鎧の影が俯きながら姿を見せる。


___囁くような声が反響する。


“カイト・・・これからどうするんだ?”


_あいつは俺が殺さなきゃなんねぇ。


“本当にいいのか?古い友人なんだろう?”


_だからだ。


“・・・そうか。なら止めはしない”


_ああ、止めないでくれ。あいつと俺はもう他人だ・・・


“・・・強がりは良くないとだけ言葉を添えておこう”


 あたりが白いモヤにかかった。

 次に目を覚ませば、先ほどの景色へと戻った。


「・・・お節介な騎士様だな」




「ね、ねぇ・・・ユウ・・・大丈夫?」

大通りまで走って、深夜のタクシーを捕まえた。

ユウは流れていく景色をぼんやりと眺めていた。

「ああ、多分大丈夫じゃない」

まるで、死人でも見たかのように。

「途中で降りる?」

「いや、大丈夫・・・運転手さんそのままで大丈夫です進んで下さい」

彼女のみならず、タクシーの運転手にも心配されるほどだ。

顔色も悪かったのだろう。

それでも先に進むことを選んだ。


毎日、同じ夢を見る。

(くれない)に染まった星空の夜。

その紅は少しづつ増えていく。

ああ、そういえばあの日は流星群の日だったっけ。




あの日の・・・あの時を忘れることがあったとしても、三人で結んだあの約束だけは忘れない


「着きましたよしかし、こんな時間に海岸なんて・・・もしかして早朝のフェリーに乗るおつもりですか?」

いつのまにか寝ていた様だ。時は朝の三時を回っている。

眠りが浅かったユウはすぐに気を取り戻した。

「えーっとですね・・・」

「もう、ユウくんったら寝ぼけてるの?」

別に寝ぼけているわけじゃ・・・と言おうとしたら

「お腹が減ったからですよ」

そう言ってタクシーの運転手の首を切った。赤い血がフロントガラスにびっしゃりとついた。




「ユウ、ちょっと」

「ああわかった」

そう言ってタクシーから無言で出る。

いつのまにか雨が降りはじめていた。


濡れてしなれた髪から雨粒がポツポツと落ちる。

手で作った小さな器から雨水が溢れる。

「終わったよ」

彼女がタクシーから出てくる。

「お腹は?」

「ん、いっぱい」

彼女の紺色の目が赤く光る。

「まだ、足りないだろう?」

あからさまだ。

それでも、彼女は首を横に振った。

「気持ちがもうお腹いっぱいだよ」

「そうか、ならいいが」

そう吐き捨てて、二人はその場から立ち去る。

足音がピチャピチャと音を立てる。


タクシーと雨音だけがその場に残った。

こんにちは。はじめまして。吹風友泣といいます!

楽しんでいいただけましたか?・・・と聞きたいのですが、いかんせん始まったばかり。


感想、評価どしどしお待ちしております!

これからもどうかお願いします!それではこの辺で失礼します。

読んでいただきありがとうございました


2023:追記

全体的に訂正していきます。

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