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続編のない短編達。

婚約者が竜王の嫁の生まれ変わりとかで、振られた俺が通りますよ。

作者: 池中織奈

 「竜王様の花嫁様は美しい」

 「竜王様と花嫁様は本当にお似合いですわ」

 「前世から結ばれた絆だなんて素晴らしい」

 この世界には、竜王という存在が居る。竜族という存在は、人間よりも寿命が長い。永遠の時を生きる、というのは言い過ぎかもしれないが、人間の俺達からしてみれば、途方もないほどの長い時を生きる。

 竜族だけで形成された国家。そこのトップが竜王であり、圧倒的な力を持つ存在だ。さて、そんな竜王には数百年前に伴侶がいたが、伴侶が亡くなったあと誰かを傍におくことはなかった。

 が、この度、先の竜王妃の生まれ変わりが現れた。人間に生まれ変わっていた彼女を見つけた竜王陛下は、そのものを妃とした。

 ――――その、竜王妃の生まれ変わりは婚約をしており、結婚を間近に控えていたにも関わらずである。

 で、俺、ランディはそんな竜王妃の元婚約者である。ようするに捨てられたわけだ。

 正直何とも言えない気持ちだ。竜王妃に収まったアラライアとは幼馴染で、生まれた時から一緒に育ってきた。そのまま付き合って、婚約して、結婚式だってもうすぐだった。

 なのに、竜王陛下が、アラライアのことを竜王妃の生まれ変わりだとかいって、見初めた。そして、俺は捨てられた。正直ショックだったし、何より周りが「竜王妃と婚約できたなんて幸せものだな」「仕方がないよ」「彼女は竜王妃なんだから」と誰もアラライアをとがめないことに何とも言えない気持ちになった。

 アラライアはアラライアで、俺と結婚したいといった口で、「私は竜王妃になる」と宣言して、謝罪なんてなかった。寧ろ竜王妃である私と付き合えたのを喜びなさいなどという上から目線だった。うん、好きだなーって思っていた頃は気にしなかったけど、思えばアラライアは昔から上から目線だった。だから友人たちにも本当にあいつと結婚していいのかと何度も言われていた。でも好きだったし、結婚する気満々だったんだがな。

 ……ただ、思うのは幾ら竜王妃の生まれ変わりだとか発覚したっていっても、要するに”結婚を約束した相手がいたのに他の相手と結婚したくなったから破棄しました”って状況なんだが、謝罪もなく、当然って態度にアラライアに好意を抱いていた気持ちは冷めていったから結婚がなくなったことには思ったよりは落ち込んではいない。

 うん、ただ故郷にいてもさ、”あいつ竜王妃の元婚約者だぜ”とか色々言われるんだよ。やりにくい。俺これでも騎士やってたんだよ。ただアラライアが怪我してほしくないっていうからあんまり前線には出ない下の位の騎士やってた。上にいく実力あるのにって言われていたけど、別にそういうのどうでもよくて、アラライアが悲しまなければいいやーって思ってたんだけどな。それにしても怪我してほしくないっていっていうから俺下位の騎士やってたのにさー、貴方は竜王様より弱くてかっこ悪いとか言われてもさー。結局活躍してほしかったならいえばよかったのに。

 ってそんな風に思うけど、終わったことは考えても仕方ないから俺はこれから好き勝手生きる。国も飛び出したけれど、竜王陛下って大陸中に影響あるからさ、正直このあたりにも噂広まっててさ、俺の名前知ると、あの婚約破棄されたってなったりする。

 つーかさ、劇になっているわけよ、竜王陛下とアラライアの話。生まれ変わった竜王妃には婚約者がいて、だけど二人は結ばれたみたいな。俺、めっちゃそれで名前知られてたりしてさ。何、このさらし者。

 もう嫌になっちゃってさ、これから他の大陸行こうかなーって考え中なんだよね。海には色々な化け物いるしさ、ほとんど誰も渡らないんだけど確かに記録は残っているし、未開の地に行くとかそういう冒険譚、俺昔から読むの好きだったから。

 そんなわけで一人で海を渡る準備中。

 うん、俺、一緒に海を渡ってくれるなんていう人いなくてさ。そうそう、故郷には友人もいたけど、国を飛び出した俺はほぼ知り合いもいないしほぼぼっちっていう。

 まぁ、人じゃない存在はいるけれど。

 俺これでも精霊に好かれる存在で、精霊のこと見えるし、交流できているから、一人でも他大陸わたるのなんとかなりそうだし。

 竜王妃の元婚約者って目で見られるのもなんか気分悪いし。

 「兄さん、よく飲むねぇ……」

 酒場で思いっきり酒を飲んでいたら、店主に声をかけられる。酒を飲むのは好きだ。でもこれもアラライアが酒臭いの苦手だったからあんまり飲んでなかった。捨てられてからは凄い飲んでいるけれど。

 ちなみに顔まで割と広まっているから俺はフードかぶってなるべく顔隠している。本当、婚約者に捨てられただけでこれだけさらし者になんなきゃならねーんだよって突っ込みたい。

 「酒飲むの好きなんだよ」

 「そうかいそうかい。良い飲みっぷりでこちらも気分がよくなるよ」

 とにこにこ笑ってくれる店主に、こちらも気分よくなってどんどん飲んだ。

 翌日は二日酔いになっていたけれど、こうやって自分のペースでのんびり生きられるのは気分が良い。



 そしてそれから半年後、俺は他大陸に渡って、生涯の伴侶を見つけたり、一生の親友が出来たり、その過程で色々あったりするわけだが、それはまた別の話だ。




 ――――婚約者が竜王の嫁の生まれ変わりとかで、振られた俺が通りますよ。

 (俺は幼馴染の婚約者に振られてさらし者になってやりにくいので、他大陸に渡るぞ!)



なんとなく思いついて書きたくなった短編。


ランディ

実力とか色々あるけれど、のんびり過ごしていた元下位騎士。婚約者が竜王妃の生まれ変わりとかで捨てられて晒し者になり、それが嫌で他大陸に渡ろうとしている。精霊眼の持ち主で、精霊を見れるし、精霊とは仲良し。渡航する同行者は精霊。


アラライア

元竜王妃の生まれ変わりで、竜王妃になる。ランディのこと好き好きいっていたくせに竜王妃に見初められるとあっさり捨てた人。多分竜王妃として幸せに生きている。






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― 新着の感想 ―
[一言] ぶん投げっすねぇw なろうにありがちな展開を加えるなら ・竜王と呼ばれるモノが実は邪竜で討伐対象と判明 ・精霊王の加護を得た主人公と仲間たちが邪竜を討伐 ・邪竜の洗脳が解けた者たちの阿鼻叫…
[良い点] なんやかんやどっちも幸せになりそう。 そっちはそっちで幸せに、こっちはこっちで幸せに!
[一言] なんのオチもなし
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