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⑦22分01秒~26分30秒

 

「ついたぞ」


 俺は、ついに魔王の城を目前にしていた。


 思えばここまで、長かったような短かったような、どちらかと言えばやはり短かったような気がする。


 だがここはまだ、ラストダンジョンの入り口。

 はたして残り時間で、魔王のところまで行けるだろうか。


 正攻法では無理だろう。


 俺は、声を張り上げて叫ぶ。


「魔王! 勇者がお前を倒しに来てやったぞ! こんな無駄にでかいだけの城の奥に隠れて、さぞかし怯えているだろうな! お前には、この勇者アイン様とまともに戦う根性なんてないんだろ! 違うならコソコソ隠れてないで出てきやがれ!」


 城内に、むなしく俺の声が響き渡る。


 ここまで来たら、魔王には俺の声が聞こえているはずだ。

 だが、やはりこんな分かりきった罠に掛かるほど、魔王も愚かでないということだ。


 それでも、俺は、思い付く限りの罵詈雑言を、魔王に向けて投げかけ続けた。

 一縷の望みがある限り、あきらめないのが勇者だ。


 俺は、魔王のことを、ヘタレ人見知り方向音痴で童貞ロリコン甘党な万年深爪アイデンティティ崩壊サイコパス野郎のくせに耳の後ろが臭くて男なのにまつげ長めで用心深くてゴハンの後は必ず歯磨きを欠かさない説明したがりいつも青春熱血なところに正直引くわ本気でな奴だとまでディスってやった。


 魔王は応じなかった。

 やはり、ダメか。


 仲間たちの俺を見る目が、どんどん冷えきっていくだけでしかない。


 こうなれば、城の中心部を目指してまっすぐに進しかない。


 俺は、手当たり次第、目前の壁を破壊しながら前に進んだ。

 もう数分で、世界をまるごと崩壊させてしまう強さになる俺である。

 魔王の城なんて、玩具を破壊するようにバラバラにできてしまう。


 俺が、3枚目の壁を破ろうとしているとき、それを阻もうとする者が現れた。


「貴様、他人(ひと)の住居で何を滅茶苦茶しておるのか!」


 そいつが誰だかは、一目でわかる。

 魔王だ。


 長身の、黒衣に身を包んだ男。

 白に近い銀髪を背中まで伸ばし、青白い肌と、頭の左右から渦を巻いて伸びる禍々しい角を持っている。

 紅い瞳には、他者を視線で指し貫くような眼光が宿っていた。


 顔立ちは端正で、美しいと形容できるものだが、それはどこか見るものの心を凍りつかせるような、危険で近寄りがたい印象を与えるものだ。


 全身から発される邪悪なオーラは、その者が魔王であることを如実に物語っていると思えた。


「魔王かっ!」


 俺は、勇者の剣を右手に構える。


如何(いか)にも。死すべき宿命(さだめ)人間(ひと)の子よ、我が城にへと足を踏み入れた勇気だけは、賞賛に値するぞ。だが、それは無知なる愚者の行いであったこと、恐怖とともに学ぶが──」


 俺は、左手に破邪の紋章を取りだし、それを掲げる。


「なんだと、我が、絶対障壁を打ち消すとは、なかなか味な真似をする人間だ。よかろう、ならば我とて──」


「でやあ!」


 俺は、思いっきり、勇者の剣で魔王に切りつけた。


「ぐは!」


 魔王の上半身と下半身が離れ離れになる。

 女神から言われていた、単独での魔王討伐なタイミングはすでに通過しているから、やれるのは分かっていたが一撃で倒せるとは思っていなかった。


 何にしても、まあ、よかった。


 残り時間はあと、4分ある。


 ゆっくりと村娘を村に送って、故郷の街に戻って、アイン本人に体を帰す準備でもしてやれそうだ。


 俺は、立って見ているだけの仲間のところに──


『フハハハハハハハハハ!』


 突然、あたりを揺るがすような笑い声が、魔王の城全体に鳴り響いた。


「な、なんだっ!」


『余は、大魔王である。魔王を倒していい気になっている虫けらどもよ、貴様たちの真の恐怖はこれから始まるのだ』


「だ、大魔王だと。聞いてないぞ!」


『余は、魔界ヘルガルドの無限螺旋城にいるぞ。果たして、貴様らごときにたどり着けるかどうか。せいぜい、途上で朽ち果てないことだ。貴様らをこの手で葬ることを、楽しみにしているぞ!』


 なんだと。

 無限とか、螺旋とか。

 そんな時間は全くないというのに!


 残り時間はあと、3分30秒。


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