⑤15分01秒~17分00秒
旅の最終目的地である、魔王の城。
2つの重要アイテムを揃えた今、俺はそこを目指す。
「バートン」
「なんだ?」
「魔王の城に行ったことはあるか」
「それ本気で聞いているのか」
「だよな」
仮にバートンがラストダンジョンであるところの魔王の城に行ったとして、ただ物言わぬ屍と化す以外の結果しか考えられない。
彼は、ステータスを見るに、レベル3の吟遊詩人でしかない。
歌を2つばかり知っているだけの、見かけ倒しナルシスト野郎だ。
それは村娘にしても同じだろう。
最後の3人目の仲間は、魔王の城か、数分以内にそこまでいける場所に行ったことがある人物にしないといけない。
始めから分かっていたが、ここが最大の難所だ。
「バートン、誰か、魔王の城に行ったことがある人物について心当たりはないか?」
「それなら、バルハマス王国の宮廷魔術師が、かつて魔王に洗脳されていたことがあるという噂があるが」
「それだ。バルハマスへ行こう」
「俺は行ったことがないぞ」
「なんだと、吟遊詩人のくせに。君は?」
一応、村娘にも訊ねるが、案の定、彼女も首を横に振り、否定の意を示した。
バルハマス王国に行ったことがある人物を仲間にしてしまうと、その時点で仲間の3人枠を使いきってしまう。
つまり何としても最後の一人で魔王の城に行ける道を繋がないといけないのだ。
「バートン、他にはいないのか?」
「そう言えば、50年くらい前に、ある冒険者たちが魔王に挑み、魔王を瀕死の重傷にまで追い込んだことがあったな」
顎を撫でながら話すバートンの横で、村娘もうんうんと頷いている。
この世界では有名な話のようだ。
「その人たちは、今どこにいるんだ」
「いや、まだ生きているかすら怪しいけどな」
この世界の人間の平均寿命自体が、ほぼ50年だ。
そう考えると確かに、その冒険者たちの生存は難しいのかもしれない。
────だが待てよ。
自分の中で、いや借り物のアインの体に残されている記憶に、何か引っかかるものがあった。
「バートン」
「なんだ」
「その冒険者たちの名前はわかるか?」
「もちろんだ。詩に歌われた人たちだからな。戦士ガイデスハルム、武道家ナームラーサン、魔術師ヨシュアラザク、司祭セレスティニシアの4人だ」
さすがに吟遊詩人だけあって、すらすらとバートンは話す。
何故に、4人が4人とも複雑な名前なのだろうか。
その時代の流行りだったとでも言うのか。平成のキラキラネームみたいな。
それはともかく、魔術師ヨシュアラザクに聞き覚えがあった。
俺は、アインの記憶を辿る。
ヨシュアラザク、ヨシュアラザク、ヨシュアラザク……
アインの交遊範囲の狭さを考えると、もしかしたらかなり身近な人物なのではないかという気がしてくる。
母の言葉が遠くから聞こえる。
『あの人も、昔はねえ────』
ヨシュアラザク。ヨシュ。──ヨシュじいさん。
思い出した。
「となりの家のじいさんだ!」
残り時間はあと13分。